“AIの学校”で開発期間を7割削減、“蒸留”するオムロンのAI学習手法「DcX」とは:人工知能ニュース(1/2 ページ)
オムロンは、同社の研究子会社であるオムロン サイニックエックスが研究開発に取り組むAI技術「Decentralized X(以下、DcX)」の概要について説明した。
オムロンは2026年6月12日、東京都内で会見を開き、同社の研究子会社であるオムロン サイニックエックスが研究開発に取り組むAI(人工知能)技術「Decentralized X(以下、DcX)」の概要について説明した。
DcXは各現場で生成されたAIモデルのみを持ち寄り、その出力結果を“教師”として用いる「蒸留技術」を利用した非集中型の学習手法だ。これにより、各現場の固有データを第三者などの外部に共有することなく、異なる環境や対象の特徴を単一のAIモデルに統合可能だ。
オムロン 執行役員 ストラテジックR&D本部長 兼 オムロン サイニックエックス 代表取締役社長の諏訪正樹氏は「近年、現場にあるデータを活用したAIモデルが作られ始めてきたが、このAIモデルは現場にあるデータだけで構築しているため、性能がなかなか上がらないという課題がある。これに対し、DcXはローカルデータで学習させたAIモデルを統合する技術である。イメージ的には“AIの学校”にある程度勉強をしたAIモデルが集まり、学校の勉強を通じてより賢くなったAIモデルが各現場に帰るという構造である」と強調する。
一般的なAI学習は、まず現場のデータを集め、これを中央サーバやクラウドに全て集約する。その後、この集まった大量のデータを計算リソースを活用しながらAIに学習させる。しかし、この手法の場合、製造現場や医療現場などに散在するデータをインターネットを活用して集めることは、セキュリティの関係やオンプレサーバ内にデータが存在するといった理由から非常に難しいという課題があった。
これに対し新しいAI学習手法であるDcXは、この課題解決に貢献する。同手法は学習元のローカルデータを外に出すのではなく、成長したAIモデルを中央側で統合して、AIモデルを成長させるという構造である。そのため、データを共有せずにセキュアな環境でAIを高度化可能だ。
諏訪氏は「DcXのローカルでAIモデルを賢くして統合するという技術はオムロン サイニックエックスが初めてではなく、既に連合学習という形で存在している。しかし従来の連合学習は、中央側からローカルにAIモデルを配り、学習して賢くなったAIモデルを後から回収するという手法であり、発想の方向がDcXとは逆である」と語る。
DcXは現場の固有データにこだわらずに、AIモデルだけを統合することにより、運用レベルの性能を短期間で獲得可能だ。各現場で発生するさまざまな事例を学習したAIモデルを中央に集めることで、ある現場で学習した事例を「経験済みの知見」として、他のAIモデルにも適用できる。「全てのデータを学習したAIモデルと比べて精度は少し落ちるが、短期間でこのAIモデルにどこまで近づけることができるのかをDcXの研究として進めている」(諏訪氏)。
このような複数のAIモデルを統合するために、DcXは「蒸留技術」を活用している。同技術は1兆に及ぶパラメータ数を保持する巨大AIモデルの中から、重要なポイントだけを抜き出して活用可能だ。巨大AIモデルが持つ知識の良い部分(上澄み)のみを活用するため、蒸留技術といわれている。
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