2025年度上期の世界生産は2年ぶりの増加、足元でネクスペリア問題が陰を落とす:自動車メーカー生産動向(3/4 ページ)
2025年度上期の日系自動車メーカーの世界生産台数は前年同期比で2年ぶりの増加となった。けん引役は北米や中国が好調のトヨタ自動車とインドが堅調のスズキだ。2025年9月単月で見ると日系自動車メーカーの回復基調が強まっているものの、ネクスペリアの半導体供給停止問題が陰を落としている。
ホンダ
ホンダの2025年度上期の世界生産台数は、前年同期比5.8%減の170万9290台と2年連続で前年実績を下回った。EVシフトなどにより競争が激化する中国が同14.6%減の32万5742台と大きく落ち込んだことが要因で、5年連続のマイナス。中国で生産する日系4社では唯一の前年割れで、ホンダの中国事業が振るわない様子を示す結果となった。中国では待望の新型EV「イエ」シリーズを投入したが、販売は低迷している。このため、「上海モーターショー2025」で公開済みの2026年度に投入を予定していたイエシリーズのフラグシップモデル「GT」について、同社 副社長の貝原典也氏は2025年11月7日の決算説明会で「企画レベルから抜本的に見直す」と述べ、発売時期を延期する方針を示した。中国以外のアジアも価格競争激化などの影響で低迷し、アジアトータルでも同15.4%減の51万4929台と7年連続で減少した。
主要市場の北米も、HEV人気などにより「シビック」や「CR-V」の販売は堅調に推移したものの、同1.1%減の81万186台と微減となり、3年ぶりのマイナスだった。その結果、2025年度上期の海外生産は同6.9%減の137万3355台と2年連続の前年割れとなった。
国内生産は、前年同期比0.7%減の33万5935台と微減で、4年ぶりのマイナス。国内販売では「ヴェゼル」や「フィット」などが2桁%減と落ち込んだ他、国内最量販の主力車種「N-BOX」が前年の新型車効果の影響により台数を落としたことが響いた。ただ輸出は、2月から埼玉製作所(埼玉県寄居町)で米国向けシビック5ドアHEVの生産を開始したこともあり、同54.8%増の5万6272台と2年ぶりのプラスだった。
厳しい状況が続いていたホンダも、ようやく回復の兆しが見え始めた。9月単月の世界生産台数は、前年同月比3.8%増の31万275台と14カ月ぶりにプラスへ転じた。ただ、スズキが大きく伸長したため、8社の順位ではスズキに次ぐ3位となる。このうち海外生産は、同3.2%増の24万4688台と14カ月ぶりのプラス。長らく低迷していた中国は、前年9月が半減以下と大幅に台数を減らした反動もあり、同25.7%増の6万3366台と3カ月ぶりのプラス。アジアトータルでも同1.4%増の9万2575台と3カ月ぶりに前年実績を上回ったが、絶対的な台数としては低水準と言わざるを得ない。
北米は、同3.9%増の14万2364台と5カ月ぶりのプラスだった。国内生産は、同6.3%増の6万5587台と2カ月ぶりに増加した。10月の国内販売を見ると、ヴェゼルや「ステップワゴン」は伸長したものの、長らく国内最量販だったN-BOXが同24.0%減と大きく落ち込むなど息切れ感も見え始めている。輸出は同21.6%増の7528台と6カ月連続のプラスだった。
ホンダでは、ネクスペリアの半導体供給問題も生産に影響を及ぼしている。2025年10月28日からメキシコでの生産を停止。同年11月7日の決算説明会では、11月17〜21日ごろの生産正常化を目指していると説明した。
スズキ
スズキの2025年度上期の世界生産台数は、前年同期比1.1%増の163万3351台と2年連続で増加した。8社の順位では3位が定着しつつあり、2位のホンダとは約7万6000台差まで近づいた。生産の約3分の2を占めるインドは、2025年2月からカルコダ工場の稼働を開始した他、中近東およびアフリカ、日本向けの輸出増加などもあり、同4.0%増の105万335台と5年連続で増加し、年度上期のインド生産として過去最高を更新した。インド以外の海外生産も、ハンガリーの減産はあったが、インドネシアで「フロンクス」の生産を開始したことなどにより、同1.8%増の10万3785台と3年ぶりに増加。海外生産トータルでも同3.8%増の115万4120台と3年ぶりに前年実績を上回った。
海外が好調だった半面、国内生産は低迷した。前年同期比5.0%減の47万9231台と4年ぶりのマイナス。要因としては、中央発條の爆発事故の影響により、3〜4月に相良工場(静岡県牧之原市)と湖西第2工場(静岡県湖西市)で稼働停止を余儀なくされ、「スイフト」「ソリオ」「クロスビー」「アルト」「ワゴンR」などの出荷に影響が及んだ。さらに5〜6月には、中国のレアアース輸出規制の影響でスイフトの生産を停止した。また、欧州向け「イグニス」「ジムニー」の生産終了も減産要因となり、輸出も同16.0%減の9万9292台と大幅に減少し、2年ぶりのマイナスとなった。
しばらく低調だったスズキも攻勢に転じている。9月単月の世界生産台数は、前年同月比19.9%増の31万6663台と8カ月ぶりにプラスへ転じた。8社で最大の伸び率で、順位もトヨタに次ぐ2位となった。中でも海外生産は、同27.2%増の22万4184台と大きく伸長し、2カ月ぶりに前年実績を上回った。主力のインドでは、2025年8月に「物品・サービス税」(GST)の引き下げが発表された影響で買い控えが発生していたインド販売が同8.3%減と落ち込んだが、前年より稼働日が3日多いことや、インドの祭典「ディワリ」が例年より前倒しされた影響もあり、インド生産としては同26.4%増の20万1888台と2カ月ぶりに増加。9月のインド生産として過去最高を記録した。さらにインド以外も、インドネシアでのフロンクスの生産開始や、ハンガリーではトランスミッション変更を伴う商品改良により需要が拡大するなど、同34.0%増の2万2296台と2カ月ぶりにプラスとなった。
国内生産も、前年同月比5.2%増の9万2479台と8カ月ぶりにプラスへ転じた。「スペーシア」「ソリオ」「ジムニーシエラ」などの生産が増加した。ただ、輸出は同29.9%減の1万8174台と3カ月ぶりに減少した。
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