航空機開発は「3D UNIV+RSES」でどう変わる? ダッソーが描く未来像:Space Event(1/3 ページ)
ダッソー・システムズは「大阪・関西万博」のフランスパビリオンにおいて、航空/宇宙業界向け特別イベント「Space Event」を開催。同業界における同社のこれまでの歩みと「3D UNIV+RSES」で実現する未来のモノづくりの在り方を示した。
ダッソー・システムズは2025年9月10日、同社がシルバースポンサーを務める「大阪・関西万博」のフランスパビリオン(フランス館)において、航空/宇宙業界向け特別イベント「Space Event」を開催。仏Dassault Systemes 航空宇宙・防衛担当 バイスプレジデントのDavid Ziegler(デイヴィッド・ジグラー)氏が、航空/宇宙、防衛産業に向けた同社の取り組みやビジョンについて語った。
40年にわたる航空/宇宙産業での実績
ダッソー・システムズは、航空/宇宙産業に向けて約40年にわたりビジネスを展開しており、現在も世界の主要航空機メーカーに対して、設計、製造、運用/保守における“バーチャルツインエクスペリエンス”を提供し続けている。
例えば、安全性などの認証を得るために必要な機体構造の高度なシミュレーションから、航空管制をはじめとする複雑な課題の解決に至るまで、幅広い領域をカバーし、迅速なシナリオの探索や将来の挙動予測などにおいて、正確な解決策の導出に役立てられているという。
ジグラー氏は「航空機などの製造もまた、バーチャルツインによって革命的に進化する」と強調する。通常、航空機の製造工場の立ち上げには数百万ユーロもの費用がかかるが、設備や装置などの物理的なシステムを導入した後に設計ミスが判明した場合、その修正には膨大なコストが必要となる。これに対し、バーチャルツインを活用したアプローチであれば、設計チームと連携しながら工場全体を仮想空間で可視化し、プロセスや生産物、周辺環境への影響などを着工前にシミュレーションすることが可能となる。
「このように、製品ライフサイクル全体を通じた持続可能なビジネス革新が可能となり、リスクを低減しながら収益性を高める新たなビジネスモデルの探索につなげることができる。リアルとバーチャルをつなぎ、未来を想像し、それを実現する。われわれが提供する“バーチャルツインエクスペリエンス”の世界には、新たな機会が広がっている」(ジグラー氏)
航空/宇宙、防衛産業が直面する課題
ジグラー氏によると、航空/宇宙や防衛産業における現状の課題は、イノベーションの創出だという。具体的には、持続可能な航空燃料の使用や材料の活用、電動航空機/水素航空機の量産化といった脱炭素航空機の実現が挙げられる。
製造面でも課題がある。需要に対して生産能力が追い付いていない状況があるという。ジグラー氏は「例えば、AirbusのA320の受注残は7年分の生産量に相当する。つまり、注文してから納品まで7年待たなければならないことを意味する。これは現実的ではない」と説明する。
生産能力を増強すると、品質やサプライチェーンの課題も浮き彫りになる。「部品やコンポーネントの不足、貿易戦争、関税の影響などが原因でサプライチェーン全体が再編成される中、この不確実性をどう管理するかが、航空/宇宙や防衛分野のCEOたちにとって大きな課題となっている」(ジグラー氏)。
その他、業界特有の規制強化への対応についても「今後数年間における重要なテーマの一つになる」とジグラー氏は訴える。
一方で、エンジニアリングライフサイクルを加速し、製造を改善する存在として、AI(人工知能)への期待も非常に高まっているという。防衛分野では、AIが自律型ドローンや自律型走行車両など、次世代の防衛能力を実現するために不可欠な技術として位置付けられている。また、航空/宇宙および防衛産業においても、熟練エンジニアの高齢化や退職、技術継承の問題が顕在化しており、AI活用による解決が求められている。
ダッソー・システムズは40年以上にわたり、航空/宇宙および防衛産業に関連する多くの企業とパートナーシップを構築し、これらの問題解決や将来の課題に向けた対応において、同社のソリューションを提供してきた。「今飛んでいる航空機のほとんどが、われわれのソリューションで設計/シミュレーション/製造/運用されているといえる。これはダッソー・システムズにとっての誇りであると同時に、非常に大きな責任であると認識している」(ジグラー氏)
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