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AIコーチが歩行や姿勢の癖を“見える化”するスマートソール「ardi」新製品開発に挑むモノづくり企業たち(12)(1/2 ページ)

本連載では、応援購入サービス(購入型クラウドファンディング)「Makuake」で注目を集めるプロジェクトを取り上げ、新製品の企画から開発、販売に必要なエッセンスをお伝えする。第12回は、足の3D計測やフィッティング支援など、“足まわり”領域で事業を展開するフリックフィットが開発した、姿勢や歩行の癖を可視化するスマートソール「ardi(アルディ)」を取材した。

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市場環境が変わる中、B2B事業で培った技術を生かして新たにB2C製品を作るモノづくり企業が増えている。大きなチャンスだが、今までと異なる機軸で新製品を作る上では大変な苦労もあるだろう。本連載では応援購入サービス(購入型クラウドファンディングサービス)「Makuake」のプロジェクトをピックアップし、B2C製品の企画から開発、販売に至るまでのストーリーをお伝えしたい。


 “健康寿命”という言葉が一般化しつつある今、自分の体重や血圧、睡眠時間などを気に掛けている人は多いだろう。しかし、「姿勢」となるとどうだろうか。姿勢の乱れが肩こりや腰痛などの不調につながることは広く知られているものの、日常の姿勢を客観的に把握する手段は少なく、「気にしていても数字では測れない」という曖昧な領域にとどまっているのが実情である。

 この「姿勢の可視化」という課題に取り組んだのがフリックフィットだ。同社はこれまで、足型や靴内部の3Dスキャンデータを活用したフィッティング支援や計測サービスを展開し、“足まわり”に関する計測技術を蓄積してきた。

 その知見を応用し、日常の姿勢傾向や歩行の癖を足元から捉える発想を形にしたのが、動作データを取得するスマートソール「ardi(アルディ)」である。靴内という特殊な環境が前提となるため、一般的なウェアラブルデバイスとは異なる設計上の課題もあったが、同社が培ってきた経験と外部パートナーとの連携により、製品化へとつなげることができた。

普段使用している靴に入れるだけで歩行や姿勢の癖を見える化してくれるスマートソール「ardi」
普段使用している靴に入れるだけで歩行や姿勢の癖を見える化してくれるスマートソール「ardi」[クリックで拡大] 出所:フリックフィット

 今回は、パーソナルトレーナーとしての経験も持つフリックフィット プロダクトマネージャーの山本健夫氏に、同社が姿勢の可視化に挑んだ背景や、ardiをスマートデバイスとして成立させる上で直面した技術的課題、その解決プロセスについて話を聞いた。

姿勢を“数字で捉える”ための着想と開発背景

――スマートソール「ardi」の特長を教えてください。

山本健夫氏(以下、山本氏) ひと言でいうと、「いつもの靴に入れるだけで姿勢の癖が見えるデバイス」です。加速度、角速度、足底圧を計測するセンサー群を内蔵したインソールで、歩行中の足の角度や着地の向き、どの部分にどれだけ荷重がかかっているのかといった情報を計測できます。計測したデータは、Bluetoothを使って専用スマートフォンアプリに送信(Bluetoothの省電力規格であるBluetooth Low Energy(BLE)に対応)され、変化をグラフやアニメーションとして直感的に確認する仕組みになっています。また、自分では気付きにくい「傾き」や「ひねり」といった動作の癖を、客観的に把握できる点も特長です。

2重構造になっており、インソールの下に計測に用いる各種センサー類などが内蔵されている
2重構造になっており、インソールの下に計測に用いる各種センサー類などが内蔵されている[クリックで拡大] 出所:フリックフィット

――開発の背景を教えてください。

山本氏 当社はこれまで、足や靴の内側を3Dスキャンし、そのデータを活用したサービスを提供してきました。この計測ノウハウやデータを別の領域にも生かせるのではないかと考えたことが、開発の出発点です。現在、スマートウォッチを含むIoT(モノのインターネット)デバイスは成長市場で、心拍数や睡眠時間などは数値化が進んでいる一方、日常生活の中で姿勢を測ることは簡単ではありません。

 そこで、われわれの持つ足まわりの計測ノウハウとスマートデバイスを組み合わせることで、日常の動作データを継続的に取得する道が開けるのではないかと考え、歩行/姿勢改善につながる新しい体験づくりを目指してardiの開発を始めました。

歩行を開始すると、すぐに歩き方の癖をスマートフォン専用アプリケーションを通じてフィードバックしてくれる
歩行を開始すると、すぐに歩き方の癖をスマートフォン専用アプリケーションを通じてフィードバックしてくれる[クリックで拡大] 出所:フリックフィット

――開発において特にこだわった点を教えてください。

山本氏 1つは「計測だけで終わらせないこと」です。ardiは、取得したデータの解釈や行動変化までをサポートする“AIコーチ”的な存在を目指しています。数値だけでは変化を実感しにくいため、グラフやアニメーションで結果を分かりやすく示す他、姿勢や運動に関するメッセージを毎日届ける仕組みも取り入れています。

計測したデータに基づき、自分に適したストレッチなどのアドバイスをしてくれる
計測したデータに基づき、自分に適したストレッチなどのアドバイスをしてくれる[クリックで拡大] 出所:フリックフィット

 もう1つは、インソールとしての違和感を排除することです。靴の中に入れて使う特性上、厚みや硬さ、部品の配置には妥協できませんでした。外部の専門家の協力を得ながら試着を繰り返し、最終的に厚み9mm、重さ95gというサイズへ調整しています。

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