MALDI-TOF MSのS/N比1000倍向上を目標に、島津と東北大がタッグ:研究開発の最前線(1/2 ページ)
島津製作所と東北大学は、分析計測技術の限界突破を目指す新研究拠点「CICMI」を設立する。CICMIではMALDI-TOF MSの性能向上を図る。さらに、ノーベル化学賞受賞者の田中耕一氏が国際卓越教授として参画し、自身の知見を次世代へ継承するための特別プログラムを実施する。
島津製作所は2026年9月28日、東京都内で会見を開き、東北大学が同年10月1日に設置する「異分野融合計測イノベーションセンター(CICMI:Center for Interdisciplinary Collaboration in Measurement Innovation)」に参画すると発表した。
同センターは、分析計測プロセスの高度化を目指した研究開発と分析計測技術を活用した、健康に関わる医薬/農学領域における応用研究や、高度研究人材の育成を推進することを目的として設立された。両者はこれまで、共同研究や共創研究所などで協働しており、引き続き産学連携と異分野融合を促す拠点を活用し、研究成果の社会実装を進めていく。共同研究期間は2026年10月から2031年9月までの5年間で、両者が資金を拠出する。
質量分析をはじめとする計測技術の限界突破に挑む
東北大学 総長の冨永悌二氏は「東北大学は2024年に、国際卓越研究大学の第一号として認定/認可を受けた。CICMIは国際卓越研究大学のビジョンを体現する非常に重要な先駆的拠点になると考えている。分析科学の本質は、『常に見えないものを見えるようにすること』で、これが新たな学術的な発見の原点となっている。本学はこれまでも、島津製作所と個別の共同研究や、超硫黄生命科学共創研究所において、優れた成果を挙げてきた。CICMIは、これらの確固たる実績を踏まえて、設置された全学的なプラットフォームと機能する包括的な研究拠点だ。医学や理学、工学、農学、薬学などの知見を組み合わせた総合知を活用し、質量分析をはじめとする計測技術の限界突破に、全学体制で挑みたい」とあいさつした。
続けて、「CICMIには、ソフトレーザー脱離イオン化法の開発によりノーベル化学賞を受賞された、東北大学卒業生の田中耕一氏に国際卓越教授として参加してもらう。これは単なる名誉的な招聘(しょうへい)ではない。田中氏が培ってきた世界最高峰の独創的な知見やアイデアを本学に取り込み、共同研究や直接指導を通じて、本学の若手研究者、あるいは大学院生に直接インスパイアを与えてもらうという画期的な教育研究プログラムだ。東北大学と島津製作所のマッチングファンドの下、博士課程学生への強力な経済支援も組み合わせ、知と人材の好循環を本学主導で動かしていきたい。本学は島津製作所という唯一無二の戦略的パートナーとともに、アトモル未満、すなわち分子1個レベルに迫る超高感度計測を実現したいと考えている。一滴の血液から、疾患の早期発見や健康長寿社会の実現、さらには環境、食の課題解決に向け、世界をリードするイノベーションを創出していきたい」と意気込んだ。
これに対して、島津製作所 代表取締役社長の山本靖則氏は「CICMIの共同研究テーマに関して、当社 エグゼクティブ・リサーチフェローの田中耕一が、2002年にノーベル化学賞を受賞したソフトレーザー脱離イオン化法をベースに、質量分析技術の大幅な高度化と、同技術の前処理で使用する微小電気機械システム(MEMS)の開発を行いたい。この開発を通して、田中耕一が開発したマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置『MALDI-TOF MS』の分解能を大きく向上させて、より広い分野で使ってもらいたいと考えている」と語った。
田中氏は、CICMIに国際卓越教授として参画した理由について、「2002年にノーベル化学賞を受賞し、自分でも何かできるんだなと思った。その後、依頼を受けて数百回の講義や講演を行った。こうした経験を振り返る中で、まだ伝えきれていない知見があると最近考えるようになった。実際に準備しているのが動画の作成だ。私の知見をまとめた動画をオンデマンドで視聴できるようにする。それによって、自分自身のアイデア創出につなげるだけでなく、私ができなかったことを特に若い研究者の柔らかい頭で考えてもらうきっかけにしたい。20〜30の動画を作成する見込みだ。引退する前にもうひと花ぐらい咲かせるために、何かやらなければならないなと思って、国際卓越教授の役割を受けた」と説明した。
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