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耐熱鋼の基礎知識:鉄鋼材料の基礎知識(14)(1/3 ページ)

今なお工業材料の中心的な存在であり、幅広い用途で利用されている「鉄鋼材料」について一から解説する本連載。第14回は、耐熱鋼について説明する。

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 これまで数回にわたって「特殊鋼」の概要や種類について説明してきました。改めて説明すると、特殊鋼とは特殊な性質を持つ鋼であり、機器の高性能化や耐久性向上をサポートする優れた材料です。前回は主要な特殊鋼として「ステンレス鋼」について説明しましたが、今回は「耐熱鋼(たいねつこう)」について解説します。

 耐熱鋼は文字通り「熱に耐えられる鋼」であり、高温となる機器の部材に用いられます。高温環境は鋼にとって過酷な環境であり、鋼が損傷するリスクが各段に高まりますが、そんな環境でも耐熱鋼は優れた耐久性を発揮します。熱を取り扱う産業分野において欠かせない材料となっており、自動車、化学、火力など、多くの産業の発展に貢献しています。

 耐熱鋼に求められる材料特性は複雑であり、理解が難しい材料であると言えます。また、種類が多く、それぞれに強みや弱みがあるため、使用する者はそれらを十分に理解している必要があります。耐熱鋼が具体的にどのような材料特性を持っているかや、どのような種類があるかなどを解説していきます。

鋼は高温にさらされるとどうなるか

 耐熱鋼を扱うときは、耐熱鋼の材料特性を知ることが大切です。そのための予備知識として、まずは普通の鋼(炭素鋼)が高温にさらされると、どのようなことが起こるのかを説明します。ここでいう高温とは、おおむね400℃以上の温度と考えてください。

 鋼が高温にさらされると「強度低下」を起こすことは、容易に想像できるかと思います。図1は炭素鋼の高温引張特性を示していますが、温度が高くなるにつれて、引張強さが低下していることが分かります。つまり、高温にさらされている鋼構造物に負荷が加わった場合、室温では塑性変形が生じない大きさの負荷であっても、塑性変形と破壊をもたらすことになります。

図1 炭素鋼の高温引張特性[参考文献1]
図1 炭素鋼の高温引張特性[参考文献1][クリックで拡大]

 ただ強度低下を起こすだけなら、低い負荷で使用し続ければ問題ないと考えるかもしれません。しかし高温環境下では、他にも致命的な損傷をもたらします。それは「高温酸化」「高温腐食」「熱疲労」「クリープ変形」などです。これらは高温環境下で発生する特有の現象であり、経年的に進行して鋼を劣化させていきます。

高温酸化とは

 高温酸化は、高温環境下で金属が酸素と反応し、酸化が生じる現象です。炭素鋼では、500℃以上で顕著な高温酸化が起こります。

 高温酸化が起こると、金属表面に酸化皮膜(スケール)が生成されます。高温に長時間さらされるほど高温酸化が進み、スケールは厚みを増し、やがてはく離を起こします。流体が流れる機器内でこれが生じた場合、異物の混入を巻き起こして故障などの原因となります。

図2 高温酸化を起こした歯車[参考文献2]
図2 高温酸化を起こした歯車[参考文献2][クリックで拡大]

高温腐食とは

 高温腐食は、高温環境下で金属が腐食性ガスや塩化物などと反応し、腐食を生じる現象です。腐食のメカニズムについては前回説明していますが、腐食した部分は腐食生成物を生じながら溶けて減肉し、部材としての機能を失います。

 高温腐食をもたらすガスとしては硫化水素ガス、塩化水素ガス、アンモニアガス、水蒸気などがあります。化石燃料を燃焼したときに発生するアルカリ金属成分、硫黄成分、バナジウム化合物や、燃焼灰が溶けて生成される溶融塩なども高温腐食をもたらします。そのため、高温蒸気が流れる蒸気管や、高温ガスにさらされるボイラーの伝熱管、焼却灰が付着するごみ焼却炉の過熱管などでは、高温腐食に注意が必要です。

図3 高温腐食を起こしたボイラー伝熱管[参考文献3]
図3 高温腐食を起こしたボイラー伝熱管[参考文献3][クリックで拡大]

熱疲労とは

 熱疲労は、材料の温度変化に伴ってひずみと内部応力(=熱応力)が繰り返し発生し、それが蓄積したときに材料が脆化する現象です。

 鋼は加熱されると膨張し、冷却されると収縮する性質を持ちます。材料が拘束されている条件下では、膨張または収縮しようとする力に反発して熱応力が発生します。加熱と冷却が交互に繰り返されると、熱応力も変動して発生することとなります。こうして発生した熱応力が蓄積していくと、やがて材料が疲労して破壊に至ります。

 熱応力は、材料の表面と内部で温度差が生じた場合にも発生します。例えば、加熱によって材料表面のみ温度が上昇し、内部が冷えている場合です。この場合、表面と内部で膨張差が生じることで熱応力が発生します。そのため、運転と停止の繰り返しによって頻繁に温度差が生じる機器においては、熱疲労による破壊に注意が必要です。

図4 熱疲労のメカニズム
図4 熱疲労のメカニズム[クリックで拡大]

クリープ変形とは

 クリープ変形は、高温環境下で金属に一定の負荷が加わっているとき、時間の経過とともに塑性変形が進行し、最終的に破断に至る現象です。

 普通、材料の降伏が生じる負荷(降伏点)よりも低い負荷が加わっても、材料は塑性変形を起こしません。降伏点を超える負荷が加わったときに材料は塑性変形を起こし、負荷を増大させていくとさらに塑性変形が進んで破断します。

 一方、高温環境下では材料内の原子の拡散が生じやすくなるため、降伏点より低い負荷であっても塑性変形を起こします。これがクリープ変形であり、一定の負荷であってもゆっくりと塑性変形し続けます。最終的に破断(=クリープ破断)に至るため、負荷が加わり続ける高温機器においてはクリープ変形に注意が必要です。

図5 一定の負荷を与えたときのひずみの変化とクリープ変形
図5 一定の負荷を与えたときのひずみの変化とクリープ変形[クリックで拡大]

 このように、鋼は高温にさらされるとさまざまなダメージを受け、劣化していきます。当然、高い温度にさらされるほど大きなダメージを受けることとなります。そのため鋼にとって高温環境は過酷な環境であり、炭素鋼では400℃が実用温度の限界とされています。

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