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「Renesas 365」は3カ月かかる作業が1分に!? OTAアップデートなどのデモも披露組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

ルネサス エレクトロニクスが同社史上最大規模の買収を経て開発した、デバイスの調査/選定、モデルベースでのシステム設計、設計妥当性の初期検証を単一の統合プラットフォーム上で実現する「Renesas 365」の一般提供が始まった。Renesas 365の狙いや方向性を説明するとともに、デモンストレーションを通した実際の利用イメージを紹介する。

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 ルネサス エレクトロニクスが、同社史上最大規模となるECAD(プリント基板設計ツール)大手アルティウム(Altium)を買収した2024年8月から約1年半が経過した。このアルティウム買収で目指していたのが、デバイスの調査/選定、モデルベースでのシステム設計、設計妥当性の初期検証を単一の統合プラットフォーム上で実現する「Renesas 365, Powered by Altium(以下、Renesas 365)」の開発だ。

 Renesas 365は2025年3月の「Embedded World 2025」でそのコンセプトが発表された。それから1年後となる2026年3月の「Embedded World 2026」において、一般提供がアナウンスされた。第1弾として、ルネサスのArmマイコン「RAファミリ」を用いた設計で利用できるようになっている。

アルティウム買収から「Renesas 365」一般提供開始までの流れ
アルティウム買収から「Renesas 365」一般提供開始までの流れ[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス

 このRenesas 365の狙いや方向性、実際の利用イメージなどについて、ルネサスが2026年3月26日に東京都内で会見を開いて説明したのでその内容を紹介したい。

「設計者が価値創造のために時間を使えるようにする」

ルネサス エレクトロニクスの堀仁一氏
ルネサス エレクトロニクスの堀仁一氏

 会見に登壇したルネサス ソフトウェア&デジタライゼーショングループ Renesas 365担当 シニアダイレクターの堀仁一氏は「組み込みシステムの設計者は、回路設計やツールの設定/セットアップなどに多くの時間を要している現状がある。Renesas 365は、そういったところはデジタルプラットフォームに任せて、本来設計者が行うべき作業であるアプリケーションにフォーカスした価値創造のために時間を使えるようにする狙いがある」と語る。

 今回、Embedded World 2026の開催に併せて一般提供がアナウンスされたRenesas 365だが、これはあくまで始まりにすぎず「これからどんどん進化、拡大していく」(堀氏)方針である。第1弾としてArmマイコンであるRAファミリからの対応となったが、ルネサスは16ビットマイコンの「RL78」や、産業機器や家電で利用されている「RX」、車載向けの「RH850」なども展開しており、これらもRenesas 365の対応を順次進めていく。

「Renesas 365」の構想
「Renesas 365」の構想。アルティウムのソフトウェアやクラウド構築の知見がベースになっている。第1弾は「RAファミリ」からの対応となったが、今後は「RL78」「RX」「RH850」などに拡大していく[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス

 また、Renesas 365は、AltiumがECAD「Altium Designer」や電子機器設計のクラウドプラットフォーム「Altium 365」、電子部品検索エンジン「Octopart」などの展開に向けて蓄積してきたソフトウェアやクラウド構築の知見やノウハウがベースになっている。これらのソリューションはルネサスの競合となる半導体メーカーの製品も扱える。Renesas 365は、ルネサス製品で閉じずにオープンでフレキシブルなプラットフォームを目指すことをコンセプトにしており、Altiumの協力を得て他の半導体メーカーの製品もサポートしていく計画である。

Renesas 365は進化する、RL78やRXなどにも対応へ

 Renesas 365は、組み込みシステムの製品開発において、企画プロセスで「AI(人工知能)支援によるアイデア創出」、設計開発プロセスで「モデルベースによる実現」、製品出荷後の運用プロセスでは「クラウド基盤による運用」によって、無駄な作業を減らし、イノベーションを早期に実現することをコンセプトとしている。堀氏は「これまで組み込みシステムの設計ライフサイクルは一方通行だったが、Renesas 365はループを作る狙いがある。設計意図を表すコンテキストをモデルベースで共有するとともに、プロセス間を人ではなくプラットフォームでつなぐ」と説明する。

「Renesas 365」のコンセプト
「Renesas 365」のコンセプト[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス
「Renesas 365」は設計ライフサイクルをループでつなぐ
「Renesas 365」は設計ライフサイクルをループでつなぐ[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス

 今回の一般提供開始では、550品種以上をそろえるRAマイコンが対象となる。データシートやアプリケーションノートをはじめ、組み込みソフトウェア、開発ボードの回路図/PCBファイルなど関連資料一式もRenesas 365に統合されている。統合開発環境の「e2studio」などから、ツールのユーザー登録アカウントである「My Renesas」を通じてRenesas 365にアクセスできる。Renesas 365の利用料は無償だ。

「Renesas 365」の第1弾は「RAファミリ」への対応から
「Renesas 365」の第1弾は「RAファミリ」への対応から[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス

 Renesas 365にはモデルベースの設計環境が組み込まれている。組み込みシステムの設計仕様に合わせて、インテリジェントにシステムレベルでマイコンの選定を支援してくれるという。従来は、設計者が目視でデータシートを確認して手動で絞り込むのが一般的だったが、システムのコンテキストを踏まえてガイドするようになった。「例えば、CANのピン本数などを手作業で調べる際に、ピン1本に複数のCANが重畳されていることがある。これに気付かず回路設計を始めてしまうと、設計意図とは異なるので実際には使えないという手戻りが発生する。Renesas 365は、その設計意図となるコンテキストを踏まえてマイコン選択のガイドを行ってくれる」(堀氏)。

「Renesas 365」にはモデルベースの設計環境が組み込まれている
「Renesas 365」にはモデルベースの設計環境が組み込まれている[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス

 また、IoT(モノのインターネット)時代に入って、組み込みシステムに必要不可欠になっているOTA(Over the Air)によるアップデートについても、デバイスライフサイクル管理の機能の一部として提供する。堀氏は「本来はOTAアップデートは製品の差別化ポイントではない。だからこそプラットフォームによる自動化が求められると考えている」と強調する。

「Renesas 365」はデバイスライフサイクル管理機能も大きな特徴
「Renesas 365」はデバイスライフサイクル管理機能も大きな特徴[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス

 Renesas 365の導入効果として挙げたのがマイコン選定にかかる時間だ。例えば、Renesas 365が対応している574個のマイコンについて、1個当たり60分かけて設計者が目視でデータシートを確認すると最大で約3カ月の期間を要する。しかし、Renesas 365であれば、574個のマイコンから設計意図に最適なマイコン候補を1分未満で選定してくれる。

「Renesas 365」の導入前と導入後の比較
「Renesas 365」の導入前と導入後の比較[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス

 今後のRenesas 365の展開としては、先述したRL78やRX、RH850など他のルネサス製マイコンへの対応に加えて、「RZ」などMPUも対応させていく。さらに、アナログやパワー、通信など周辺機能ICへの拡大も検討している。デバイスライフサイクル管理の観点では、欧州サイバーレジリエンス法(CRA)などセキュリティ規制への対応で求められるSBOM(ソフトウェア部品表)を生成する機能なども追加していきたい考えだ。さらに、クラウドを基盤とするプラットフォームであることから、さまざまなツールとの連携が求められるが、基本的にはAPIによる連携を想定している。「AIエージェントとの連携に向けてMCP(Model Context Protocol)サーバにも対応したい」(堀氏)としている。

「Renesas 365」の今後の展開
「Renesas 365」の今後の展開[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス

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