データスペース時代に日本企業はどう備えるか、NTTグループが進める仕組みづくり:加速するデータ共有圏と日本へのインパクト(10)(2/5 ページ)
欧州を中心に広がるデータ共有圏の動向と、日本産業への影響を解説する本連載。第10回では、データスペースのグローバルな普及を見据え、日本企業が安全かつ容易に接続できる環境の整備を進めるNTTグループの取り組みを紹介する。
「データスペース」を構成する具体的な仕組みとは
ここで、あらためてデータスペースの仕組みと主要な構成要素について振り返っておきたい。
データスペースというと、巨大な中央集権型クラウドにデータを預ける仕組みを想像されがちだが、実態は「電話」や「インターネット」の通信方式に近い。中央にデータを蓄積するストレージは存在せず、電話帳やカタログからアクセスしたい相手の番号(ID)を見つけ、交換機(コネクター)を通じて、1対1(ピアツーピア)で直接通信するのが基本の仕組みだ。
さらに、直接の取引関係(契約)がない企業間でデータをやりとりするユースケースにおいても、信頼できる第三者機関が発行する「デジタル証明書(トラストクレデンシャル)」を用いて身分証や資格認定証を登録/提示することにより、セキュアなコネクター経由で未知の相手とも安全かつ迅速にデータを交換できる先進的なアーキテクチャが実装されている。
データを守る関所「コネクター」
データスペースの要となるのが「コネクター」と呼ばれる標準化されたデータ交換用ソフトウェアだ。
これは、企業同士がデータをやりとりする際に必ず通る「専用の関所」のようなものだ。自社のデータにアクセスできる相手を限定し、競合他社やハッカーなどが不正にアクセスするのを防御できる機能が備わっている。これまで、企業はそれぞれのやり方でIDとパスワードを発行してデータへのアクセス権限を管理する必要があったが、このコネクターは「データスペースプロトコル」と呼ばれる、世界共通の標準化された通信方式を用いてアクセス権を自在に設定し制限できる。どのようなアプリケーションソフトも、この標準仕様のコネクターを通すことで特定の相手とだけスムーズかつセキュアにつながることができるのだ。
コネクターには、大きく分けて2つの機能が存在する。
- 相手の本人性とルールの自動チェック:「法人ID」「会社情報」にひも付く通信相手のコネクター番号(ID)を確認し、事前にお互いで決めた条件(契約ポリシー)に合致する相手にだけ、必要なデータを必要な時に開示するよう自動的に制御
- 盗み見を防ぐ専用のトンネル:通信の要求や応答のやりとりを行う経路(通信制御用チャネル)とは完全に分けて、実際のデータを送るための「データ送受信用チャネル」を用意。これにより、第三者に不正に通信内容を盗み見られることなく、安全にデータを渡すことができる
相手が「本物」かどうか見極めるデジタル証明書「VC」
コネクターが安全に機能するためには、「通信相手が本当に名乗っている通りの信用できる企業や人物なのか」を確実に確かめる必要がある。そこで活躍するのが「VC(Verifiable Credential:検証可能なクレデンシャル)」と呼ばれるデジタル証明書だ。
これは、現実世界における「パスポート(旅券)」や「ビザ(査証)」「運転免許証」「会社の登記簿」のデジタル版をイメージすると分かりやすい。この証明書の発行や利用の手順について、まだ日本では明確なルールが定められていないが、次のようなステップで行われることになると想定される。
- 証明書を発行してもらう:データスペースを利用するためにデジタル証明書が必要な企業は、政府から認定を受けたデジタル証明書発行機関に、自社の法人登記簿を提示して、それにひも付くデジタル身分証(現実世界のパスポートに相当するもの=トラストアンカーとなるVC)を発行してもらい、その証跡をインターネット上の「証明書登録所」に登録してもらう。さらに、データスペース運用事業者にそのデジタル身分証を提示してサービス利用契約を締結し、使いたいアプリケーションの利用資格証明書(現実世界のビザに相当するVC)を発行してもらう
- 自分の「ウォレット」にしまう:発行された各種証明書は、「ウォレット」と呼ばれる自分専用のデジタルなお財布(保管場所)に安全に入れておく
- 証明書を見せて本物か確認してもらう:他社にデータの開示をリクエストする際、相手から「本人確認の証明書と利用資格証明書を見せてください」と要求されたら、ウォレットから該当の証明書を提示する。データ提供者側は、提示された証明書の内容をただ信じるのではなく、インターネット上にある「証明書登録所」にアクセスして「これが偽造されていない本物かどうか(真贋判定)」を確実にチェックする
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