G-SHOCKの進化を支えた材料活用の歴史、初代でウレタンを採用したワケ:素材で進化する製品(2)(1/3 ページ)
1983年の発売以来、堅牢な腕時計として愛されるG-SHOCK。そのタフさとデザインは、さまざまな素材の活用とともに進化してきた。初代のウレタン採用秘話から、フルメタル、カーボンの活用など、G-SHOCKの素材進化について、カシオに聞いた。
多くの一般消費者から支持されて、長期間にわたって売れ続ける商品を指す「ロングセラー商品」。本連載ではコンシューマー向けのロングセラー商品の素材にスポットライトを当て、同商品の素材に関するメーカーの取り組みを紹介する。
第2回は、2023年に発売から40周年を迎えた腕時計ブランド「G-SHOCK」だ。カシオ計算機(以下、カシオ)が手掛けるG-SHOCKは、2025年3月末時点で世界累計出荷台数が1億6000万台を超えている。
同社 羽村技術センター 時計事業部 商品企画部 部長の齊藤慎司氏に、G-SHOCKシリーズの材料活用の歴史やその背景、今後の展開などを聞いた。
初代モデルでウレタン樹脂の活用をスタート
G-SHOCKの初代モデルとして1983年に発売された「DW-5000C」の時計本体に当たるメインケースは、ステンレス(メタル)製だ。DW-5000Cでは、G-SHOCKシリーズの長所である20気圧防水という高い防水性を確保するため、堅牢なステンレス製のメインケースを採用した。
しかし、ステンレス製のメインケースは、落下時などに生じる衝撃をダイレクトに内部のモジュール(ムーブメント)に伝達するため、その衝撃への対策が求められる。
そこで、カシオはDW-5000Cのメインケースの外側にウレタン樹脂製のベゼルとバンドを配置した全方向ガード構造により、落下時の衝撃をベゼルとバンドで吸収できるようにした。メインケースの内部ではモジュールを点で支えて浮かせる「中空構造」を採用した他、メインケースの内側にもウレタン樹脂製の緩衝材を備えた。これらの取り組みにより、落下の衝撃や振動への耐久性を向上した。
齊藤氏は「当時、腕時計でウレタン樹脂を採用すること自体が新しかった。そのため、ウレタン樹脂をベゼルやバンドの形状に成形するノウハウがほぼなかった。金型にウレタン樹脂を流し込み、対象のベゼルやバンドの形状に成形する際には、金型の温度やウレタン樹脂の粘度、硬度をコントロールする必要がある。こうした課題を解消しつつ、ウレタン樹脂の成形に関するノウハウを蓄積してきた」と振り返った。
こうした課題がありながらもウレタン樹脂にこだわった要因としては、「トータルバランスの高さ」を挙げている。ウレタンは耐摩耗性に優れ、引き裂き強度が高く、水やオイル、熱に対しても強い耐性を有している。衝撃を吸収する適度な柔らかさも備えていることから、G-SHOCKの材料に適しており、現在に至るまで採用され続けている。
G-SHOCKブーム到来とデザインの解放
1996年に入ると、G-SHOCKは若者を中心にブームとなる。生産が追い付かなかったこともあり、高い価格で転売されるなどの社会現象を起こした。同年に発売されたのが「DW-5600E」だ。DW-5600Eでは、G-SHOCKで初めてガラス繊維強化プラスチック製のメインケースが採用された。
齊藤氏は「これにより、G-SHOCKは『形状の自由度』を手に入れた。金属加工では難しかった複雑な形状に射出成形で対応できるようになった。それまでのG-SHOCKのモジュール形状は丸型(ラウンド型)だったが、ガラス繊維強化プラスチック製のメインケースを採用することで、丸形より液晶画面を大きくとれる樽型に対応できるようになった。さらに、フロントボタンやベゼルの配置、立体的な造形に関する自由度が高まり、デザインの幅が広がった」と話す。
同年にはG-SHOCKで初めてのフルメタル腕時計「MR-G」の初代モデル「MRG-100-1/MRG-100-7」が発売された。「落下時の衝撃エネルギーは、重ければ重いほど大きくなる。樹脂より重い金属でフルメタルケースやバンドを作れば、落下時にパーツが破損したり、外れたりするリスクが上がる」(齊藤氏)。
この問題をクリアするために、金属製の各パーツの間にウレタン樹脂製の緩衝材(クッション)を挟み込む構造が開発された。齊藤氏は「スクリューバックの裏蓋側やベゼルの裏側に樹脂パーツを設置し、外部からの衝撃を内部に伝えない特殊なサスペンション構造も実現したことで、フルメタルの重厚感とG-SHOCKの耐衝撃性を両立させた」と胸を張る。
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