検索
連載

スマートファクトリー教育を実践する工学院大学 その成果はソーラーカーでもモノづくり教育の現場(2/4 ページ)

少子高齢化や人手不足が進む中、設計、解析、製造を分断せず実装まで担える人材の育成が求められている。工学院大学では「Autodesk Fusion」を中核にスマートファクトリー教育を展開し、一気通貫のモノづくりを推進。その成果は学生プロジェクトのソーラーカー開発にも表れている。

Share
Tweet
LINE
Hatena

「世界初」をうたうスマートファクトリー教育の実践の場

 こうした工学院大学の教育モデルを、実地の面から支えているのが、「ものづくり支援センター」だ。同センターは2015年に設立された全学組織であり、加工技術教育と安全教育、学生の創造活動やプロジェクト活動を支援することを目的としている。八王子キャンパスの「ふらっと(FLAT:Fabrication Laboratory of Advanced Technology)」と「テクノクリエーションセンター(TECC:Techno Creation Center)」、新宿キャンパスの「新宿ものづくりラボ」の3施設で構成される。

テクノクリエーションセンターが入る工学院大学 八王子キャンパス 2号館の外観
1階にTECCが入る、工学院大学 八王子キャンパス 2号館の外観[クリックで拡大]

 八王子キャンパスのFLATとTECCでは、基礎加工から最先端CNC加工までを一体的に学べる環境が整備されており、基礎教育からスマートファクトリー教育までを同一拠点内で段階的に実施できるのが強みだ。ものづくり支援センターには、東京精密、ソニー、東芝、日野自動車などの企業出身の技術指導員が常時配備されており、学生らに対する加工指導や安全教育を専門的に行っている。

 1年生では、FLATを中心に汎用(はんよう)機械を用いた加工教育が行われる。学生1人に1台の機械を割り当てて加工に関する技能を習得できるカリキュラムを展開。ギアボックスの製作を課題として、手書き製図から始まり、CADによる設計、加工、組み立てまでを一貫して行う。

 汎用旋盤がおよそ20台配置されている他、縦型/横型フライス盤や卓上ボール盤、ラジアルボール盤、ホブ盤などが整備されており、歯車加工を含めた切削加工を一通り学べる。さらに、アーク溶接機などの溶接設備、グラインダーなどの材料加工設備も備える。また、鋳造のための実習室も備え、アルミ溶解炉や熱処理炉を用いて、溶解から鋳造までの工程を実体験として学ぶことができる。

「1年生の段階で、手書き製図や汎用加工、鋳造などを通じ、手の感触やにおいを含めた実体験としてモノづくりの基礎を学べる。これだけの装置を授業で実際に稼働させている大学は非常に少なく、日本でもトップレベルといえる設備規模だ」(濱根氏)という。

FLATの設備を活用し、1年生の段階でスマートファクトリー教育の下地となるモノづくりの基礎を学習する
FLATの設備を活用し、1年生の段階でスマートファクトリー教育の下地となるモノづくりの基礎を学習する[クリックで拡大] 出所:工学院大学
汎用旋盤フライス盤 FLATには汎用旋盤(左)やフライス盤(右)など数多くの装置が完備されている[クリックで拡大]
溶接鋳造 溶接スペース(左)や鋳造を学ぶための実習室(右)も備わっている[クリックで拡大]

 そして、スマートファクトリー教育の中心となる主要設備は、TECCに集約されている。ヤマザキマザックの5軸マシニングセンタ「VARIAXIS C-600」やNC旋盤「QTE-200」、ファナックの小型マシニングセンタ「ROBODRILL α-D21LiB5 ADV Plus」やワイヤCNC放電加工機「ROBOCUT α-0C」などが設置されており、切削、旋削、放電といった多様な加工を一通り学べる。

ヤマザキマザックの5軸マシニングセンタ「VARIAXIS C-600」NC旋盤「QTE-200」 ヤマザキマザックの5軸マシニングセンタ「VARIAXIS C-600」(左)とNC旋盤「QTE-200」(右)[クリックで拡大]
ワイヤCNC放電加工機「ROBOCUT α-0C」ファナックの小型マシニングセンタ「ROBODRILL α-D21LiB5 ADV Plus」 ファナックのワイヤCNC放電加工機「ROBOCUT α-0C」(左)と小型マシニングセンタ「ROBODRILL α-D21LiB5 ADV Plus」(右)[クリックで拡大]

 これらの設備は全てネットワークで接続されており、Fusionと連携しているという。設計データやCAMプログラム、加工、工程管理までが一体化されており、スマートファクトリー環境を構築。複数キャンパス(新宿および八王子キャンパス)からのリモートコントロールとモニタリングを実現している。

 また、工具交換や加工条件の調整など、“人の判断”を伴う作業も重視しているという。「完全自動化だけを見せるのではなく、現場判断を含めた実践的な能力を養う構成となっている。生産管理の学習では、OEE(設備総合効率)を通じた工場最適化も扱っており、設備をどう動かし、どう改善するかまで含めて学ばせている」と濱根氏は説明する。

2年生になるとTECCに集約された環境を用いながらスマートファクトリー教育を実施
2年生になるとTECCに集約された環境を用いながらスマートファクトリー教育を実施[クリックで拡大] 出所:工学院大学

 肝心の学部2年生を対象とした「世界初」(濱根氏)をうたう、スマートファクトリー教育の授業内容(カリキュラム)は、M0〜M3の4段階で進められる。なお、各段階でFusionに関する学習テーマも含まれている。M0ではスマートファクトリーの概念、インダストリー4.0/5.0、チームマネジメント、OEEなどを学ぶ。M1ではNCプログラムの基礎、コマンド、補助機能、工具補正などを扱い、CNCプログラムの実習を行う。

 M2では3軸加工として2Dマシニング、穴加工、ATC(自動工具交換)、サーフェス加工、加工実習および精度検査を行い、M3では5軸スワーフ加工、割出5軸加工、同時5軸加工、加工演習を実施する。ボールエンドミルの周速ゼロを避ける加工など、実務レベルの内容も扱う。「これらを2年生から実施している点が特長であり、交流のある海外の大学関係者からも『なぜそんなに早いのか』と驚かれる」と濱根氏は述べる。

学部2年生を対象に、工学院大学が実践するスマートファクトリー教育の内容
学部2年生を対象に、工学院大学が実践するスマートファクトリー教育の内容[クリックで拡大] 出所:工学院大学

 現在、年間約2014人の学生がこの教育プログラムをさまざまな授業で利用しているという。授業は少人数制となり、それぞれ日程をずらしながら実施される。また、教科書は既存のものがないため、全て濱根氏がオリジナルで制作しており、総ページ数は1000ページ以上に及ぶという。

スマートファクトリー教育の教材は濱根氏が自ら作成している
スマートファクトリー教育の教材は濱根氏が自ら作成している[クリックで拡大] 出所:工学院大学

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る