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東電物流が倉庫の出荷数9割を自動化、Mujinのロボットと“割り切り”が実現の鍵物流のスマート化(1/3 ページ)

東電物流は中央支社にMujinのロボットケースピッキング自動化ソリューション「MujinRCP」を導入した。アームロボットと17台のAGVの統合制御により、中央支社における出荷個数の9割を自動化し、従来4人で行っていた作業を1人で行えるようにした。実現の鍵は、Mujinの先進的なロボットソリューションと、ある“割り切り”にあった。

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 2026年6月、Mujinは東電物流の中央支社(東京都大田区)において、ロボットケースピッキング自動化ソリューション「MujinRCP(Mujin Robotic Case Picking)」を稼働させたと発表した。産業オートメーションプラットフォーム「MujinOS」がアームロボットと17台のAGV(無人搬送車)を統合し、パレットの保管、積み付け順序の計算、AGVによる順立て供給、ケースのピッキング、パレットへの積み付けまでを一連のシステムとして制御している。

 これによって出荷個数の9割を自動化し、従来4人で行っていた作業を1人でできるようになった。電力インフラを維持するためには電線や変圧器などの資機材を必要な場所へ確実に届けなければならない。その物流を支える「インフラ」として、ロボットが動き始めている。

東電物流の中央支社における「MujinRCP」を用いた積み付け作業の様子[クリックで再生]

東電物流は電力を支える「ライフライン・ロジスティクス・カンパニー」

 経済活動の根底を支える電力。その安定供給を維持するために膨大な資機材が日夜動き続けている。東京電力グループに属する東電物流は、変圧器や電線、多種多様な保守部品など、電力インフラを支える資機材の調達、保管、輸配送を中核に事業を展開している物流会社である。

東電物流の主な業務
東電物流の主な業務[クリックで拡大] 出所:東電物流

 東電物流は単なる物流会社ではない。もともとは東京電力の電気設備資材を運ぶ会社としてスタートしたが、現在では資材の調達から倉庫での保管、流通加工、配送だけではなく、レンタル、リユース、さらには廃棄物の収集/運搬、通関、国際物流まで手掛けている。自社を「ライフライン・ロジスティクス・カンパニー」に位置付けるなど、物流を軸に電力インフラのサプライチェーン全体を支える企業へと事業領域を広げている。

 同社は150社を超える国内外のメーカーから約2000品目を調達し、顧客の現場へ届けており、物流商社としての機能も持っている。調達した資機材を保管するだけでなく、必要な長さへの切断や必要数量に仕分けてのパッケージングなどを行った上で現場へ届ける「流通加工」も行っている。顧客側の現場作業や在庫管理、事務処理まで含めて効率化することで、物流そのものをサービスとして提供する方向へ進んでいる。

東電物流が扱っている製品の一部
東電物流が扱っている製品の一部。これは絶縁器具である碍子(がいし)[クリックで拡大]

 また、電力会社には特有の物流ニーズがある。電柱、電線/ケーブルドラム、変圧器、大型機器、通信ケーブルなど、特殊な長尺物や重量物を扱っているからだ。輸送事業では常時100台以上の車両が動くネットワークを構築し、自社車両だけでなく全国の協力会社とも連携して、長距離輸送からラストワンマイルまで対応している。自然災害や設備トラブルが発生した場合には、必要な資機材を迅速に調達して現場へ届けることも求められる。東電物流にとって物流は、「電力」という社会インフラを安定供給するための基盤そのものなのである。

 電力業界も転換期にある。電力ネットワークは、脱炭素や分散型エネルギーの拡大、自然災害に対するレジリエンス強化などによって、大きく変化している。東電物流自身も変化を事業機会と捉え、従来の役割から、電力業界のバリューチェーン全体を効率化する役割へと進もうとしている。最終的には、電力業界に限定せず、社会インフラを支える企業のバリューチェーンをつなぐ「インフラ業界全体のバリューチェーン・インテグレーター」を目指すとしている。

中央支社をマザーセンターとして自動化

 東電物流の物流網の中核を担うのが、東京都大田区の東海にある中央支社である。関東圏全域をカバーする7拠点の中でも、全出荷量の約32%が集中する「マザーセンター」としての機能を果たしている。他拠点の在庫不足を補完する横持ち輸送拠点でもある。

 ドライバーの残業時間が制限される「物流2024年問題」はこれまでも議論されてきたが、本当の危機はこれから顕在化すると考えられている。2032〜2033年にドライバーの数は現在より3割以上減少すると予測されている。「若手人材の不足」と「ベテランの高齢化」が並行して進むためだ。

 中央支社が位置する大田区東海は日本屈指の物流拠点が並ぶ地区であり、巨大倉庫同士でパートタイマーの奪い合いが起きている。東電物流が扱う荷物は20kgを超えるダンボール、金属製品、碍子など、重量物が少なくない。人手での重量物のピッキング/搬送は、文字通り荷が重い。

 そこで東電物流が導入を始めているのが自動化設備だ。短期のROI(投資回収率)だけを重視するのではない。BCP(事業継続計画)としての自動化投資である。目標は単なる省人化ではなく、作業負荷の軽減と入出庫精度の向上、そして人手不足が進む中でも安定した物流オペレーションを維持することである。

多品種/重量物に対応する「MujinRCP」

 その一環が、今回の主な取材対象である、MujinのロボットやAGVを活用した「MujinRCP」の導入だ。前述の通り、東電物流の荷物には重量物が多い。また、同一品目であってもメーカーごとに箱のサイズや強度が異なり、荷姿も多種多様である。アームロボットで把持するとしても、従来の吸着パッドやグリッパーを備えたハンドではつかみきれない、あるいは傷を付けてしまうものも含まれている。

「MujinRCP」の導入エリア
「MujinRCP」の導入エリア[クリックで拡大]
東電物流の木部隆弘氏
東電物流の木部隆弘氏

 東電物流 ロジスティクス改革推進部 物流基盤改革グループマネージャーの木部隆弘氏は「物流展示会で多くのメーカーに相談を持ちかけても、同社が求める条件に対して断られることが多かった」と振り返る。だが、中間卸のパルタックや花王におけるMujinのロボット導入事例を知り、「これなら当社でもできるのではないかと思った」(木部氏)という。

 Mujinのロボットは、あらかじめプログラムされた動きをなぞるだけの従来型ロボットとは異なり、3Dビジョンを使って荷物を認識し、最適な軌道をリアルタイムで自律的に計算する。固定コンベヤーではなくAGVを使った柔軟なパレタイズ/デパレタイズにも対応している。この知能化技術であれば、多品種/重量物を取り扱えるのではないか。そう考えたのだ。

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