三菱ケミカルG、中国で価格施策が効果発揮せずMMAモノマー事業が低迷:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
三菱ケミカルグループは、2026年3月期第2四半期の連結業績の発表で、中国で価格施策が効果を発揮せずMMAモノマー事業が低迷している状況を明かした。
三菱ケミカルグループは2025年10月31日、オンラインで記者会見を開き、2026年3月期第2四半期の連結業績(2025年4月1日〜9月30日)、通期業績の予想について発表した。
中国でMMAモノマーの変動価格フォーミュラ導入に応じる顧客は1社もない
2026年3月期第2四半期における三菱ケミカルグループの連結業績の売上高は前年同期比10%減の1兆7991億円となり、営業利益は同20%減の865億円となった。営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除外したコア営業利益は3%減の1261億円を記録した。
同決算のポイントは以下の通りだ。
同期のコア営業利益は、半導体関連を中心としたスペシャリティマテリアルズ事業と産業ガス事業が堅調に推移し、業績をけん引した結果、上期予想を上回る好調な結果となった。一方で、米国関税政策の景気への影響や、アクリル樹脂の主原料であるメタクリル酸メチル(MMA)モノマー市況に改善の兆しが見られないなど、先行きに対し依然として不透明な状況が継続している。
ケミカルズ事業のコア営業利益は331億円の黒字となった。全社横断的な構造改革/合理化の取り組みによりコスト削減効果を積み上げた。スペシャリティマテリアルズ事業では、売買差/数量差が改善したが、原料ナフサ価格の下落に伴う在庫評価損に加え、MMAモノマー市況の下落に伴う売買差の悪化などにより同12%の減益となった。
田辺三菱製薬の譲渡に伴う利益は予定通り計上し、グループ全体の親会社の所有者に帰属する中間利益は、前年同期比で169%の増益となった。
これらのポイントの中でも特に関心が寄せられたのが、市況の悪化継続によるMMAモノマー事業の低迷だ。MMA事業はMMA&デリバティブズ事業のサブセグメントとして展開されている。MMA&デリバティブズ事業の売上高は同21%減の1781億円で、コア営業利益は同84%減の42億円となった。MMA事業の売上高は同26%減の1275億円で、コア営業利益は同96%減の10億円だった。MMA事業における減収減益の背景には需要減少だけでなく、同事業の価格施策が中国を中心としたアジアで大きな効果を発揮していない点もある。
同社が2025年4月23日に発表した「事業戦略説明会 2025」によれば、アジア地域においてMMAモノマーの販売価格決定で、変動価格フォーミュラの導入拡大により、ボラティリティ(価格変動性)の低減とコスト上昇分の価格転嫁を推進するとした。変動価格フォーミュラは、原材料価格の変動に連動して、製品の販売価格を事前に定めた算式(フォーミュラ)に従って自動的に決定する方法を指す。
三菱ケミカルグループ 執行役員チーフファイナンシャルオフィサー(最高財務責任者:CFO)の木田稔氏は「当社では変動価格フォーミュラの導入拡大による、アジアにおけるMMAモノマーの価格下落の抑制効果として、2026年3月期通期業績で約40億円を見積もっている。当社はアジアで年間約80万トンのMMAモノマーを販売している。割合としては、三菱ケミカルグループ、中国、中国以外のアジア諸国のそれぞれが3分の1を占めている。だが、販売数量の割合で3分の1を占める中国でMMAモノマーへの変動価格フォーミュラ導入に応じる顧客は1社もない」と話す。
続けて、「中国はMMAモノマーを生産する化学メーカーが乱立している。そのため、顧客は各場面で1番安いMMAモノマーを求め、変動価格フォーミュラ導入の交渉の席に着く機会もない。しかしながら、中国以外のアジアの一部では、MMAモノマーへの変動価格フォーミュラ導入に同意してもらっている企業もある。この効果が上期で20億円ほど出ている」と補足した。
ただし、中国でMMAモノマー事業の展開をシュリンクしないという。「中国はMMAモノマーの生産地だが、一大消費地でもある。当社が中国のMMA市場に関わらないということになると、それはすなわちMMA事業から降りるということになると思う」(木田氏)。
こういった状況を踏まえて、三菱ケミカルグループではインドをはじめとする新興国のMMAモノマー市場の開拓を進めているという。「インドに従業員を送り、マーケティングを強化している。また、当社がMMAモノマーを販売している化学メーカーはこのモノマーからポリマーを生産している。つまり、ポリマーを生産する当社の競合他社でもある。(見方を変えれば)、MMAモノマーとセットでポリマーの生産技術をライセンス契約などで販売できる可能性もある。こういった取り組みを中国に先行してインドで注力する。中国の化学メーカーが展開していない北アフリカの市場も押さえていきたい」(木田氏)。
MMAモノマーの生産性が低いプラントの閉鎖や最適化を進める考えも示した。「例えば、当社はアジアでさまざまな企業とジョイントベンチャーを設立し、MMAモノマーのプラントを運営している。しかし、ジョイントベンチャーだと、当社の一存で稼働率をコントロールすることが難しい。そのため、現在はシンガポールのMMAモノマープラントを起点に、アジアの各プラントの稼働率を調整している。こういった取り組みにより、微力ながらも市場をコントロールし、MMAモノマーの価格下落を抑制している」(木田氏)。
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