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旭化成マテリアル領域が「選択と集中」、総合化学から高付加価値分野にシフト製造マネジメントニュース(2/3 ページ)

旭化成のマテリアル領域が転換点を迎えている。国内ナフサクラッカーの統廃合を進め基礎化学品を縮小する一方、AI半導体向け材料や蓄電池など高付加価値分野へシフト。中東情勢の悪化による原料高騰という逆風の中、同社はいかにして成長軌道を描くのか。

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EV向け電流センサーは新規採用が拡大

 ケミカル事業で構造改革が進められる一方で、マテリアル領域の重点成長領域として旭化成の利益をけん引するのがエレクトロニクス事業だ。

 エレクトロニクス事業の最大の強みは、旭化成が長年磨き上げてきたニッチな材料技術にある。現在、生成AI(人工知能)をはじめとする先端技術の普及により、AIで利用する半導体の高機能化を実現する材料や電子部品の需要が急拡大している。旭化成はこのニーズを捉えるために、感光性絶縁材料「パイメル」の生産能力拡大を前倒しで決定した。パイメルは最先端の半導体パッケージ分野において高い評価を得ており、AIサーバ向けを含む先端用途での採用が拡大している。

エレクトロニクス事業の状況
エレクトロニクス事業の状況[クリックで拡大] 出所:旭化成

 パイメルに加え、ガラスクロスや感光性フィルム、接着剤向け硬化剤といった半導体周辺材料についても高付加価値化と用途拡大が進行中である。また、電子部品分野では電気自動車(EV)向けの電流センサーの新規採用が本格化しており、今後の利益成長ドライバーになるという。エレクトロニクス領域全体として、高い技術力と顧客共創を強みに、2030年には売上高3000億円という目標の達成を目指している。

EV市況の悪化を受け、ESSもターゲットに

 マテリアル領域において、戦略的なかじ取りが求められるのが、リチウムイオン電池用セパレーター「ハイポア」を展開するエナジー&インフラ事業だ。

セパレータ市場の動向
セパレータ市場の動向[クリックで拡大] 出所:旭化成

 旭化成はこれまで、グローバルで進むEVシフトを背景にリチウムイオン電池用セパレーター領域に投資を行ってきた。しかし足元では、北米市場を中心としてEVの成長動向が想定よりも鈍化している。工藤氏は「2024年4月の投資決定時に描いていた成長シナリオから、大きな変化が生じている」と市場環境の変化を認めている。

 これを受け、旭化成は北米での展開を見直した。カナダオンタリオ州でハイポアを生産する新工場の建設自体は計画通り進捗しているものの、本格稼働の時期については市場動向を慎重に見極め、現時点で「1年半から2年の延期」を想定し、フル稼働のタイミングは2030年以降を見込む。

ハイポアの北米展開
ハイポアの北米展開[クリックで拡大] 出所:旭化成

 EV市場の成長鈍化の一方で、生成AIやデータセンターの急増に伴い電力のニーズが拡大しており、電力貯蔵システム(Energy Storage Systems、ESS)向け大型蓄電池の需要が高まっている。北米のESS向けリチウムイオン市場は2027年度までにEV用途と同規模になると見込まれている。

 こうした状況を踏まえて旭化成は、EV用のリチウムイオン電池だけでなく、ESS用のリチウムイオン電池を対象にハイポアを展開する。ESS用のリチウムイオン電池は、長期的な運用サイクルに耐え得る品質保証や、どのようなセパレーターが適しているかといった知見が必要となる。

 工藤氏は「当社はそこにビジネスチャンスがあると考えている。当社は、ESS用リチウムイオン電池の長寿命化に貢献するセパレーターの構造など、さまざまな知見を有している。その知見の量は国内外でトップレベルで、こういったノウハウをデータドリブンで運用可能だ。そのため、ESSに適したハイポアを生産できる」と強調した。

 ハイポア事業に関して、旭化成は足元では車載用途の顧客を拡大するとともに、ESS用途の拡販を推進する。当初の計画では2028〜2030年に民生用途(スマホ、PCなど)と車載用途(日系自動車メーカー)でハイポアを展開する予定だったが、EV市況の悪化を受けて、2028〜2030年には、民生用途(スマホ、PCなど)、ESS用途、車載用途(日系/その他の自動車メーカー)で展開し、収益を底上げする。2030年には、民生用途(スマホ、PCなど)、ESS用途、車載ハイエンド用途、車載用途で収益を高める計画を立てている。同社では2030年に売上高1100億円以上、営業利益率20%程度を目標に掲げている。

ハイポアの事業計画
ハイポアの事業計画[クリックで拡大] 出所:旭化成

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