ヒューマノイドの社会実装阻む3つの壁、「フィジカルデータ生成センター」で打破:ロボットイベントレポート(1/2 ページ)
INSOL-HIGHが東京都内でヒューマノイドロボットの未来戦略を議論するミートアップイベント「Humanoid Robot×Japan's Future Meet UP」を開催。ヒューマノイドロボットの社会実装を加速する「フィジカルデータ生成センター」構想などについて説明した。
ヒューマノイドロボットを中心に自動化設備導入のサポートを手掛けるスタートアップのINSOL-HIGHは2025年11月6日、AWSジャパン本社(東京都品川区)内にあるスタートアップ向け施設「AWS Startup Loft Tokyo」において、ヒューマノイドロボットの未来戦略を議論するミートアップイベント「Humanoid Robot×Japan's Future Meet UP」を開催した。
同イベントは、ヒューマノイドロボットを「使いたい」現場の事業者と、ソリューションを「提供したい」企業の双方を集めて、産業全体の期待感を高めることが目的だ。INSOL-HIGHの関係者の他、同社と業務提携する山善でヒューマノイドロボット市場開発担当課長を務める北野峰陽氏、エヌビディア オートノマスマシン事業部 ビジネスデベロップメントマネージャーの大岡正憲氏、AWSジャパン ソリューション アーキテクトの木村公哉氏、ベンチャーキャピタルであるファーストライト・キャピタル マネージングパートナーの頼嘉満氏、野村総合研究所 エキスパートの李智慧氏らが登壇し、ヒューマノイドロボットの現状と課題、そして可能性を共有した。
ヒューマノイドの現場活用を目指すINSOL-HIGH
2023年11月創業のINSOL-HIGHは、当初は物流ロボットコンサルティングを中心にシステム開発などの事業を展開していた。2024年6月には中国のKepler Exploration Roboticsとの提携を発表し、物流や製造の分野におけるヒューマノイドロボットの本格的な運用に向けて活動を開始した。2025年4月には、生産財と消費財を扱う専門商社である山善との業務提携を発表している。現在は物流分野でのヒューマノイドロボット実用化に向けてプロジェクトを進めており、最大50台のヒューマノイドロボットを活用した「フィジカルデータ生成センター」を2026年春に構築すること、そのための業界横断コンソーシアム「ヒューマノイドロボット・フィジカルデータ生成センター」構築プロジェクトを発表して参画企業を募集している。また、2025年10月末に、中国のAGI BOTのヒューマノイドロボットと、自動倉庫システムであるAutoStoreとの連携をメディア向けに公開したばかりだ。
今回のイベントには200人近い申し込みがあったという。INSOL-HIGH 代表取締役の磯部宗克氏は「ヒューマノイドロボットに関するニュースは日々続いている。今日のイベントで学びがあるかどうかは分からない。ネットワーキングセッションがあるので参加者同士でいろいろな会話をしていただければと思う」とあいさつした。なお、参加者の大半はロボットを使う導入側の企業とのことだった。
「ヒューマノイドロボット・フィジカルデータ生成センター」とは
INSOL-HIGHによるヒューマノイドロボット・フィジカルデータ生成センター構想については、同社 プロジェクトマネージャーの小川哲男氏が紹介した。
INSOL-HIGHはヒューマノイド専門のロボット導入支援システム「REAaL(リアル)プラットフォーム」を開発している。REAaLはロボットの動作データの訓練からモデル生成までを支援するプラットフォーム機能、ヒューマノイドロボットの状態確認や動作に関する統計データを提供するマネジメント機能、そして各種ロボットをWES(倉庫実行システム)として動作し、WMS(倉庫管理システム)やMES(製造実行システム)と連携させる3つの機能を持つ。
INSOL-HIGHでは、REAaLプラットフォームを開発する中で、ヒューマノイドロボットの社会実装を阻む3つの巨大な壁の存在を実感したという。小川氏は「技術者が不足していることから発生する『ノウハウの壁』、データを基にトレーニングを行ってロボットを動かすのに必要なインフラ投資などの『環境の壁』、膨大なデータ収集やアノテーションコストのかかる『データの壁』がある」と指摘する。
社内に生産技術の知見があったとしても、現実世界の機器にAIモデルを実装して動かすフィジカルAI(人工知能)の専門家がいない。外部から人材を呼んでくるとしても、その外部の人材は社内の生産技術を把握していない。だからROI(投資利益率)を算出できず導入の判断ができない。つまり、社内の人材育成が必要だが、それにはコストと時間がかかる。
また、ヒューマノイドロボットのAIモデルのトレーニングを行うには大量のロボットやトレーニングのための環境が必要だ。アノテーターやトレーナーといった専門の技術者も必要である。そして、膨大なデータを生成し、それらにアノテーションを実施する必要もある。さらに、データは高品質なものでなければならない。日本に合った「文化的な適合性」も必要となる。AIモデルを生成するためのシステムコストも必要だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.





