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企業の垣根を越えて設計を考える 設計研究会が見た日米欧の違い:ものづくりをもっと良いものへ(9)(2/2 ページ)

本連載では、エンジニアとして歩んできた筆者の50年の経験を起点に、ものづくりがどのように変遷してきたのかを整理し、その背景に潜むさまざまな要因を解き明かす。同時に、ものづくりの環境やひとづくりの仕組みを考察し、“ものづくりをもっと良いものへ”とするための提言へとつなげていくことを目指す。第9回は、2002年に日本機械学会内に立ち上げた設計研究会について、その設立の背景や初期の活動を振り返る。

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設計研究の日米欧比較

 海外での動向調査を受けて、設計研究について、設計のためのツールと設計が目指すところの両面から分析した。

A)設計手法/ツール

 図2に、設計手法/ツールの分類例と日米欧の注力分野を示す。ここに示した設計手法/ツールの詳細については、参考文献[2]の第3章を参照いただきたい。

設計手法/ツールの分類例と日米欧の注力分野
図2 設計手法/ツールの分類例と日米欧の注力分野[クリックで拡大]

 特徴として、米国ではある戦略の下、それを実行する段階で適材適所に各種手法を選択し、ツールを導入している。西欧は、各国それぞれの特徴を生かして独自の取り組みを行っている。一方、日本はCAD/CAEを使用して効果を上げているものの、ものづくりの考え方については、欧米から逆輸入されたキーワードに振り回されている感がある。これは前項の調査結果からも読み取れる。

 実は、日本には設計手法に関する教科書が少なく、その多くは欧米の大学の先生方によるものである。また、設計ツールについても、そうした先生方の下で学んだ学生が起業し、立ち上げたベンダーによるものが少なくない。この構図を変えるのは容易ではないし、変える意味があるかも分からない。欧米発の手法/ツールについて、その背景をよく理解した上で使いこなすことが、日本の製造業の技術者にとって現実的な最善策ではないか。手法/ツールはあくまでものづくりの手段であり、目指すところは「ものづくりをもっと良いものへ」を実現することにあるからだ。

B)設計の注力分野

 日米欧それぞれが主体となって開催している設計に関する会議の発表内容を基に、設計のどこに注力しているかを分析した。設計を以下の3分野に分類している。

I.Must設計(「当たり前品質」に相当):デザイン保証が必須の設計。多くのトラブルは、この設計をないがしろにすることによって発生する。評価されにくいため取り組みにくい領域だが、設計の基本である。リスクの最小化が目的となる。

II.Better設計(「性能品質」に相当):評価の判断が明確なため取り組みやすい領域ではあるが、最終的にはコスト競争に陥る。コスト最小化、開発期間の最短化、性能の最大化が目的となる。

III.Delight設計(「魅力品質」に相当):デザインコンセプトが最重要となる設計。多くのヒット商品はこの領域から生まれる。創発的な設計と思われがちだが、技術や顧客要求の先取りがポイントとなる。例えば、心地よさの最大化が目的だ。

 図3に、設計の注力分野の日米欧比較を示す。

設計の注力分野の日米欧比較
図3 設計の注力分野の日米欧比較[クリックで拡大]

 米国は宇宙関係のように未知の領域に挑むことが多く、そのためにはリスクを定量的に把握することが必須となる。これがMust設計技術に関する発表が多い理由といえる。一方、西欧にはオリジナリティーを大事にする気質があり、それがDelight設計技術への注力度合いを高めている。ICED(International Conference on Engineering Design)に参加すると、考え方を紹介するテキスト(文章)のみの論文が多いことに驚かされる。言語に関係なく、このような芸当は日本人には難しい。

 なお、今回紹介した設計研究会は、形を変えて現在も続いている。「失われた30年」は2020年に終わったことになっているが、このあたりの分析も本連載で今後扱っていきたい。 (次回へ続く)

参考文献:


⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール:

大富浩一(https://1dcae.jp/profile/)
Ohtomi Design Lab. 代表

⇒代表者アドレス:ohtomi3@outlook.jp


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