なぜパナソニック エナジーはAIデータセンター向け蓄電システムで勝てるのか:パナソニックグループのAIインフラ戦略(後編)(1/2 ページ)
パナソニックグループはなぜAIインフラ領域に注力し、そこにどのような勝算があるのだろうか。後編では、AIデータセンター向け蓄電システムで躍進するパナソニック エナジーの取り組みを紹介する。
パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)は2026年5月12日に、2032年度までを視野に入れた成長戦略を発表し、重要分野として「AI(人工知能)インフラ」と「ソリューション」という2つの領域を掲げており、2026年6月8日には「Panasonic Group Investor Day 2026」を開催し、この「AIインフラ領域」と深く関わる事業会社であるパナソニック インダストリーとパナソニック エナジーの中期の戦略について説明した。
前編ではパナソニック インダストリーの取り組みについて紹介したが、後編では、AIデータセンター向け蓄電システムで躍進するパナソニック エナジーの取り組みを紹介する。
AIデータセンター向け蓄電システムで大きく成長
パナソニック エナジーは従来、EV(電気自動車)向けの電池を中心としてきたが、EV市場の失速の一方で、AIデータセンター向け蓄電システム市場の伸長に合わせ産業/民生向け電池を拡大し車載向けと産業向けのバランスを取る形へとシフトしている。その中で、データセンター向けの需要をしっかりつかむことで、2028年度には売上高2兆円規模、調整後営業利益3000億円以上(2025年度は売上高9842億円、調整後営業利益721億円)を目指す。
AIデータセンター向けでは、ハイパースケーラー4社の設備投資は2028年までに2.5倍に増える予測が出ている。AI向けデータサーバは多数のGPUによる処理を支えるために短時間で大量の電力を消費する。そのため、電力のピークが高くなり、電圧も不安定になりやすいことから、安定的で信頼性の高い電源が求められ、サーバラックごとに電源を配置する分散型電源方式に注目が集まっている。この分散型電源方式を実現するのに必要なバックアップ電池(BBU:Battery Backup Unit)としてパナソニック エナジーの提案に対する引き合いが高まっているというわけだ。
その中で、パナソニック エナジーは、安全な電池を核とした蓄電システムを基軸に、データセンター向け電源ソリューションプロバイダーを目指すとしている。パナソニック エナジーのサーバラック内設置型のデータセンター向け蓄電システムは、リチウムイオン電池セルを組み込んだ複数の蓄電モジュールと、それを格納するシェルフから構成される。停電時のバックアップ機能に加え、電力消費のピーク時に不足分を補うピークシェーブ機能を搭載し、データセンターの効率的な電力運用と安定稼働を実現する。
AIデータセンター向け電源ソリューション事業では、2028年度に売上高1兆円規模を目指し、必要な投資を進めていく計画だ。
パナソニック エナジー 社長執行役員 CEOの只信一生氏は「2025年12月の方針発表では2028年度に8000億円を目標としていたが、これは2027年度に達成できる見込みとなったことで、目標を引き上げた。また、2026年5月の決算発表時は売上高9500億円としていたのを、今回1兆円規模に引き上げたのは、受注合意案件の確度が上がった案件があったためだ」と説明する。
パナソニック エナジーがAIデータセンター向け蓄電システムで勝てる理由
パナソニック エナジーが、AIデータセンター向け蓄電ソリューションでここまで強みを発揮できるのには「業界リーダーとの強い関係性」「顧客課題を解決する設計提案力」「提案商品の具現化力」の3つがあるという。
只信氏は「BBUのコア部分の開発については、顧客企業が5年先の半導体の進化を見据えたシステムの課題などを検討する中で、共同で電源だけでなくスペックを含め一緒にレファレンスを作り込んでいる。これを踏まえてデバイスとして作り込み、それを提供するという形となるため、早い段階で先の受注がある程度見えている状況だ。車載などは顧客から与えられたスペックを作り込むような形となるが、AIインフラは一緒にゼロから作り込む形だという違いがある。その中で現在は2世代まで採用が進み、3世代目の開発を行っているため、先の見通しがある程度立っている」と語る。
実際に、こうした共同で作り込んだスペックでの案件であるAward(顧客から製品の開発推進や受注合意を得た案件)を、売上高計画に含まれるものについてはほぼ全て確定しているとし、売上高計画の達成がほぼ確実な状況になっているという。「決算説明時はAwardの獲得については8割程度の確定状況だったが、今は10割となった。そのため、先の売上高見通しの確度は上がっている」(只信氏)。
また、信頼性についても重要なポイントだという。只信氏は「データセンター向けの電源でも集中型電源では、電池セル単位で考えると分散型電源ほどの信頼性は必要ないため、価格競争にさらされる。しかし分散型になるとAIサーバのすぐ近くに設置されることになるため、燃えるなどの事故が許されないものとなる。そのため電池セルにも信頼性や安全性が求められる。分散型電源に集中することが参入障壁にもなり、価格競争に陥らないポイントにもなる」と説明する。
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