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欧米や国際機関におけるPFOS/PFOAの評価と管理PFASリスクの基礎知識(5)(1/2 ページ)

第4回では日本におけるPFOS/PFOAの健康影響評価と水中の基準値(合計で50ng/L)、基準値を超過した場合のリスクの判断方法について解説した。今回の第5回では、欧米や国際機関におけるPFOS/PFOAの評価と管理について説明する。

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米国の評価と水道水の基準値

 米国の飲料水の基準値(規制を伴わない健康勧告値)は、以前はPFOS/PFOAの合算で70ng/Lであり、これは日本の基準値50ng/L(合算値)よりも少し高い値であった。これが一変したのが2022年6月である。暫定的な飲料水の健康勧告値としてPFOSで0.02ng/L、PFOAで0.004ng/Lと提案された。つまり、これまでよりも1万倍近くも厳しい値となったのだ。一体何が起こったのか、という疑問が出るだろう。

 米国は有害性評価を見直し、新たな影響として「免疫力」に注目した。疫学調査によって、血中のPFOS濃度が高いほど、子供にジフテリアワクチンを打った際の抗体の増加量が少ない、という関係に注目した。また、同じように血中のPFOA濃度が高いほど、子供に破傷風ワクチンを打った際の抗体の増加量が少ない、という関係も得られていた。

 このような影響(ワクチン抗体価の減少)に注目して基準値を設定した例は他の化学物質では見かけたことがない。実際の基準値設定のプロセスを図1に示す。抗体価が下がりだす血中濃度を一日当たりの摂取量に換算した後は、基本的には第4回で紹介した日本のプロセスと同様であるが、一日の水摂取量が体重当たりで示されていたり、摂取寄与率(日本は10%、米国が20%)が違っていたりなど、細かい違いがある。

図1. 米国におけるPFOS・PFOAの暫定飲料水健康勧告値の導出
図1. 米国におけるPFOS・PFOAの暫定飲料水健康勧告値の導出[クリックで拡大]

(1)PFOSについて、フェロー諸島における子供を対象とした研究に基づき、ジフテリアワクチンを接種した際の抗体価上昇度の減少を根拠に、抗体価が5%減少するPFOS曝露量として0.079ng/kg(体重)/日と推定された。

(2)不確実係数(UF)としてヒトの個人差の不確実性10を適用し、健康影響を防止する参照用量として0.0079ng/kg(体重)/日となる。

(3)子供が1日に0.0701L/kg(体重)の水を飲み、水からの摂取寄与率を20%として(残りは食品などから摂取)、 参照用量から水中濃度を換算すると

0.0079(ng/kg〈体重〉/日)×0.2/0.0701(L/kg〈体重〉/日)=0.02ng/L

となる。

(4)PFOAについて、PFOSと同じ研究に基づき、破傷風ワクチンを接種した際の抗体価上昇度の減少を根拠に、抗体価が5%減少するPFOA曝露量として0.015ng/kg(体重)/日と推定された。

(5)不確実係数(UF)としてヒトの個人差の不確実性10を適用し、健康影響を防止する参照用量として0.0015ng/kg(体重)/日となる。

(6)子供が1日に0.0701L//kg(体重)の水を飲み、水からの摂取寄与率を20%として(残りは食品などから摂取)、 参照用量から水中濃度を換算すると

0.0015(ng/kg〈体重〉/日)×0.2/0.0701(L/kg〈体重〉/日)=0.004ng/L

となる。

 この基準値は規制を伴わない(順守義務がなく、超えても水道水が止まったりしない)が、その後2023年3月に、順守義務のある飲料水の規制値案が提案された。こちらの基準値はPFOS/PFOAともにそれぞれ個別に4ng/Lであった。2022年に示された健康勧告値に比べてPFOAではいきなり1000倍も緩くなったのだ。

 これも一体何が起こったのか、さらに疑問は深まる。本当なら規制の基準値もPFOSで0.02ng/L、PFOAで0.004ng/Lとしたかったところであるが、このような低すぎる濃度を分析できる手法がまだ確立しておらず、基準値を守れているかどうかを確かめるすべが現時点ではない、ということが問題だった。そのため、分析できる下限の濃度である4ng/Lが代わりに基準値となったのだ。このとき、PFOS/PFOA以外のPFASについても複数物質の合算値として基準値が提案されたが、その後第2次トランプ政権になってからPFOS/PFOA以外の基準値については撤廃されてしまった。

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