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MOFを用いた次世代CO2回収技術の実証成功、前処理簡略化と省スペースを実現脱炭素

自社工場からのCO2排出量(Scope1)削減に貢献するCO2回収技術の開発が進められている。神戸製鋼所、Atomis、長瀬産業は、次世代材料「MOF(多孔性金属錯体)」を用いた新しいCO2回収技術の日量30kg規模での実証に成功した。

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 神戸製鋼所、Atomis、長瀬産業の3社は2026年4月16日、2025年ノーベル化学賞の対象となった多孔性金属錯体(MOF:Metal-Organic Framework)の技術を用いたCO2回収装置(MOF-PSA)の開発において、日量30kg規模の実証試験に成功したと発表した。

 この成果により、MOFを用いたCO2回収技術の有効性が明らかになったことを受け、3社は次のステップとして、MOF-PSAによるトン規模(MTスケール)の実証試験に向けた検討/協議を2026年度に開始する。産業利用を見据えて、MOFを用いたCO2回収技術を実用スケールへ拡大する取り組みは日本初だという。

 PSAとは圧力変動吸着を意味し、複数成分を含むガスを加圧して吸着剤に送り込むことで特定のガスを吸着させ、吸着剤に吸着しないガスはそのまま通過させた後、減圧によって吸着剤から特定のガスを脱離させるというサイクルを繰り返し、高純度の気体(窒素や酸素など)を分離/精製する技術だ。

ドライアイスやオンサイトでの利活用を想定

 工場のボイラーや工業炉などから排出されるガスにはCO2や水蒸気、窒素が含まれている。そのため、金属イオンと有機配位子で構成される多孔性材料「ゼオライト」のような既存の吸着材を用いたCO2回収技術では水分を除去する前処理設備が必要となり、設備の大型化やエネルギーコストの増加といった課題があった。

 一方、企業にはScope1〜3の温室効果ガス削減が求められており、特に自社設備から直接排出されるScope1のCO2を対象に、省エネルギーかつ省スペースで導入可能な回収技術へのニーズが高まっている。Scope2は他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出量を指し、Scope3はScope1〜2以外の間接的な温室効果ガスの排出量となる。

 こうした状況を踏まえて、神戸製鋼所、Atomis、長瀬産業の3社が開発を進めるMOF-PSA方式のCO2回収装置では、CO2を選択的に吸着できるMOFを装置に搭載している。これにより前処理工程が大幅に簡略化でき、設備の小型化と省エネルギー化を同時に実現できる。さらに、CO2濃度が低い排ガスに対しても適用可能であるため、さまざまな工場に実装可能だ。

MOFを用いたCO<sub>2</sub>回収装置のイメージ(左)とAtomisが開発したMOF(右)
MOFを用いたCO2回収装置のイメージ(左)とAtomisが開発したMOF(右)[クリックで拡大] 出所:神戸製鋼所

 今回の実証試験は、神戸製鋼所と高砂製作所の実証/実装の場「TAKASAGO GX Try Field」(兵庫県高砂市)において、都市ガス燃焼により発生する排ガスを対象に2025年11月に始まった。燃焼排ガスから目標とする性能(純度/回収量など)が得られるかを実証した。

 同装置で回収したCO2は、ドライアイスなどに加え、オンサイトでの利活用も想定している。一部を海外からの調達に頼っていたCO2を、国内で循環させる資源へ転換することで、経済価値と環境価値の両立を目指す。3社は今後、実用化/事業化を見据えた取り組みを加速させ、脱炭素社会の実現に貢献していく。

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