年代物のアナログオシロでベクタースキャンディスプレイを再現する:今岡通博の俺流!組み込み用語解説(19)(1/3 ページ)
今岡通博氏による、組み込み開発に新しく関わることになった読者に向けた組み込み用語解説の連載コラム。第19回は、第16回で紹介したベクタースキャンディスプレイを、年代物のアナログオシロスコープを使って再現する。
はじめに
本連載第16回「ベクタースキャンディスプレイとは」で、ベクタースキャンディスプレイの仕組みについて紹介しました。
今回は、アナログオシロスコープをベクタースキャンディスプレイとして動作させてみたいと思います。さまざまな図形を表示させたいところですが、今回は手始めとして正方形を表示する回路とプログラムを紹介します。
アナログオシロのベストセラー「KENWOOD CS-4025」
図1は今回の実験に用いるアナログオシロスコープ「KENWOOD CS-4025」です。
CS-4025は2000年以前に製造されたものと思われますが、当時としては結構ベストセラーの製品であり、現在も大手オークションサイトでは5000円超で売買されているようです。
このオシロスコープはしばらく倉庫の片隅に数十年置いてあったものらしく、図1は取りあえずこの代物がオシロスコープとして動作するかチェックしているところです。チャンネル1に正弦波を入力してそれを表示させています。ちなみに、CS-4025の下側に写っているのがハンディーオシロスコープ「OWON HDS272S」です。既に本連載で何度か登場していますがこれをシグナルジェネレータとして用いています。
表1はCS-4025の仕様を示しています。今回はこのオシロスコープをベクタースキャンディスプレイとして使う場合に必要な項目の抜粋となっています。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| ディスプレイタイプ | CRT |
| 感度と誤差 | 1mV-2mV ±5%, 5mV-5V ±3% |
| 立上がり特性 | 最大17.5ns 20MHz |
| チャンネル数 | 2 |
| オペレーションモード | X-Yモードに切り替え可能 |
| 表1 「KENWOOD CS-4025」の仕様 | |
- ディスプレイタイプはCRTです。現在主流の液晶ディスプレイではなくブラウン管です。ちなみに信号はモノクロームで緑の陰極線で表示されます
- 感度と誤差では1mV〜2mVの範囲で±5%の誤差があります。5mV〜5Vの範囲では±3%の誤差です。1mVや5Vというのはオシロスコープの画面上の目盛りの1マス目のことで、その目盛りを1mVから5Vまで切り替えることができます。その感度による目盛りに対する誤差を示しています
- 最大立ち上がり時間、表示できる信号の最大周波数は実用的には20MHz
- チャンネル数は2なのでいわゆる2現象のオシロスコープということになります。ちなみに、今回のようにオシロスコープをベクタースキャンディスプレイとして使う場合は2現象以上が必須です
- オペレーションモードをX-Yモードに切り替えることが可能です。オシロスコープをベクタースキャンディスプレイとして使う場合はこのX-Yモードに切り替えます。その際、チャンネル1が縦軸(Y軸)、チャンネル2が横軸(X軸)となります
ベクターモードのテスト
図2はオシロスコープがベクターモードとして動作するかをテストしている様子です。
まずオシロスコープをベクターモード(X-Yモード)に切り替えるには赤枠で囲んだMODEスイッチを右側のX-Yに切り替えます。
オシロスコープのチャンネル1とチャンネル2にブレッドボードから線がつながっています。左側がチャンネル1で右側がチャンネル2です。ブレッドボードに組んだ回路は、2つある青いノブを回すとそれぞれのチャンネルに供給する電圧が変化します。
左側のノブを操作するとオシロスコープに表示されている緑の点が上下に動きます。また右側のノブを操作すると緑の点が左右に動きます。
チャンネル1の場合は電圧を高くすると緑の輝点は上に移動します。チャンネル2だと電圧を上げると輝点は右に移動します。
図3はベクターモード(X-Yモード)のテストを行う回路です。
可変抵抗(VR)がチャンネル1とチャンネル2用に独立して用意されています。VCCは5Vです。図2にはマイコンが載っていますが、今回はマイコンを使っておらずUSBからの電源供給にのみ用いています。
可変抵抗VR1のノブを操作することにより0〜5Vの任意の電圧をチャンネル1に供給します。可変抵抗VR2のノブの操作で0〜5Vまでの任意の電圧をチャンネル2に供給します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


