工場を“ひらく”イトーキの共創拠点始動、新ワークチェア「SHIGA」開発秘話:イノベーションのレシピ(1/3 ページ)
イトーキが、滋賀工場内にあるチェア工場のオフィスを全面改修し、「ITOKI DESIGN HOUSE SHIGA」としてリニューアルオープンした。ITOKI DESIGN HOUSE SHIGAにおける工場を“ひらく”という発想が、いかに開発プロセスを変え、プロダクトに落とし込まれていったのかを追う。
2026年1月23日、オフィス家具大手であるイトーキが、滋賀工場(滋賀県近江八幡市)内にあるチェア工場オフィスを全面改修し、「ITOKI DESIGN HOUSE SHIGA」としてリニューアルオープンした。同社は、製造現場を単なる生産の場ではなく、価値創出の場へ変えていくという意思を象徴する製品として、2025年12月に新ワークチェア「SHIGA(シガ)」を発売した。
本稿では、工場を“ひらく”という発想が、いかに開発プロセスを変え、プロダクトに落とし込まれていったのかを追う。
工場の執務環境を刷新する意味──人材確保と現場力の再設計
近年、企業のオフィス投資はエンゲージメント向上や採用力強化を目的とした重要な経営施策として位置付けられている。一方で製造業では、本社のリニューアルが進む一方、工場の執務スペースは十分に改善されていないケースも少なくない。
人材不足や離職が深刻化する中で、工場においても「働く環境」への投資が人材確保/定着に直結するテーマとして注目され始めていると、イトーキ 代表取締役社長の湊宏司氏は述べた。
イトーキのマザー工場である滋賀工場でも、以前は女性比率が5%程だったのが、今は20%を超えてきている。働き手の多様化が進む中、誰もが力を発揮し、長く働き続けられる環境づくりが重要なテーマとなってきた。
こうした課題に対し、同工場では休憩室のリニューアルなど段階的に職場環境の改善を実施してきた。その結果、技能職への応募数は2023年から2025年にかけて4倍に増し、離職率は半減したという。工場の働く環境を整えることが、現場の安定と採用競争力に結び付くことを示す好例だ。
今回の「ITOKI DESIGN HOUSE SHIGA」は、開発/設計機能が集積するチェア工場オフィスを共創型のモノづくり拠点として再構築する取り組みである。コンセプトは、イトーキと外部パートナーが混ざり合い、共創する「開かれたモノづくり拠点」。
人と情報が行き交い、学びと検証が循環し、共創が自然に生まれる環境を通じて、開発力の強化と人材の成長、そして“魅せるモノづくり”を実現するという。工場をひらくことは、現場の取り組みを外部に示すだけでなく、開発の速度と質を高める仕掛けにもなる。
工場見学で見えた“量産品質”──静かなデザインは現場で作られる
滋賀工場の縫製工程では工業用ミシンを用い、目印を合わせながら立体的に仕上げる立体縫製で、背や座の形状を作り込む。被せ工程では、縫製ラインをぴったり合わせ、エッジを立てることで、複数台が並んだ時に水平ラインが美しく連続するよう仕上げる。空間で“静かに佇む”ためには、1脚単体の完成度だけでなく、量産品質としてのそろいが不可欠なのだ。
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