産業領域で熱視線を集める「Unity」 マツダ、NEC、三菱電機など採用事例が続々:Unity 産業DXカンファレンス 2026レポート
世界をリードするゲームエンジンの「Unity」は産業領域の課題解決基盤として存在感を高めている。「Unity 産業DXカンファレンス 2026」から、3Dデータ活用を支えるUnityの最新機能や、マツダ新型「CX-5」の車載HMI、NECのバーチャルトレーニング、三菱電機の協働ロボット向けノーコード開発環境などの事例を取り上げ、Unity活用の現在地をレポートする。
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンは2026年6月9日、「Unity 産業DXカンファレンス 2026」を開催した。4回目となる今回は「リアルタイム3Dが切り拓く 産業DXの最前線」をテーマに、幅広い産業分野におけるUnity活用の現在地が示された。
CADデータを設計部門の外へ Unityが支える産業向け3D活用基盤
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの基調講演では、「AI世代を据えた、3Dデータ活用のための全社基盤の構築と活用」をテーマに、産業領域におけるUnityの方向性が語られた。
製造業で作成されるCADデータの多くは、設計や製造工程内での活用にとどまりがちだ。同社 松原達也氏は「CADデータはそのソフト内だけで価値を発揮するという思い込みを覆したい」と述べ、CADデータを営業、品質管理、サポートなどへ展開する重要性を訴えた。そのステップとして示したのが、A、B、C、Dの4段階からなる「End-to-End 3D Pipeline」だ。
AのAdaptでは、CADやBIMなどの重い3Dモデルを「Asset Transformer」で軽量化/最適化。BのBridgeでは「Asset Manager」により、Webブラウザで3Dモデルを保存、検索、閲覧、共有し、設計部門以外での業務活用につなげる。
CのCreateでは「Unity Industry」や「Unity Studio」で3Dコンテンツに機能を加え、デジタルツイン、シミュレーション、訓練、XRアプリ、HMIなどを構築する。DのDeployでは、それらをWeb、VR/AR、デスクトップ、モバイル、HMI向け環境へ展開。これら一連の流れをUnityが支援する。
後半では、同社 高橋忍氏と竹内一生氏が、Asset ManagerやUnity Studioなどの最新機能を紹介。Unity Studioでは、Asset Manager上のCADデータを取り込み、3Dモデルの配置、アニメーション、ボタン操作、Webアプリ公開までを簡単に行える点を示した。「UnityがインストールされていなくてもWebブラウザさえあれば、PowerPointでスライドを作るような感覚でアプリを作成できる」(高橋氏)。
さらに「Unity AI」のデモでは、工場のデジタルツイン用テンプレートに3Dモデルを追加し、既存のAGV(無人搬送車)と同様に操作可能にする流れを対話形式で実演。竹内氏は「Unity AIを使えば、簡単なプロンプトの作成を含めても2〜3分で、自社データをテンプレートに適用し、社内レビュー可能な形にできる」と強調した。
マツダ新型「CX-5」に見る車載HMI開発 国内メーカー量産車初のUnity採用
マツダは「マツダ 新型CX-5におけるUnityを用いた車載HMI開発の軌跡」と題し、量産車でのUnity活用事例を紹介した。スマートフォンの普及やADASの進化、車両のネットワーク接続、音声認識技術の高度化などで車内に表示、操作すべき情報は増えているが、ドライバーの認知負荷や視線移動は抑えなければならない。
同社が重視したのは、直感的な操作、安全性、そして「ひと中心」の開発思想だ。その実現にUnityが一役買っている。同社 君嶋良太氏は、「派手な演出のために3Dグラフィックスを使うのではなく、車両状態を直感的に示し、ドライバーの認知負荷を減らすために活用した」と説明。同時に、操作系を全てタッチパネルに統合すればよいわけではなく、頻繁に使う機能は目視しなくても操作できる物理スイッチが望ましく、双方の使い分けが重要であると訴えた。
新型「CX-5」は、国内メーカーの量産車として初めて車載HMIにUnityを採用。新プラットフォーム「MAZDA E/E ARCHITECTURE+」の下、大型タッチパネル式ディスプレイや同社初のGoogle搭載インフォテインメントシステムによりHMIを一新した。Unityは3D CGやUI/UX領域で、車両とドライバーをつなぐ表現基盤として活用されている。Unity採用の決め手は、パフォーマンス、セキュリティ、耐障害性、迅速なサポート、そして技術コミュニティーが活発な点だという。
この取り組みは、2024年3月にマツダとUnityが締結したパートナーシップ契約を機に本格化した。ゲームやVRなどの経験を持つ人材も加わり、マツダはUnityによる内製開発体制の下で新型CX-5の量産開発を進めた。
車載アプリ開発には、ゲーム開発とは異なる前提も多い。同社 長谷部直起氏は、品質、リソース、検証の時間軸、意思決定に関わる範囲の4点を挙げた。ゲームでは体験価値や没入感が重視される一方、車載アプリでは安全性、信頼性、耐久性を前提に、車両開発全体の工程や多くの関係者との連携を踏まえた品質の積み上げが不可欠だ。
特にリソース面では、複数の機能が同じSoC上で動作するため、描画品質だけを優先できない。「限られたリソースの中で、他の機能と共存しながら品質を成立させる必要があった」(長谷部氏)。量産車開発では、Unityの表現力を生かすだけでなく、システム全体を見据えた調整と地道な最適化が欠かせないことを示した。
保守人材育成を「バーチャルトレーニング」で高度化 NECのUnity活用
NECは「バーチャルトレーニング活用による人材育成の革新」と題し、保守領域におけるUnity活用事例を紹介した。同社は2015年からVRを活用しており、現在はアフターサービス領域を中心に事業を展開している。
同社の「バーチャルトレーニングセンター」は、物理施設を仮想空間に再現し、訓練機会の増加とコスト削減を両立する仕組みだ。VRコンテンツに加え、業務システム連携や訓練データの可視化/分析、資格証明書発行まで含めた「トレーニング基盤」として活用できる。NEC 野中崇史氏は「バーチャルトレーニングは、アフターサービス領域における人手不足に加え、教育の効率化とスケーラビリティ向上を実現するものだ」と説明した。
仮想空間内の作業履歴は、標準手順との差分、作業時間、危険作業の有無などとして受講後すぐに可視化。受講者の反復学習だけでなく、管理者による教育内容の継続的な改善にも活用される。講演では、ダイキン工業やNECファシリティーズでの採用事例も紹介された。さらに野中氏は、蓄積した作業データをAIモデルの学習に活用し、省人化やさらなる業務高度化への展開(フィジカルAIの活用など)も視野に入れる構想も示した。
後半では、NECプラットフォームズ 嶋田大祐氏が技術開発のポイントを説明。同システムは、人が容易に行けない場所や危険な場所にある設備など、実機では再現が難しい危険作業や環境を安全に体験するため、デジタルツインを活用した保守訓練として開発されたという。
同社では顧客提案の段階からUnityを活用し、デジタル試作を作成。体験可能な形で示すことで具体的なフィードバックを得て、要件定義や概要設計に役立ててきた。嶋田氏はUnity活用の利点について「開発情報が豊富で、初めてでも約1カ月半でモックアップを作れた。AIサポートを活用すればさらに効率的に開発できる」と説明。加えて、必要なアセットが用意されている点も利点に挙げた。
Unityの有償サポート「Essential Success」も利用。アプリの最適化やXRコンテンツのテスト自動化/効率化などで支援を受け、バーチャルトレーニング基盤の開発を進めた。XRやデジタルツインを用いた新規事業では、技術だけでなく品質管理や運用体制の整備も欠かせない。Unityの開発基盤と支援を活用しながら、そうした課題を最後までやり切る情熱の重要性を強く訴えた。
新型「CX-5」の実車展示で体験するUnity搭載の次世代IVI
マツダの展示ブースでは新型CX-5の実車展示が多くの来場者を集め、Unityを活用した次世代IVIの体験予約も早々に満席となった。車内に搭載された15型ディスプレイに触れると反応は軽快で、ドア開閉と連動した3D表示、エアコン風向きの直感的な設定、ADAS(先進運転支援システム)機能の3D可視化などを体験できた。
同社の狙いは、単にグラフィックスをリッチにすることではない。車両状態や安全機能の作動状況を直感的に示し、画面の注視時間を抑えることにある。ブース担当者は「3Dグラフィックスの方が、これまでのメニュー式のHMIよりも直感的で判断にかかる時間は短くなる」と説明。安全を最優先にした体験を追求している。
Unityの採用理由とHMI開発について、マツダ 後藤誠二氏は「技術面や採用領域の裾野の広さ、Android OSとの親和性に加え、車載向けの安全認証への対応やサポート体制が大きかった。限られた車載リソースの中で他機能とUI/UXを共存させ、量産車としての品質を成立させるために、設計と作り込みを重ねてきた。新型CX-5は、マツダが目指す“安全で分かりやすいHMI”を量産車に落とし込んだ大きな成果だ」と述べる。
ノーコードで協働ロボットを動かす Unityで専門性の壁を下げる三菱電機
三菱電機の展示ブースでは、協働ロボット「ASSISTA」とUnityを活用したエンジニアリングソフトウェア「MELSOFT RT VisualBox」を紹介していた。
同ソフトの特長は、コードを書かずにロボットの動作を構築できる「Easy Programming」だ。その狙いは、ロボットのプログラミングを専門エンジニアだけでなく、より多くの人が扱えるものへ広げることだ。実際にそのUIは非常にシンプルで、従来システムのような複雑な印象がなく、洗練されていた。
MELSOFT RT VisualBoxでは、画面上のロボットに命令ブロックをフローチャートのようにつなぎ、直感的に動作を組み立てられる。従来システムにおけるUIの煩雑さを抑え、ロボットの姿と処理手順を一体的に見ながら操作できる。ブース担当者は「Unityは産業用途でも非常に使えるUIデザインのインフラのような機能を備えている」と語った。プログラムやロボット表示をレイヤーで分けて管理できる点に加え、直感的なUIを短期間で開発しやすい点も利点になったという。
MELSOFT RT VisualBoxは初期導入段階のニーズにも応える。視覚的なUIは言語の壁を越えやすく、海外での技術教育にも展開しやすい。同社の展示は、UnityのUI表現力を生かし、専門性の高いFA機器活用の裾野を広げる可能性を示していた。
産業領域でのUnity活用は、既に現場課題に即した実装段階へと広がっている。本レポートで紹介した内容はその一部にすぎない。今回のイベントを見逃した方は、2026年8月5日開催のオンラインカンファレンス「Unity 産業DXカンファレンス PLUS 2026」をぜひ確認してほしい。Unity活用の基本から先進事例まで、計23講演が無料配信される予定だ。
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提供:ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2026年8月16日















