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あの金型今どこ? もう何年使ってない? かつての慣習が法令違反になる理由FAニュース(1/2 ページ)

公正取引委員会が、金型の無償保管に対する姿勢を強めている。Resilireは2026年1月の中小受託取引適正化法の施行で加速する金型管理のコンプライアンスリスクに関する説明会を東京都内で開催し、金型の無償保管などの慣習に対して注意喚起した。

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 Resilire(レジリア)は2026年4月16日、同年1月の中小受託取引適正化法(以下、取適法)の施行で加速する金型管理のコンプライアンスリスクに関する説明会を東京都内で開催した。

急増する公取委の「勧告」、金型の無償保管リスクとは

 自動車部品の製造などにおいて、親事業者(委託事業者)が下請け事業者(中小受託事業者)に金型を預けて、自社製品に必要な部品の製造を委託するケースが多い。部品を量産している間は売り上げもあり大きな問題にはならないが、やがて製品の更新などで部品の注文は減っていく。そこで、注文がないのに金型の保管コストだけを下請け事業者に押し付けているケースが法令に違反するとして、公正取引委員会が「勧告」という形で公表する事例が急増している。

 取適法は、従来の下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)が改正されたものだ。下請法自体は1956年に、親事業者による優越的地位のらん用行為の防止を目的に制定された。2004年の下請法改正では、不当な経済上の利益の提供要請の禁止が追加され、2008年に公正取引委員会は金型の無償保管が下請法違反になると言及。2016年12月に、下請法の運用基準に金型の無償保管要請が下請法違反となる場合の事例を追加した。

 下請法違反を理由とする公正取引委員会の勧告件数は、2021年度が4件で金型などの保管に関する勧告はなかったが、2022年度は6件の勧告のうち金型の保管に関する勧告が1件、2023年度は13件のうち金型の保管に関する勧告が3件、2024年度は21件のうち9件、さらに2025年度は39件のうち26件が金型などの保管に関連した勧告になるなど急増している。

G&S法律事務所の野崎智己氏
G&S法律事務所の野崎智己氏

 G&S法律事務所 パートナー弁護士の野崎智己氏は「公正取引委員会として、社会全体の構造的な問題に対して、しっかり摘発していく姿勢を強めている。下請け事業者へのヒアリングなどを通して無償保管などに関して調査しており、実態が以前と変わっているわけではないが、是正に向けた強い姿勢を示す中で、勧告の件数が増えてきたと分析している」と語る。

 野崎氏は、親事業者側にそもそも金型の保管費を払うという認識がないことが大きい、とする。「従来の慣行として“預かるのが当然”とされてきたため、そもそもどこにどれだけの金型を預けているのか、管理するという発想がない。勧告を受けた企業も、意図的に違法行為をしていたわけではなく、今までの慣行に沿っているうちに対象になってしまったケースが多い」(野崎氏)。

 具体的にどのような例が下請法違反とされるのか、公正取引委員会のWebサイトではQ&Aという形で公開している。主に下記のように分類、整理できるという。

・1年以上製品の発注がないにもかかわらず、当該の金型などを無償で保管させていた事例

・金型の廃棄や引き取りの希望を伝えられていたにもかかわらず、引き続き金型を無償で保管させていた事例

・今後1年間の具体的な発注時期を示せない状態にもかかわらず、引き続き金型を無償で保管させていた事例

・当該の木型などを改めて使用する予定がないにもかかわらず、引き続き木型などを無償で保管させていた事例

 その他にも、金型の保管状況を無償で調査、報告させたり、補充部品を大量に生産させ、無償で保管させた事例なども違反とされている。

Resilireの五十嵐将大氏
Resilireの五十嵐将大氏

 野崎氏は「金型の無償保管にとどまらず、いろいろな負担を下請事業者に求めることが多くあり、それらも“不当な利益提供の要請”という形で勧告の対象になっている」と指摘。Resilire 金型管理事業責任者の五十嵐将大氏も「慣習として、金型保管などの費用が部品代に含まれる、という考え方があった。ただ、量産終了後は、量産時代と1個当たり保管費が変わるが、従来の系列文化が残り、考え方が変わってこなかった」と述べる。

 公正取引委員会によって取適法違反と認定されると、助言、指導、勧告という形で是正を促される。勧告になると、公正取引委員会のWebサイトで企業名や違反内容が公表され、メディアで取り上げられる可能性もある。「違反の事実を広く社会に伝えられることになり、重大なレピュテーションリスク(信用や評価の低下)が生じる」(野崎氏)。

 助言、指導で是正を促し、それでも改善が見られない場合に勧告に移るケースが多いが、法律として順序が決まっているわけではないため、助言や指導がなくても勧告の対象になり得るという。

 取適法と同様に、下請け関係の改善を目的とした受託中小企業振興法(以下、振興法)という法律も存在する。振興法でも、型などの取引を分類して保管に関するルールを定めており、違反した場合は指導、助言、勧奨という措置が取られる。

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