部門間連携の壁 「連携しよう」では動かない、協働を生む3つの組織設計のワザ:海外駐在員になったら知ってほしい「3つの壁」(4)(1/2 ページ)
多くの製造業が海外での成長を目指す中、海外駐在員の役割は重要になっています。しかし、日本と海外のギャップで力を発揮できない場合も多く見られます。本連載では、HR視点でどのような考え方が必要で、どのような協力体制を築くべきかをお伝えします。最終回となる今回は「部門間連携」について解説します。
本連載では、HR(Human Resources)の視点で、海外駐在がぶつかる「リーダーシップの壁」「現地化の壁」「連携の壁」という3つの壁について、MAPSというフレームワークで読み解いてきました。
前回までは「リーダーシップの壁」と「現地化の壁」の2つの壁について解説してきましたが、最終回となる今回は「部門間連携」について解説します。
「部門間連携」という組織課題に向き合うための3つの要件
部門を越えて協働し、イノベーションを生み出す組織をつくること――。
これは世界中の企業が掲げながら、なかなか実現できていない組織課題です。その課題に、異文化という変数が加わる環境で向き合っている多くの製造業の取り組みは、難易度が高い分だけ価値があると見ています。
この課題を解決するのが難しいのは「努力が足りない」からだと捉えてしまい、正しい方向性ではない取り組みを重ねてしまうためです。課題の要因は「使っているアプローチが、課題の構造と合っていない」場合がほとんどです。
「連携しよう」と呼び掛けて、動いてくれることを期待しても、その実現は困難です。部門間連携を実現するには、「共通目的」「協働意思」「コミュニケーション」という3つの要件を、それぞれ意図的に設計する技術が必要です。
共通目的:「目的を掲げる」から「衝突を設計する」へ
「全体で協力して商品クオリティーを上げる」など、複数部門で共通目的を掲げることは重要です。しかし、目的を掲げるだけでは部門間連携はなかなか生まれません。なぜなら、組織は「個人の集合体」ではなく「関係性の集合体」だからです。
6つの部門があれば「6部門×5部門÷2=15本」の関係性が存在します。問題は、関係性=「部門の間」に生まれます。各部門にはそれぞれの個別目的とKPI(重要業績評価指標)があり、それらは構造的に衝突してしまうケースもあります。
例えば、開発スピードを優先したい部門と品質確保を最優先したい部門、コスト削減を求めたい部門とサービス水準を死守したい部門など、それぞれで利害の衝突が生まれます。こうした利害の衝突は、共通目的を掲げるだけで解消されるわけではありません。
課題を解決するためには、「開発と生産の間では何が衝突しているか」「衝突した場合、会社としてどう解釈するか」「調整責任は誰が持つか」を明示し、リーダーが個別の利害関係について交通整理することが必要です。この交通整理による「衝突解決の設計」がないと、共通目的に沿った協働は生まれません。この交通整理を現場に任せることは難しいからこそ、リーダーが自分事として取り組むことが必要となります。
協働意思:「方針を理解する」から「共感を紡ぐ」へ
「他部門と連携しよう」という個人の協働意思(貢献欲求)は、命令や方針だけでは生まれません。なぜなら、人はモチベーションや感情に左右されるからです。行動が生まれるためには個人の「共感」が重要になります。
共通目的が明確で、衝突が設計されていたとしても、各自が腑に落ちた状況でなければ、自発的な行動は生まれません。「なぜ連携することが全体最適につながるのか」「連携した成果はどう自部門の評価に反映されるのか」「短期の負荷を超えた長期のメリットは何か」などの疑問に対し、こうした問いへの答えをリーダーが用意し、伝えていくことが重要になります。
こうした地道な浸透ができていなければ、どれだけ連携を訴えても人は動きません。ファンクション視点ではなく全社、顧客、長期視点で連携する意味を一人一人に腹落ちさせることが求められます。協働意思(貢献欲求)を引き出すには、リーダーが個人の共感を紡ぐ行動が必要です。
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