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改質木質バイオマス燃焼灰を活性フィラーにジオポリマーコンクリート開発木質バイオマス燃焼灰資源化技術の実証開発(3)(1/2 ページ)

本取り組みは、環境再生保全機構「令和3年度環境研究総合推進費 ジオポリマーコンクリートに資する木質バイオマス燃焼灰の資源化技術の実証開発(JPMEERF2021G03)」で実施した内容の一部である。第3回目では、改質木質バイオマス燃焼灰を活性フィラーとして開発したジオポリマーコンクリートの性能などを紹介する。

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 本連載の第3回目では、西松建設 マイスターの原田耕司氏をサブテーマリーダに、九州工業大学 大学院 建設社会工学系 准教授の故・合田寛基氏と行った研究内容を紹介する。

 今回の取り組みは、環境再生保全機構のプロジェクト「令和3年度環境研究総合推進費 ジオポリマーコンクリートに資する木質バイオマス燃焼灰の資源化技術の実証開発(JPMEERF2021G03)」で実施した内容の一部である。

建設分野のCO2排出量削減を目指して

 近年、CO2の排出量が最大でセメントの約20%であるジオポリマーコンクリートには石炭灰や高炉スラグ微粉末のような活性フィラーが必要である。木質バイオマス燃焼灰を石炭灰の代わりにジオポリマーコンクリートの活性フィラーとして活用できれば、資源循環を通じて地域循環共生圏の創造に寄与できる。そこで、木質バイオマス燃焼灰資源化システムで改質した改質木質バイオマス燃焼灰(MCAS)を利用したジオポリマーコンクリートを開発して、建設分野におけるCO2排出量の大幅な削減を目指した。

1.開発したジオポリマーコンクリートの特性

 常温硬化型のジオポリマーコンクリートは、スランプフローの可使時間が60分保持できる配合を満足させるため、アルカリ溶液のアルカリ水比(モル比:A/W)および石灰石微粉末の検討を行い、表1に示す配(調)合を選定した。なお、本検討で使用したMCASは石炭と木質バイオマスを燃焼させた時の混焼灰を対象とした。その結果、セメントを使用した普通コンクリートよりもCO2排出量を62.5%削減し、60分後のスランプフローの低下率が低く60分の可使時間が確保可能で、圧縮強度29.7N/mm2以上のジオポリマーコンクリートを開発できた(表2)。

表1 MCASを活性フィラーとしたジオポリマーコンクリートの配(調)合
表1 MCASを活性フィラーとしたジオポリマーコンクリートの配(調)合[クリックで拡大]
表2 MCASジオポリマーコンクリートの試験結果
表2 MCASジオポリマーコンクリートの試験結果[クリックで拡大]

 次いで、MACSを利用したジオポリマーコンクリートの耐久性を評価するため、実環境で暴露試験を実施した。暴露試験場所は、凍結融解危険度が高い北海道釧路市の他、一般的な環境状況で確認を行うために福岡県北九州市、塩害および高温/多湿環境として知られる沖縄県の3カ所で実施した(写真1)。暴露試験の結果、図1に示すように、圧縮強度の低下などは見受けられず、鉄筋の腐食抵抗性以外は、セメントコンクリートと同等以上の性能を有することを確かめた。なお、MCASを利用したジオポリマーコンクリートは放射熱が低い傾向があることも確認できた。

写真1 暴露試験の状況(左:沖縄県、右:北海道釧路市)
写真1 暴露試験の状況(左:沖縄県、右:北海道釧路市)[クリックで拡大]
図1 圧縮強度の推移(左:沖縄県、右:北海道釧路市)
図1 圧縮強度の推移(左:沖縄県、右:北海道釧路市)[クリックで拡大]

 上記では、混焼灰を用いたジオポリマーコンクリートの検討を行ったが、木質バイオマス単独で燃焼させて発電した時の専焼灰についても検討を行った。スランプフローは、専焼灰の種類により改質の効果は異なる結果となった。しかし、図2に示すように圧縮強度は改質することにより増加する傾向を確認でき、改質専焼灰の活性フィラーとしての可能性が示唆された。

図2 改質専焼灰を使用したジオポリマーコンクリートの圧縮強度
図2 改質専焼灰を使用したジオポリマーコンクリートの圧縮強度[クリックで拡大]

 実機ミキサーを用いて、MCASを活性フィラーとしたジオポリマーコンクリートで小型製品(縁石)を試作した。今回の試作で、MCASを利用したジオポリマーコンクリートは、セメントコンクリートの製造と同じ手順での製造が可能であることを確認でき、図3に示す木質バイオマス燃焼灰の資源化システムが社会実装可能であることを示した。

図3 木質バイオマス燃焼灰の資源化システム
図3 木質バイオマス燃焼灰の資源化システム[クリックで拡大]

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