600種の「異能」による熟議が生成AIになかった創造性を生み出す 「FIRA」誕生:人工知能ニュース(1/2 ページ)
ハピネスプラネットと日立製作所は、自律的により深い洞察や創造的な視点を生み出していく自己成長型生成AIのサービス「Happiness Planet FIRA(フィーラ、以下FIRA)」について説明した。
ハピネスプラネットと日立製作所(以下、日立)は2025年8月26日、東京都内で会見を開き、自律的により深い洞察や創造的な視点を生み出していく自己成長型生成AI(人工知能)のサービス「Happiness Planet FIRA(フィーラ、以下FIRA)」について説明した。両社の独自技術を基に共同開発した自己成長型生成AIを基にサービスとして提供するFIRAは、各専門分野に特化した600種類のAIエージェントが自律的に議論することで、利用者固有のデータに頼らず、個別の経営課題に合わせた深い洞察や創造的な選択肢を生成できる。事業化はハピネスプラネットが担当し同日からサービス提供を開始している。
2022年11月の「ChatGPT」の発表以降、日進月歩で生成AIの技術開発は加速している。足元では、生成AI同士が連携して人の行うさまざまな業務も担うことができるAIエージェントへの注目が集まるようになっている。ハピネスプラネット 代表取締役CEO 兼 日立製作所 フェローの矢野和男氏は「確かに現在の生成AIは学習データを増やしていくことで多くの知識が集積されており、人よりもはるかに『物知り』であることは確かだ。しかし、そんな生成AIに課題解決について質問しても、得られる回答は総花的な一般論であり創造性は低い。物知りであることと賢いことは別だ。そこで、AIに創造性を持たせることを目指して開発したのが自己成長型生成AIサービスのFIRAだ」と語る。
量子確率論に基づいた「異能」を用意
FIRAは、さまざまな知識の集積であるLLM(大規模言語モデル)を共通の基盤として、創造的に自己成長するAIエージェントを生み出す仕組みが実装されている。この10年で、人の創造性や認知の理解に「量子確率論」という原子分子の現象理解に使われてきた物理モデルを応用する研究が盛んになっており、FIRAはこの理論に沿って創造性を定式化してAIエージェントに実装している。

従来の生成AIと「FIRA」によって得られる回答の比較。FIRAは、テーマに合った複数の「異能」を“召喚”して熟議を重ねていく中で内容を深化させていき、創造性のある回答が得られるようにする[クリックで拡大] 出所:ハピネスプラネット
矢野氏は「FIRAでは、量子確率論に基づく設計原理によりとがった視点を持つAIエージェントである『異能』を用意している。複数の異能が、それぞれのとがった視点を基に熟議を重ねながら、ユーザーの意見も取り入れつつそれぞれ異能のレベルを高めていくことで創造性を持った回答が得られるようになる。重要なのは、とがった視点を平均化して総花的で一般的な方向に落とし込むのではなく、掛け合わせになるようにすることだ」と強調する。

量子確率論に基づいて創造性を定式化しAIエージェントに実装したのが「異能」である。1つ1つの異能に別々のLLMがあるのではなく、知識の集積基盤であるLLMを基に、アプリケーション層で創造性の出し方を変えることで数多くの異能を実現している[クリックで拡大] 出所:ハピネスプラネット
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