検索
連載

ギガキャストを可能にした「ギガプレス」の開発企業と動作サイクルを深掘りするいまさら聞けないギガキャスト入門(4)(3/5 ページ)

自動車の車体を一体成形する技術である「ギガキャスト」ついて解説する本連載。第4回は、超巨大ダイカスト成形機である「ギガプレス」の本体を開発したIDRAグループと、ギガプレスの動作サイクルの詳細について解説する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

4.ギガプレスの動作サイクル/原理と主要構成要素

 ここからは、ギガプレスの動作サイクル/原理と主要構成要素について解説する。

 ギガプレスのダイカスト鋳造のサイクル/原理は、成形品の大きさ、形状、材種などによって詳細は異なるが、ギガプレス機全体では、ショット重量(注入されるアルミ質量)が80kg程度、注入速度が約10m/s程度という仕様が知られている。このことを前提に、動作機構(サイクル)を説明する。

 ここからは、ギガプレスの動作サイクル/原理について読者に理解してもらえるように、Haitianの「Haitian Die Casting-HDC8800 LARGE DIE CASTING CELL」の動画から筆者がキャプチャーした画像を基に編集、作成した図を用いて説明する。

(1)型開き、アルミニウム素材供給

 図6に、型開き中、ロボットによる金型キャビティ面の清掃と付着物の除去開始の様子を示す。

 最初に、前サイクルで鋳造された成形品が取り出され、金型が開放される。金型を保持していたクランプ機構を開放し、型を開く。本体外側にあるロボット(1)のアームが成形品をピックアップし、次の処理工程へ移送。また、型開き中に、可動側プラテン上のロボット(2)と固定側プラテン上のロボット(3)のアームがタイバー間に入り、両金型キャビティ面の清掃と付着物を除去し始める。

図6 型開き中、ロボットによる金型キャビティ面の清掃と付着物の除去を開始[クリックで拡大] 出所:「Haitian Die Casting-HDC8800 LARGE DIE CASTING CELL」の動画を基に筆者が編集作成

(2)型開き中の金型清掃/離型処理

 図7に、型開き中に、ロボットによる金型キャビティ面の清掃/除去と金型キャビティ面への離型剤(潤滑剤)スプレー塗布、鋳造後の金型から成形品の離型処理の様子を示す。まず、型開き中に開放された金型キャビティ面を清掃し、付着物を除去する。次に、離型剤(潤滑剤)をノズルなどでスプレー塗布して、鋳造後の金型から成形品の離型を容易にする処理を行う。

図7
図7 型開き中、ロボットによる金型キャビティ面の清掃/除去と金型キャビティ面への離型剤(潤滑剤)スプレー塗布、鋳造後の金型から成形品の離型処理[クリックで拡大] 出所:「Haitian Die Casting-HDC8800 LARGE DIE CASTING CELL」の動画を基に筆者が編集作成

(3)型締め(金型クローズ/締め付け)

 図8に、型締め中における、射出/保圧/冷却の様子を示す。

図8
図8 型締め中の射出/保圧/冷却の様子[クリックで拡大] 出所:「Haitian Die Casting-HDC8800 LARGE DIE CASTING CELL」の動画を基に筆者が編集作成

 まず、型締め(金型クローズ)は、金型を密着させる動作である。可動側プラテンの金型を閉じて、トグル式クランプ機構により強く締め付ける。この型締め機構/動作の詳細は後述する。この段階で、鋳造圧力に耐え得るクランプ力を確保する必要がある。このクランプ力が「6200トン級」に相当する力を持つ仕様となる。

 ギガプレスのクランプ系の主な構成要素や動作のタイミングなど詳細についても後述する。

 保圧は、型締め後、溶湯注入/凝固中に型を開かせない力を維持する段階である。

 表5に、ギガプレス(OL6200CSなど)の型締め/射出/保圧/冷却動作における主要要素を構成する本体システムを示す。表5はダイカスト成形の工程の順になっている。

本体システム 役割/機能 備考
(1)射出/注入系ユニット 溶湯を金型に高速注入するための注入ピストンやインテンシファイア、供給系 コールドチャンバー方式を使うことが多い(溶湯をあらかじめ保持し、注入ピストンで金型へ送る方式)
(2)真空/脱ガス系 金型キャビティ内を減圧してガス含有や気泡混入を抑制する 真空ポンプ、貯留タンク、真空バルブ、配管系統など
(3)金型(キャビティ)装置 溶融アルミニウムを注入して部品形状を成形する空間 多腔型、複雑形状、排ガス管理、冷却配管などを含む
(4)クランプ(型締め)/締め付け(保圧)ユニット 金型を強くクローズ/ホールドして、鋳造時の高圧流入に耐える ギガ級のクランプ力(6200トン級)を達成する剛性構造、油圧シリンダーや締め機構が組み込まれる
(5)冷却系/凝固支援系 鋳造後の金型冷却、固化促進のための冷却媒体供給 金型内部水冷/油冷配管、射出後クールオフ系統など
表5 ギガプレス(OL6200CSなど)の型締め/射出/保圧/冷却動作における主要要素を構成する本体システム

(4)溶湯注入

 図9に、溶湯注入の様子を示す。

図9
図9 溶湯注入[クリックで拡大] 出所:「Haitian Die Casting-HDC8800 LARGE DIE CASTING CELL」の動画を基に筆者が編集作成

 溶融アルミニウム(あらかじめ溶解/保持してあるもの)が注入ピストンまたはインテンシファイア(力増幅機構)によって、極めて高速/高圧で金型キャビティに注入される。ギガプレスの機械全体の仕様例として、注入される溶融アルミニウムのワンショットの溶湯量は約80kg(180ポンド)、秒速10m(時速22マイル、時速36km)程度の速度でコールドチャンバー式鋳型に注入され、これによりキャビティへの速やかな充填を実現。サイクルタイムは80〜90秒、1時間当たり40〜45個の完成鋳物、または1日当たり1000個の鋳物の成形品が製作できる。

温調機/金型温調系(Temperature Control/Mold Cooling)

IECI

 IECIはFSAの構成企業として、温調(温度制御/金型温度ゾーン管理)システムを提供する役割を担っていると公表されている。

 FSAの技術では、IECIが“GigaThermo”のような複数温調ソースを統合制御できる方式を示唆する構成として紹介されている。

KMAUmwelttechnik

 主に排気空気処理/熱回収装置分野のFSAメンバーとして紹介されているが、鋳造セル全体の熱制御(空気熱回収、排熱管理)設計に関わる機器を供給。

仕様例/設計の要点

 FSAの紹介資料「技術解説」によれば、金型温調系は以下のような要件設計例が述べられている。

  • 複数温度源(複数温調回路)を統括制御可能な温調ユニット
  • 温調源ごとに中央制御ユニットから管理(例:GigaThermo構成)
  • 金型冷却水回路、サーモ調ユニット、冷水ユニット群のモジュール化構成
  • 温調ユニットと機械制御システム(セルコントローラ)の統合通信インターフェース
  • 温調装置の選定は金型設計(温度分布、複数冷却ゾーン、応答遅れ、チャネル分割など)に依存

 ただし、公開資料には「IECIが温調機器を供給する可能性がある」との記載はあるものの、OL6200CSにおいて具体にどの温調ユニット容量や仕様が使われているかは明示されていません。

制御弁/比例弁(Injection Control/Proportional Valves)

Parker(パーカー)

 YouTubeで公開されている動画“IDRA GROUP|OLS Injection Control System”において、IDRAの射出制御ユニットに“Parker closed loop meter-out proportional valve(閉ループ/メータアウト型比例弁)”が標準的に搭載されることが紹介されている。

 このため、OL6200CSの射出制御系にはParker製比例弁の使用例があるとみられる。

その他に推定されるベンダー

 業界的には、Bosch Rexroth、Moog、Eaton、HYDAC、Yukenなどが高性能比例弁分野での実績メーカーとして候補になる可能性あり。ただし、公開情報でこれらがOL6200CSに使われているという確証は得られていない。

仕様例/設計要点

  • 射出速度/圧力をリアルタイム閉ループ制御する比例弁構成
  • メータアウト型比例弁を用いた制御(外部流量制御方式)
  • 射出制御ユニット名“ILS”(Injection Control System)では、このParker式比例弁が標準構成と紹介
  • 比例弁寿命延命を目的に、油圧力バランス設計がとられていることがIDRAのNEOシリーズの技術説明に記載されている(比例弁の応力抑制方式)
  • 比例弁制御回路は機械制御系(PLC/制御ソフトウェア)と統合され、射出圧/速度プロファイルを制御可能

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る