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貿易立国日本を支える自動車船の最新ブリッジを「セレステ・エース」で見た!イマドキのフナデジ!(7)(2/3 ページ)

「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第7回は、商船三井の最新鋭自動車船「セレステ・エース」のブリッジを紹介する。

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操船情報系:CONNING(操船関連情報総合表示)

 セレステ・エースに限らず、現代船舶のブリッジで“基準”となるのが「CONNING」だ。航海センサーから得られる1次情報となるHDG(船首方位)、COG(対地針路)、SOG(対地速力)に加え、対水速、回頭率(ROT)、舵角、主軸回転、風向風速、ドップラースピードログ、スラスター表示などを常時提示する。

 セレステ・エースのCONNING画面には、Rate of Turnバー、Rudder Angleゲージ、Wind(True/Relative)、Doppler Log、SOGといったウィジェットが並ぶ。

 HDGとCOG、SPD、風向風速、SOGを並列に表示することで、風や潮流による横流れや流速差を把握できる。さらに、ROT+舵角+スラスター表示を同一視野に置くことで、現在の操舵と推力指示が船体挙動に作用しているかを即時に評価できる。

ブリッジコンソールの中枢ともいえるCONNING画面
ブリッジコンソールの中枢ともいえるCONNING画面[クリックで拡大]

操船情報系:レーダー(Xバンド/Sバンド)

 ブリッジでの周辺監視と衝突予防を担う主装置がレーダーコンソールだ。単に目標を映すだけでなく、「今どこへ向かい、どの程度で交差しそうか」「舵を切ったらどう変わるか」を同じ画面で判断できる構成となっている。画面上部のステータスバーは運用の“現在設定”を要約する。RANGE(例:1.5NM)がスケールを、PULSEがレーダーの送信パルス幅を示し、近距離分解能と感度のバランスを決める。クラッタ対策はGAIN/SEA/RAINの切り替えで素早く対応可能だ。

 画面右側には、CONNING系ウィジェットが並ぶ。Rate of Turn(回頭率)バー、Rudder Angle(舵角)、Wind(真風/相対風)、Doppler Log(対水速度)、SOG(対地速度)、スクリュープロペラ回転速度、海水温、水深など、操船に直結する航行情報をレーダー映像の“脇”で同時監視できる。この画面構成によって、レーダー輝点(が構成するベクトルやゾーン表示)で“外界”を見ながら、舵や推力の入力が“船の挙動”にどう反映しているかを同じ視野で追える。

 なお、デジタルガジェットではタッチパネル全盛だが、コンソールの操作では物理キーが確実で素早い。レーダーコンソールでも下部に物理キーが並び、対象物の距離と方位の測位、脅威対象のARPA(Automatic Radar Plotting Aids:自動レーダープロッティング装置)捕捉、避航計画の確認など、レーダー操作で求められる「素早い対処」を可能にしている。

レーダー画面にはARPAで取得した周辺海域情報もアイコンで表示されている
レーダー画面にはARPAで取得した周辺海域情報もアイコンで表示されている[クリックで拡大]

操船情報系:ECDIS(電子海図表示装置)

 ECDISは、航路の“設計図”を作るPLAN、その設計図通りに進んでいるかを点検するNAV(監視)、そして電子海図(ENC)の更新(海図情報は現代においても頻繁に改正されている)を担う。画面の上部タブにあるPLAN/NAV/CHARTSを遷移しながら、同一の操作体系で航路計画の立案からチェック、表示を回せる。

ECDIS
ECDISは単なる電子海図表示装置にとどまらず航海計画立案から避航計画立案まで自律運航にもつながる総合運航ソリューションといえるまでに進化している[クリックで拡大]

 画面右側には、航海センサーで得た情報がまとまっている。HDG(GYRO1)はジャイロ羅針儀から得た真方位の船首方位、SPD(LOG1/WT)はドップラースピードログから得た対水速度、COG/SOG(GPS1)はGPSを基準にした対地針路/対地速度、POSN(WGS-84)は自己船位置で、ENCに合わせた「WGS-84」測地系で明示する。

 続くRoute Informationは、監視対象の航路に関する“設定位置と実際の位置”の要約だ。航路区間ごとのPlan Speed/Plan Course(計画速力/計画針路)に対し、ECDISがその時点での操舵指示として算出するCourse to Steer(操舵針路)を比較する。XTD Limit/XTDは許容横偏差と現在の外れ量で、逸脱の度合いが数値で把握できる。針路変更のための旋回準備にはDIST to WOP(旋回開始点までの距離)とTime to Go(次WPまでの残時間)を使い、旋回のプランと実績はTurn RAD(計画旋回半径)とROT(回頭率)で確認する。さらにNext WPT/Next Courseが次の航路区間の入口と針路を前倒しで示し、手順の見落としを防ぐ。

 最下段はOverlay/NAV Toolsで、ここが“見張り負荷の調整ノブ”に当たる。TT(ARPA)/AIS(船舶自動識別装置)のタブ切り替えで表示対象の種類を選び、FILT ON/OFFで遠すぎる/遅すぎる/信頼度の低い目標を除外する。Vectorは将来位置ベクトルの時間長(例:20min)を決め、短くすれば近距離の挙動に、長くすれば交差予測に重心を置ける。通信途絶などで更新が切れた目標の扱いはLost TGTで方針を決め、Past POSNでは過去位置点の表示と間隔を設定して航跡の癖を可視化する。TT SourceやSYNC.ANTはレーダー/AISのデータソースやアンテナ同期の整合をとるための設定で、複数センサー構成でも基準を乱さないためのものだ。

 ECDIS運用上の要点は3点に集約できる。第1に、計画からの逸脱や浅所、制限区域への接近をECDISが自動検出して警報できること。第2に、レーダー映像やAISターゲットを海図上に重畳することで、計画の“線”と実世界の“アイコン”を同じ座標系で突き合わせ、見張りと監視を同じ作業にできること。第3に、計画航路と現在針路を同時に監視できるため、舵と機関の入力判断が短い思考で済むことだ。

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