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演奏から配信まで、ドラムの可能性を広げるヤマハ「EAD50」がグッドデザイン大賞:デザインの力(2/3 ページ)

日本デザイン振興会は「2026年度グッドデザイン賞」の受賞結果を発表した。「グッドデザイン金賞」(20件)の中から最高賞である「グッドデザイン大賞」に選出されたのは、ヤマハの専用マイク付きドラム拡張モジュール「EAD50」だ。ドラマー自身が収音や音づくりを行える機能と、楽器に自然になじむ造形、同社のビジョンとのつながりが評価された。

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グッドデザイン大賞はヤマハのドラム拡張モジュール「EAD50」

 今回、グッドデザイン大賞に選ばれたヤマハのEAD50は、生音で演奏するアコースティックドラムに、収音や音の加工などの機能を加える機器だ。足元のペダルで演奏するバスドラムにセンサーユニットを1つ取り付けるだけで、ドラムセット全体の音を高音質に収音できる。

「グッドデザイン大賞」に輝いたヤマハのドラム拡張モジュール「EAD50」
「グッドデザイン大賞」に輝いたヤマハのドラム拡張モジュール「EAD50」[クリックで拡大] 出所:日本デザイン振興会/ヤマハ

 複数のマイクを配置する複雑なセッティングを簡略化し、設営時間を大幅に短縮する。従来は、会場の音量や音質を調整するPAエンジニア(音響担当者)に頼っていた音の調整も、ドラマー自身が手元で直感的に行えるようにした。

 複数の音のバランスなどを整えるミキシングや、音に残響などの効果を加えるエフェクトの操作にも対応。演奏者自身が、収音した音を好みに合わせて加工し、音づくりに反映できる。

外観は、機能を過度に主張せず、ドラムセットに自然になじむようにまとめた
外観は、機能を過度に主張せず、ドラムセットに自然になじむようにまとめた[クリックで拡大] 出所:日本デザイン振興会/ヤマハ

 デジタル化した音は、録音やオンライン配信、オンラインでの練習や教育などにも活用可能だ。ヤマハは、EAD50をアコースティックドラムの魅力を生かしながら、演奏表現の幅とドラマーの活動の場を広げる製品と位置付けている。

 外観は、機能を過度に主張せず、ドラムセットに自然になじむようにまとめた。楽器に取り付けた状態でも、落ち着いたたたずまいを感じさせるデザインとなる。

 審査委員会は、演奏者自身が収音や音づくりを行える機能と、ドラムセットに自然になじむ造形に加え、ヤマハの技術や経営ビジョンとのつながりを評価した。

バスドラムに取り付けるセンサーユニット
バスドラムに取り付けるセンサーユニット[クリックで拡大] 出所:日本デザイン振興会/ヤマハ

大賞選定理由と喜びの声

審査委員長の中川淳氏
審査委員長の中川淳氏

 審査委員長の中川氏は、EAD50について、ドラマーが音響担当者に依存せず、自らセッティングや音の調整を行える機能に加え、「それらを調和の取れたパッケージとしてデザインしている点を高く評価した」と選定理由を説明した。

 2026年度の審査テーマである「ビジョンに資するデザイン」という視点からは、アコースティック楽器の製造とシンセサイザーの技術を持つヤマハならではの製品である点にも言及。同社が中長期経営ビジョンとして掲げる「音・音楽の力で、人々の個性輝く未来をつくる」の実現につながることが、「プロダクトそのものから感じられる」(中川氏)と述べている。

ヤマハ 代表執行役社長の山浦敦氏
ヤマハ 代表執行役社長の山浦敦氏

 受賞者を代表して登壇したヤマハ 代表執行役社長の山浦敦氏は、「私たちはデザインを、単に形や美しさを整えるものではなく、人々との間に対話や共感を生み、新しい価値を社会に提案していくための重要な営みと考えている。演奏動画の発信や仲間との共有など、音楽との関わり方が変化する中で、質の良い楽器を作り続けるだけでなく、新しい楽しみ方を提示し、お客さまとともに新しい音楽文化を育てていくことが大切だ」と語った。

 EAD50も、演奏する楽しみと配信する楽しみをつなぐ、こうした挑戦から生まれた製品だという。今回の受賞については「ヤマハが音楽の可能性にチャレンジし続ける姿勢そのものを評価していただいた、励ましていただいたものと考えている。これからも変化を恐れることなく、世界のお客さまと一緒に新しい音楽文化を作り、音や音楽の力で人々の心を動かすチャレンジを続けていきたい」(山浦氏)と意欲を示した。

ヤマハ デザイン研究所長の川田学氏
ヤマハ デザイン研究所長の川田学氏

 ヤマハ デザイン研究所長の川田学氏は、カジュアル管楽器「Venova(ヴェノーヴァ)」に続く9年ぶりの大賞受賞を「この上ない喜び」と表現。「EAD50は、機能を過度に誇示するのではなく、自然にドラムセットになじみ、落ち着いたたたずまいを感じさせるようにデザインした。『本質を押さえた上で変化を恐れず革新すること』『本質を美しく表現するが決して出しゃばらないこと』『社会的責任を果たすこと』という、ヤマハのデザイン理念が結実した成果だ」(川田氏)と語った。

 一方、控えめな表現が審査で目にとまるか、不安もあったという。それだけに、「決して派手ではないデザインを評価していただいたことは、一つ一つの作品を丁寧に吟味し、議論していただいた証しだと思う。斬新なアイデアだけでなく、それをしっかり作り込む実直なモノづくりや誠実な造形に光が当たることは、日本のデザインの未来に光を当てていただいているように感じる」と、川田氏は審査委員に対して感謝の言葉を述べた。

 デジタルとアナログ、楽器と音響機器の双方を手掛けるヤマハならではの製品が評価されたことに対しても、川田氏は「企業の存在価値、存在意義そのものにスポットライトを当てていただいたように感じている」と述べる。2027年に創業140周年とドラム製造開始60周年を迎えることにも触れ、「あらためて自信を持って、われわれならではの商品づくりやデザイン活動を続けていきたい。そんな決意を新たにした忘れがたい日になった」(川田氏)と喜びを語った。

ヤマハ デザイン研究所の風当将文氏
ヤマハ デザイン研究所の風当将文氏

 製品デザインを担当したヤマハ デザイン研究所の風当将文氏は、「デザイナーの私が受賞したというよりは、企画、設計、開発、製造、チーム全体が評価されたと認識している。まずはメンバーと受賞の喜びを分かち合いたい」と述べた。また、グッドデザイン大賞はデザイナーにとって特別な賞であるとし、「賞負けしないように、これからも気を引き締めて頑張っていきたい」(風当氏)と決意を口にした。

 EAD50が演奏者にもたらす変化について、風当氏は「この製品によってドラマーの人生が変わるきっかけになるのではないかと、チーム一同願っている。今回の受賞を通じ、EAD50をより多くの方に知っていただき、ドラムや楽器、ヤマハについて知ってもらうきっかけとなればうれしい」と締めくくった。

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