超小型EV「mibot」開発に見る“制約を魅力へ変える”設計アプローチ:Fusion Connect 2026 講演レポート(2/3 ページ)
オートデスク主催の「Fusion Connect 2026」で、KGモーターズの岡本崇氏が「制約を味方にするデザインとFusionの実践」と題し講演を行い、小型モビリティロボット「mibot」と3輪Eカーゴバイクの開発事例を基に、制約を魅力に転換する設計アプローチを解説した。
制約に「収める」から「魅力に変える」へ
続いて岡本氏は、mibotと3輪Eカーゴバイクの開発において、どのようにFusionを活用したかを説明した。講演では、mibotについてはボディー、3輪Eカーゴバイクについてはサスペンションの設計にフォーカスして話が進められた。
岡本氏は「デザインが制約の中に何とか収まったとしても、それがそのまま『魅力』につながるかというと別の話になる。制約の中に収まったことを、いかにして魅力に変えるか、その点をどうにかできないかというのが共通する大きなテーマだった」と述べる。
mibot:前後対称という制約下で「佇まい」を作り込む
まずmibotでは、特長である前後対称のデザインは、初期段階から決まっていたコンセプトであり、従来のクルマのデザインにおけるセオリーが通じず、さらにサイズやコストなどの制約も重なり、「かなり戸惑った」と岡本氏は振り返る。
そこで岡本氏は、クルマ自体に動きのある造形や、ふくよかな丸みのある断面を与えるのではなく、“クルマの佇まい”を重視しようと考えたという。「『スタンス』や『姿勢』などとも言うが、そういった部分で『カッコ良さ』や『魅力』を引き出せれば、前後が同じ形状でもクルマとして成立するのではないか」(岡本氏)との仮説に基づき、乗員やシートといった基本要素をレイアウトしながらデザインを突き詰めていった。
その結果、最初に出したキースケッチは、前後全く同じ形状でありながらもクルマとしての動感があり、見切りの良さや運転のしやすさも備え、さらに少し懐かしいテイストも感じさせるものに仕上がったという。そして、mibotのデザインはこのスケッチをベースに進められることになった。
前述の通り、mibotの制約の中でも大きなウェイトを占めていたのがコストの課題だ。「とにかくコストを抑える必要があったため、複雑な形状を作ったり、パーツ点数を増やしたりすることはできるだけ避けて、限界までカタチを削ぎ落としつつ、それでもクルマとして成立させることを目指していった」(岡本氏)。
そしてFusionを用いて、最初は四角い形状を起点に、屋根からフロントにかけて傾斜を付け、さらに角を丸め、ボディーとタイヤの関係やバランスも見ながら、クルマとしてしっかり見えるカタチを追求し、基本的な立体構成を確定させた。「キースケッチを出してから2週間もたたないうちに基本コンセプトが決まった」(岡本氏)という。
造形についても、通常のクルマであればクレイモデルやサーフェスモデルを用いるが、mibotではFusionの特性を踏まえ、ソリッドベースでモデリングを進めた。「Fusionを使うことで造形があっという間にできるため、工数削減にもつながる。このアプローチはmibotの開発に非常にマッチしていた」と岡本氏は説明する。
その後、ある程度ボディーが形になった段階で設計担当に渡し、設計検討を経て再びデザインに戻して調整するサイクルを、ほぼ毎日繰り返していったという。「通常なら、デザインを設計担当に投げたら1〜2週間で返ってくるような流れだが、ほぼ毎日設計とやりとりしながら形をブラッシュアップしていった」(岡本氏)。
こうした短期間開発を支えているのが、同社独自の開発スタイルだ。KGモーターズは、もともとYouTuberを前身とするスタートアップであり、基本的にデザイン、マニュファクチャリング、エンジニアリングに至るまで、見せられる部分は全てYouTubeで公開し、随時フィードバックを受け、視聴者の意見を取り入れながら製品に反映して開発を進めているという。
Fusionを中核に据え、デザインから設計、製造までのプロセスをスピーディーに回すことで、mibotのブラッシュアップにつなげている。2023年のオートサロンでお披露目されたmibotの初号機は、デザインを一から始めて約5カ月で完成させている。「Fusionがハブとなり、随時アップデートする形で、超短期開発を実現している」(岡本氏)。
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