住友ゴムが非熟練者でも配合レシピ設計期間95%削減可能に:マテリアルズインフォマティクス(1/3 ページ)
住友ゴムがNECとの共創により、非熟練者でも材料開発で重要な配合レシピ設計の期間を95%削減できる技術を開発した。その技術や両社の共創について迫る。
住友ゴム工業(以下、住友ゴム)とNECは2025年11月26日、東京都内で記者会見を開き、研究開発基盤の構築に向けた共創活動と先行実証の成果を発表した。
重点テーマは「新材料開発」と「タイヤ材料開発」
近年、製造業ではグローバル競争が激しさを増しており、持続的な競争優位性を確立するために、研究開発活動の高速化/迅速化がますます重要となっている。
そこで、住友ゴムとNECはタイヤ開発を高度化させるタイヤ開発AI(人工知能)プラットフォームの構築を2022年にスタートした。同年には熟練設計者のノウハウをAI化した「匠AI」を開発し、技術の伝承と開発の体制を強化している。2024年10月にNECは同社の研究者が顧客の研究開発から伴走し、さまざまな課題を解消する「NEC先端技術コンサルティングサービス」の提供を開始した。
2025年7月には同サービスの第1号の大型案件として住友ゴムで採用され、両社の共創活動が本格化した。この共創活動では、NECの研究技術の早期導入によって、「材料探索/解析技術などの高速化/高度化」「減少する労働人口」といった課題に応じる。これにより、イノベーション創出に向けて、研究/開発人材の仕事そのものを刷新する。さらに、住友ゴムとNECの成長に貢献するイノベーションを創出することで、新たな事業機会を探索する。
これらの取り組みにより、両社の技術/知財の掛け合わせ/新技術と知財の共同創出による新たな価値創造を目指している。
住友ゴム工業 常務執行役員の水野洋一氏は「当社では2025年に長期経営戦略『R.I.S.E.2035』を発表した。R.I.S.E.2035では、2030年に向けてタイヤのプレミアム化を推進するとともに、2035年に向けて新たな収益の柱の構築を目標に掲げている。これらを早期実現するために、NECと共創活動を行い、研究開発基盤の高度化を進めている」と語った。
両社が共創を行った背景としては「伴走支援」と「業務熟知」の2点が挙げられた。「伴走支援」に関して、NEC研究所の最先端技術を導入し仕事の仕方を変革できるとともに、NECは全社で業務AI化を実践しており、その知見を基に住友ゴムに適したAI化を進められる。「業務熟知」について、NECは住友ゴムの業務課題を把握し匠AIを開発した実績があるだけでなく、双方の技術者/研究者が理解し合えている。
両社は研究開発基盤高度化のビジョンとして、「市場投入までのスピードを重視し、“未来の価値ある体験”をいち早くお届けする」「継続的なイノベーションと顧客価値創造」「徹底的な業務合理化による新たな付加価値分野の創出」を掲げている。これらの達成に向けて、人とAIが相互に共創し、未来を豊かにする新たな価値を創出する研究開発環境の実現を目指している。
研究開発基盤の高度化では、両社でディスカッションを重ね、重点テーマを選定している。現時点で2030年までに取り組むテーマとして、「新材料開発」と「タイヤ材料開発(プレミアムタイヤ配合開発)」が決まっている。
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