赤外線発光ダイオードを使って光信号を送受信する:空間伝送で学ぶ光通信入門(3)(1/2 ページ)
光通信の基礎から応用までを紹介する本連載。第3回は、赤外線発光ダイオードを使って光信号を送受信する実験を行う。
はじめに
本連載は光通信の空間伝送がテーマですが、前回までは光にどのように送りたい信号を載せるか、またそれをいかに復調するかについてお話してきました。
今回は、基本に立ち返って、光信号の送受信の基礎である発光と受光について解説したいと思います。
発光素子と受光素子
一般的な光通信では、送信側には半導体の発光素子が用いられます。LED(発光ダイオード)あるいはLD(レーザーダイオード)などがそれに当たります。また、受信側は、PIN PD(PINフォトダイオード)、APD(アバランシェフォトダイオード)、ICR(コヒーレント受光素子)などが用いられます。
LEDは、LDに比べて安価で扱いやすい発光素子です。光の出力は弱いため、短距離/低速の通信(構内LANやオーディオケーブルなど)で使用されます。
LDは、コヒーレントで指向性の高い(単一波長で真っすぐ進む)レーザー光を出力します。高速/長距離通信や大容量データ伝送の主流です。
光通信で使用されるLDは主に次の2種類です。DFB(分布帰還型)レーザーは波長が安定しており、長距離/大容量通信に広く使われます。一方、VCSEL(面発光レーザー)は小型で低消費電力であり、主にデータセンター内のラック間など、比較的短い距離の通信で多用されます。
光通信における受光素子は、光ファイバー内を伝送されてきた光信号を電気信号に変換するデバイスです。現在、主に以下の3種類が用途に応じて使い分けられています。
- PIN PD(PINフォトダイオード)
- 特徴:P層/I層(真性半導体)/N層を組み合わせた構造です。構造がシンプルで応答速度が速く、最も広く使用されています
- 用途:短距離〜中距離の光通信や、一般的な光回線の受信機など
- APD(アバランシェフォトダイオード)
- 特徴:高い逆電圧をかけることで、光で発生した電子を雪崩(アバランシェ)のように増倍させる機能を持っています。これにより非常に高い受光感度(S/N比)を実現しています
- 用途:信号が微弱になる長距離/大容量の光海底ケーブルや、長距離通信ネットワークの受信機
- ICR(コヒーレント受光素子)
- 特徴:次世代の高速/大容量通信(デジタルコヒーレント通信)で用いられます。局発光(ローカルオシレーター)を用いて光の「位相」や「偏波」の情報を正確に復調できる高機能な受光素子です
- 用途:超大容量のコアネットワーク(都市間・大陸間通信)やデータセンター間の通信
今回の実験概要
今回の実験では、送信側の発光素子に信号を入力して、受信側の素子でその信号を観測できるか試してみます。
図1に、LEDによる光通信の空間伝送の実験概要を示します。
最初にお話ししておかなければならないことがあります。今回の実験では、送信側の発光素子と受信側の受光素子、両方とも同じ赤外線LEDを用いている点です(図2)。
以下に、今回使用する赤外線LEDの主な仕様を示します。
- 種別:砲弾型
- 赤外/紫外:赤外線
- ピーク波長:940nm
- 放射強度:55mW/sr
- 放射束:12mW
- 順電圧:1.35V
- 順電流max.:100mA
- 逆電圧:5V
- 許容損失max.:180mW
- 半減角:15度
- 動作温度min.:−30℃
- 動作温度max.:85℃
- 端子部形状:ピン
- 実装タイプ:スルーホール
- 長さ:8.7mm
- 径:5mm
“発光”ダイオードなのになぜ受光素子として機能するのかという点に疑問があるかもしれませんが、それについては次回以降に深掘りしたいと思いますので、今しばらくお待ちください。
さて、図1に戻りましょう。
LED1が送信側の発光ダイオードです。これは本来通りの発光ダイオードの使い方で発光します。そこに信号発生器で生成した信号を与えます。するとLED1はその信号に応じて発光します。
次に、この信号に応じた光が空間を伝わりLED2に到達します。LED2はその光を電気信号に変換します。その信号をオシロスコープで観測して、信号発生器で生成した波形が受信側のオシロスコープで観測されれば、光通信における空間伝送が行われたことになります。
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