創意と技が交差――「ものづくりワールド大阪2025」に集った製造現場の知恵とは:FAイベントレポート(3/3 ページ)
関西を代表する産業イベントとして、「第28回 ものづくりワールド大阪」に設計、開発から生産、検査、保全まで幅広い分野の企業が最新技術を披露。会場には自動化、省力化、デジタル化をキーワードに、多様なソリューションが集結した。
低重心×高剛性で精度を変える次世代アクチュエータ
ケーエスエスは、超小型ボールねじのリーディングメーカーとして知られる。同社が新たに開発した「次世代アクチュエータ」は、低重心化と高剛性化を両立した新構造を採用している。ISO(DIN)規格対応ねじナットを使用し、ガイド間隔をコンパクトに抑えることで、装置全体の高さを低く保ちながら安定性を高めた。
さらに注目は、同社独自の連結技術「フレキシブルリンク」だ。モーターとボールねじをつなぐカップリングを省略し、軸受け部と一体化することで長手方向を従来の半分以下に短縮。小型装置への組み込みや省スペース設計に対応する。
従来構造ではモーター接続部に多くのスペースを要したが、同技術により設計自由度が向上。装置の軽量化や高精度化を求める顕微鏡、医療機器などの分野での採用が見込まれる。
ケーエスエスの説明員は「世界でも類を見ない“超小型ボールねじ”メーカーとして、これからもコンパクト設計を追求したい」と語った。
瞬時の異常を“見える化”する高速データアクイジションユニット
横河計測が紹介したのは、2025年5月に発売した新製品「高速データアクイジションユニット SL2000」だ。特徴は、電気信号やモーター挙動など多チャンネルのデータを同時に高精度で記録できる点にある。ラックに最大5台まで搭載でき、1台のPCから統合管理できる。オシロスコープを複数台同時に制御できるようなイメージだ。
本機の最大の特長は、測定系を完全に電気的に絶縁している点だ。通常、100Vを超える電圧を扱う測定は危険を伴うが、SL2000なら感電リスクを排除し、安全に電源波形を取得できる。長時間の耐久試験や異常検知にも対応し、波形データをそのままレポート化することが可能という。
さらに、同社独自の「統合計測ソフトウェアプラットフォーム IS8000」と組み合わせることで、モーターの動作データや電力波形を一元的に制御/分析できる。電気/機械/ロボット分野を横断してデータを統合することで、開発現場の“異常を逃さない”計測環境を提供する1台に仕上がっている。
【訂正】横河計測の製品名が初出時誤っておりました。お詫びして訂正いたします。[編集部/2025年10月28日16時46分]
折りたたんで運べる可搬型クリーンブース
伸榮産業が開発した折りたたみ式クリーンブースは、「必要な時だけ清浄空間を作る」という新しい発想から生まれた。アルミフレーム構造の軽量設計で、2人いれば1分足らずで設置、収納が可能。キャスター付きのため、検査や研磨、組立など現場内で柔軟に移動して使用できる。
天井部に設けられたHEPAフィルター付きのユニット(FFU)からクリーンエアを送り込み、カーテンを閉めて20分ほど稼働させれば、清浄度クラス1000レベルの環境を確保できる。帯電防止シートを採用し、静電気やホコリの付着も抑制。設営後は内部の気流が下向きに流れ、作業面の清潔さを保つ仕組みだ。
常設のクリーンルームを持たない中小製造業や検査工程に適しており、コロナ禍では病院での臨時隔離用スペースとしても活用された実績がある。「限られた空間の中で清浄度を確保したい」という現場の声に寄り添う、柔軟な環境づくりを支える技術だ。
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