「猫も杓子もAI」な現状は今後も続くのか?【後編】AI時代に必要な3つの検討事項:武田一城の「製品セキュリティ」進化論(6)(2/3 ページ)
近年「製品セキュリティ」と呼ばれ始めたセキュリティの新分野に関する事象を紹介し考察する本連載。今回は、「AIの今後」について筆者が必要だと考えている「3つの重要検討事項」について述べる。
【重要検討事項(2)】AI時代の勝者と敗者を分けるものとは?
AIが社会に浸透していくとき、よく語られるのが「AIに仕事を奪われるのか」という問いである。これは確かに重要な問題だ。しかし、もう少し正確に言えば、これから起きるのは「AIに奪われる仕事」と「AIによって増幅される仕事」に分岐していくことかもしれない。さらに言えば「AIを使う側」と「AIに使われる側」の差が広がる時代の到来なのだろう。
過去の「IT革命」と呼ばれた時代でも、実は似たようなことが起きていた。ITという新たなツールに適合し、PCやインターネットを使いこなせる人は、情報収集、文書作成、業務処理の速度を大きく高めた。
一方で、それらを使えない人は、同じ仕事をしているはずなのに、いつの間にか生産性で大きな差をつけられていったのだ。生成AIは、このIT革命の際に起きた断絶を、さらに広げてしまう可能性が高い。なぜならAIは、単なる道具ではなく、思考や表現や分析そのものを補助する性質があるからだ。
企業や組織においても同じことがいえる。AIを導入した企業が全て勝者になるわけではない。重要なのは、AIを単なる流行のツールとして導入することではない。AIを自社の業務プロセスにどのように組み込むかによって、その企業のたたき出す成果や利益が左右されるようになるだろう。
例えば、会議の議事録を自動化する、問い合わせ対応を効率化する、営業資料の作成を高速化する――このような分野でAIが活躍することは、すでに幾つもの事例が物語っており、実践している企業も少なくない。
そして、ソフトウェア開発やIT基盤の分野は、さらに圧倒的な成果が見込まれている。開発工程でコードレビューを補助する、同じく開発工程でテストを実行することで、ソフトウェア品質を向上させる。そして、このタイミングで同時にセキュアコーディングのルールに適合するかをテストできるのであれば、それはかなりセキュアなシステムとなるだろう。
こうした小さな改善が積み重なると、企業全体のビジネススピードやプロセスごとの品質は大きく向上するだろう。それでも、AIを使うこと自体が目的化してしまえば、かえって混乱を招く可能性もある。誰がどのタイミングでAIの出力を確認するのか。AIのロジックが理解できず、誤った回答をそのまま顧客に出してしまわないか。社外秘の情報を入力してしまわないか。AIが作った資料やコードの品質をどう保証するのか。
ルールや運用を整えないまま導入すれば、AIは生産性向上の武器などではなくなる。管理不能、制御不能なリスクにも成り得るからだ。
また、企業や組織だけではなく、個人レベルでも大きな変革があるかもしれない。なぜなら、AI時代によって、人間の持つスキルの価値は単純な知識量だけでは決まらなくなるからだ。知識を持っていることは依然として重要なものの、それ以上に「問いを立てる力」「結果を評価する力」「文脈を読み取る力」「責任を持って判断する力」などが重要になる。
もちろん、AIは答えらしきものを出すことには非常に長けている。しかし、「その答えが本当に正しいのか」「それを使っても良いのか」「今の状況でその手を打った方が良いのか」このような難しい意思決定をするのは、最終的には人間となる。
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