自動車開発で生成AIはどのように役立つのか、数日かかっていたことを数分に短縮:車載ソフトウェア(3/3 ページ)
AWSジャパンは自動車開発における生成AIの活用事例について説明した。
人手で数日かかる仕様変更が生成AIシスタントに任せると数分で完了
例えば、AWSは2025年1月開催の「CES 2025」において、要件管理への生成AI適用事例となるIVI(車載情報機器)を用いたデモを紹介している。このIVIは、クラウド上の仮想開発プラットフォームである「Amazon Graviton」上に構築されており、仮想ECUによって再現されている。ここで、メータークラスタ左上の速度制限値の表示の枠色を、通常の赤から、EVモデルの場合は緑に変更する例を見てみよう。
開発担当者はこの仕様変更の指示をテキストで入力する。従来は関連するエンジニアに仕様変更を連絡し関わる業務の割り当てを行った上で変更作業を進めていくことになる。しかし、AWSのデモでは、生成AIアシスタントである「Amazon Q」が仕様変更の指示を受けて、変更の前提となるソフトウェア構成環境について開発担当者に確認を求める。なお、Amazon Qは要求仕様書、詳細設計書、ソースコードの関係性をあらかじめ学習しているため、開発担当者が行うのはその内容が正しいかどうかの確認作業だけで済む。


確認作業が完了すると、Amazon Qは要求仕様書の変更すべき部分と対応するソースコードの変更を提案する。この提案を受け入れれば、Amazon QはCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)ツールを用いて、変更した仕様に基づき生成した新たなソースコードと従来のソースコードの比較を提示する。ソースコード確認が終われば、CI/CDツールによってAmazon Graviton上に構築されたIVIに反映され、速度制限の枠色が変わったことを仮想ECU上の動作で確認できる。「従来は人手でやりとりしていた仕様変更に関わる要件管理のプロセスは数日かかることもあったが、生成AIであるAmazon Qに任せれば新たなソースコードを生成してECUに実装するまで数分で完了できる」(梶本氏)。
この他にもCES 2025では、ADAS(先進運転支援システム)開発における自然言語によるシーン検索や、検証用映像生成、地図情報からの映像生成などのデモも披露した。
また、自動車ではAIモデルにリアルタイム性の高い応答が求められるためエッジAIが果たすべき役割にも大きな期待がかけられている。クラウドベンダーであるAWSは、大規模なクラウドLLMから自動車に最適なエッジLLMを構築した上で、先述のAmazon Gravitonを用いた仮想ECUでエッジLLMの動作を確認してから自動車に実装し、その利用状況の分析と更新を行えるフレームワークを提供できるという。
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