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「稼ぐ在庫」と「死に資産」の境界線 キャッシュを生み出す在庫設計4つの鉄則「稼ぐサプライチェーン」の作り方(2)(2/4 ページ)

在庫は減らすものではなく、設計するもの――。本連載では、実践的な知見をもとに「稼ぐサプライチェーン」の構築法を解き明かします。第2回となる今回は、在庫を「形を変えたキャッシュ」として捉えるB/S視点からさらに踏み込み、会社のキャッシュを最大化する「在庫設計」の4つの実践ポイントと、稼ぐためのマネジメント手法を取り上げます。

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その在庫は「稼いでいる」か――良い在庫と悪い在庫の境界線

 在庫を正しく管理するためには、全ての在庫を一括りにしてはいけません。「在庫が多い」「在庫が少ない」という量の議論だけでは、本質を見誤ります。見るべきは、その在庫がキャッシュを生んでいるのか、それともキャッシュを止めているのかです。

 B/S視点で見ると、在庫は大きく2つに分けられます。将来の売り上げや利益につながる「良い在庫」と、キャッシュを固定化し、利益を圧迫する「悪い在庫」です。

良い在庫と悪い在庫
良い在庫と悪い在庫[クリックで拡大]

 良い在庫と悪い在庫は固定的な分類ではありません。発売直後には戦略在庫だったものが、販売計画を下回れば滞留在庫となり、時間の経過とともに陳腐化在庫へ変わることもあります。だからこそ、在庫は定期的に見直す必要があります。

1.目的別に見る「持つべき在庫」

 戦略的に持つ合理性がある在庫として、代表的なのは以下の3つです。

  • 戦略在庫:大型案件やシェア獲得のために、あえて厚く持つ在庫。売上機会を取りに行くための在庫です。
  • 安全在庫:需要予測の誤差やリードタイムのブレを吸収するための在庫。実績を踏まえ、根拠を持って設定すべきです。
  • 季節在庫:繁忙期や需要期に向けて、事前に積み増す在庫。需要期に生産能力や物流能力が追い付かない場合に合理性があります。

 これらは、将来の売り上げや利益を取りに行くための在庫です。言い換えれば、キャッシュを生むための「投資」に近い存在です。特に高利益率の商品や、欠品による顧客離脱リスクが大きい商品では、適切に維持することが合理的に設定されます。

2.経営をむしばむ「悪い在庫」

 一方で、早急に手を打つべきなのが、キャッシュの流れをせき止めている在庫です。

  • 滞留在庫:出荷が長期間止まっている在庫。キャッシュを生む力が弱くなっている可能性が高い在庫です。
  • 陳腐化在庫:仕様変更や新商品の登場、劣化/破損などにより、売れる見込みが低くなった在庫。値引きや廃棄が必要になる可能性があります。
  • 念のため在庫:「何となく不安だから」という理由で積み上がった在庫。保有目的を説明できない在庫です。

 これらの在庫は、B/S上では「資産」に計上されています。しかし実態としては、キャッシュを生む能力を失った「死に資産」に近い存在です。倉庫スペースを占有し、管理コストを発生させ、将来的な値引きや廃棄ロスを生むという意味で、「見えない赤字」でもあります。会計上も、正味売却価額が取得原価を下回る場合には、棚卸資産評価損の検討が必要になります。陳腐化在庫はキャッシュの問題であると同時に、利益にも影響し得る問題です。

3.陳腐化在庫はなぜ生まれるのか

 陳腐化在庫とは、単に「古い在庫」ではありません。重要なのは、将来キャッシュ化できる可能性です。例えば、次のような在庫は陳腐化リスクが高いと言えます。

  • 値引きしなければ売れない、または値引きしても売れない
  • 将来価値が下がることが見込まれる
  • 販売チャネルが限られており、消化策が少ない
  • 廃棄リスクが高い
陳腐化在庫の主な発生要因
陳腐化在庫の主な発生要因[クリックで拡大]

 特に近年は、顧客ニーズの多様化によってSKU(最小管理単位)が増えやすくなっています。色/サイズ違い、専用品、限定品などが増えることで在庫構造は複雑化し、少量ずつ売れ残る在庫が積み上がりやすくなります。

4.陳腐化在庫は「見えない赤字」である

 多くの企業では、陳腐化在庫がB/S上に残り続けます。会計上は資産であっても、実態としては将来売れる可能性が低く、値引きや廃棄の可能性がある。つまり、帳簿上の資産価値と、将来キャッシュ化が見込める価値にズレが生じている状態です。ここで厄介なのは、在庫には人の感情が入り込みやすいことです。

「せっかく作った」

「原価が高かった」

「いつか売れるかもしれない」

「廃棄すると失敗を認めることになる」

 こうした心理が働き、意思決定が先送りされます。しかし、持ち続けることにもコストがあります。倉庫費用、管理/棚卸工数、品質劣化リスクなどを考えれば、「捨てないこと」が常に合理的とは限りません。在庫は、売るか、使うか、処分するか。いずれかの出口を持たなければ、キャッシュを止め続けます。

5. 判断基準は「回転速度」と「貢献利益」

 在庫の良しあしを判断する際、担当者は金額や数量という「量」で見がちです。しかし、経営にとって重要なのは、「スピード」と「利益」です。在庫量が多くても、高い貢献利益を生み、高速で回転しているなら、それは「稼ぐ在庫」です。逆に、在庫量が少なく見えても、動かず利益も生まない在庫は、企業から現金を奪い続ける「悪い在庫」です。

 そこで使いたいのが、「在庫日数」という見方です。「在庫が10億円あります」といわれても、それが多いのか少ないのかは判断しづらいものです。しかし、「在庫が180日分あります」と言われれば、「今の売り上げペースだと、現金化に半年かかる」と分かります。在庫を金額ではなく、日数という時間軸で語ることが、議論の質を大きく変えます。

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