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ストレッチ素材と三元系混紡への挑戦、そして循環の未来へ混紡繊維の分別/リサイクル技術(3)(1/2 ページ)

本連載では、大阪大学 大学院工学研究科 教授の宇山浩氏の研究グループが開発を進める「混紡繊維の分別/リサイクル技術」を紹介。第3回では、ストレッチ素材や三元系混紡繊維のリサイクル技術について解説する。

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衣料品の機能性を支えるストレッチ素材の光と影

 全3回にわたる本連載の締めくくりとして、今回は現代の衣料品において欠かすことのできない要素であるストレッチ素材、そして複数の繊維が複雑に組み合わさった三元系混紡繊維のリサイクル技術について詳述します。

 近年のアパレル市場において、消費者が衣料品に求める価値は劇的に変化しました。かつての天然繊維中心の時代から、ポリエステルなどの合成繊維によるイージーケア性が重視される時代を経て、現在はさらなる快適性や機能性が追求されています。その象徴ともいえるのが、ポリウレタンに代表される弾性繊維を用いたストレッチ素材です。スポーツウェアはもちろんのこと、ビジネススーツやデニム、カジュアルなシャツ、さらには子供服や作業服に至るまで、動きやすさやフィット感を付与するためにポリウレタンが数%混用されることが一般的となりました。

 ある調査によれば、世界の弾性繊維市場は今後も力強い成長を続け、2030年には200億米ドルを超える規模に達すると予測されています。このように市場が拡大する一方で、リサイクルの観点から見ると、ポリウレタンの存在は極めて高い障壁となってきました。回収された衣料品の構成繊維を分析すると、単独繊維の割合は約35%にすぎず、2種類以上の繊維を含む混紡製品が約65%、その中でも3種類以上の素材を用いた製品が47%と半数近くに達しているのが実態です。

リサイクルにおけるポリウレタンの技術的課題

 ポリウレタンがリサイクルの壁といわれる理由は、その化学的性質にあります。従来のポリエステルのケミカルリサイクルにおいては、少量のポリウレタンが含まれているだけで、分解反応が阻害されたり、回収される原料の純度が著しく低下したりする問題が発生します。ポリウレタンは熱や薬品に対してポリエステルとは異なる挙動を示すため、これまでの技術では効率的に引き離すことが困難な不純物として扱われてきました。

 また、ポリウレタンを混用した生地は、複数の素材が物理的/化学的に密接に結合しているため、物理的な粉砕や選別だけでリサイクルしようとしても到底太刀打ちできません。このため、ストレッチ性を付与した高機能な製品ほど、その寿命を終えた後は資源として循環することなく、焼却処分や埋め立てに回される運命にありました。

マイクロ波によるポリウレタンの選択的分解技術

 筆者らの研究グループはこの難題を解決すべく、マイクロ波加熱と特定の薬剤系を組み合わせた新たなアプローチを開発しました。この技術の核となるのは主成分の繊維である綿を傷めることなく、ポリウレタン成分のみを狙い撃ちして迅速に分解/除去する選択的分別プロセスです。

 実験室レベルの検証では、綿95%、ポリウレタン5%の混紡生地に対し、特定の薬剤と溶媒を加え、マイクロ波で200℃、わずか3分間加熱する条件を確立しました(図1)。この条件下では、ポリウレタン成分はほぼ完全に分解され、液体中に溶け出します。100℃や150℃といった低温域ではポリウレタンの分解が不十分ですが、200℃では迅速に反応が進み、回収された綿繊維からはポリウレタン由来のピークが完全に消失することが赤外分光分析(IR)によって確認されています。

図1 綿95%、ポリウレタン5%の混紡生地に対し、特定の薬剤と溶媒を加え、マイクロ波により200℃で3分間加熱するプロセス
図1 綿95%、ポリウレタン5%の混紡生地に対し、特定の薬剤と溶媒を加え、マイクロ波により200℃で3分間加熱するプロセス[クリックで拡大]

 さらに、光学顕微鏡による観察では、未処理の状態で繊維に付着していたポリウレタンの網目構造が、上記の処理後にはきれいに消失している様子が捉えられています(図2)。物理的な特性評価においても、処理後の生地はストレッチ性が大幅に低下し(図3)、ポリウレタンが化学的に除去されたことが物理的にも裏付けられました。

図2 未処理の状態で繊維に付着していたポリウレタンの網目構造が、処理後にはきれいに消失している様子
図2 未処理の状態で繊維に付着していたポリウレタンの網目構造が、処理後にはきれいに消失している様子[クリックで拡大]
図3 処理後の生地はストレッチ性が大幅に低下
図3 処理後の生地はストレッチ性が大幅に低下[クリックで拡大]

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