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錦鯉が高麗人参を育てる? 水槽の中で「栄養が循環する」ICT栽培とはスマートアグリ(1/2 ページ)

NTT東日本と再春館製薬所は、AIを活用した高麗人参の「アクアポニックス栽培」の共同実証を開始した。錦鯉との循環型農法で完全無農薬での国内安定生産を実現し、葉や茎を含めた全草活用を目指す。

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 NTT東日本と再春館製薬所は2026年6月2日、東京都調布市の「NTT e-City Labo」において、オタネニンジン(高麗人参)の循環型農法の共同実証実験に関する記者説明会を開催した。両社はICTとAI(人工知能)を活用し、魚の養殖と水耕栽培を組み合わせた「アクアポニックス栽培」を導入することで、オタネニンジンの国内安定生産モデルの確立を目指す。

NTT e-City Labo内の実証環境
NTT e-City Labo内の実証環境[クリックで拡大]

99%を海外輸入に依存

 オタネニンジンは、滋養強壮や疲労回復の効果があるウコギ科の多年生植物である。近年は血流改善や美容、冷え対策などへの効果も期待されている。カプセルやエキスなどを中心とする美容/健康分野の市場規模は300億円に迫り、需要は拡大傾向にある。

オタネニンジンの現状
オタネニンジンの現状[クリックで拡大] 出所:NTT東日本
再春館製薬所の間地大輔氏
再春館製薬所の間地大輔氏

 一方で、現在国内で消費されるオタネニンジンの約99%は海外からの輸入に依存している。天候不順や農業分野における人手不足の影響もあり、従来通りの安定供給を維持することが難しく、将来的な調達リスクが高まっているのが実態だ。

 再春館製薬所 ポジティブエイジ統括本部 経営責任者の間地大輔氏は、「オタネニンジンは当社の基礎化粧品『ドモホルンリンクル』などの品質の根幹を担う不可欠な原料だ。国際輸送に伴う燃料消費や環境負荷を軽減しつつ、希少な原料を継続的に確保するためには、新たなアプローチによる国内生産モデルの構築が急務となっている」と述べ、今回の実証実験に至った背景を説明した。

錦鯉のふんをバクテリアが分解、AIが栽培条件を分析

 そこで両社は、魚の養殖と植物の水耕栽培を組み合わせた循環型農法「アクアポニックス」に、ICTとAIを組み合わせた栽培システムを構築した。実証設備では3つの水槽に約30匹の錦鯉を飼育しており、オタネニンジンの生育ラックには、土壌で2年間育てた苗を約1700本植え付けている。

錦鯉用の水槽
錦鯉用の水槽[クリックで拡大]
3つの水槽で約30匹を飼育している
3つの水槽で約30匹を飼育している[クリックで拡大]

 アクアポニックスは、錦鯉の排せつ物をバクテリアが分解し、植物の栄養素へと変換する仕組みを利用している。オタネニンジンがその栄養を吸収することで水が浄化され、浄化された水が再び水槽へと戻る。土壌を一切使用せず、水を循環させることで環境への負荷を抑えた栽培モデルだ。

 この循環サイクルを維持し、生産を安定化させるためにNTT東日本のセンシング技術が導入した。錦鯉の水槽には水質センサーを設置し、水槽内のpH(ペーハー)、溶存酸素量、水温を常時測定している。また、苗のラックに設置したセンサーにより、照度、室温、湿度、二酸化炭素濃度を測定する。システムはこれらの環境データを1分間に1回取得し、通信ゲートウェイを介してAIが分析し、最適な栽培条件を導き出してWeb管理システムに提示する仕組みだ。

オタネニンジンの生育ラック
オタネニンジンの生育ラック[クリックで拡大]
アクアポニックス栽培とICTの仕組み
アクアポニックス栽培とICTの仕組み[クリックで拡大]

 錦鯉は温かい水を好むが、オタネニンジンは冷たい水を好む。そのため今回の設備では、植物の栽培エリアに冷やした水を送り、植物を経て魚の水槽へ戻る際に水を再び温めるという温度制御を行っている。取得したデータに基づく水温管理を実装することで、異なる生育環境を必要とする魚と植物を1つの循環システム内で共生させることを可能にした。なお、錦鯉が食べるエサは企業秘密だという。

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