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自動車開発で生成AIはどのように役立つのか、数日かかっていたことを数分に短縮車載ソフトウェア(1/3 ページ)

AWSジャパンは自動車開発における生成AIの活用事例について説明した。

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 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は2025年8月21日、東京都内で会見を開き、自動車の開発における生成AI(人工知能)の活用事例について説明した。

 同社は同年5月にCASE(コネクテッド、自動化、シェアリング&サービス、電動化)、7月にSDV(ソフトウェアデファインドビークル)をテーマに、AWSのソリューションが自動車業界に採用されている理由などについて“記者勉強会”の形式で説明した。今回はその記者勉強会の第3回でありテーマに選んだのが生成AI(人工知能)である。

2025年からAIエージェントを活用する段階へ

AWSジャパンの岡本京氏
AWSジャパンの岡本京氏

 AIの進化は著しい。2022年11月に「ChatGPT」が発表されて生成AIへの注目が一気に高まり、スマートフォンやPCに生成AIを利用したAI機能が多数搭載されるようになった。企業も生成AIの活用を推進するようになっている。AWSジャパン エンタープライズ技術本部 自動車・製造グループ 本部長の岡本京氏は「生成AIはPoC(概念実証)の段階は終わって実活用するものになっている」と語る。そして足元では、幾つかの生成AIが連携してより高度なタスクをこなす「AIエージェント」を活用する段階に進みつつある。

 岡本氏はAIエージェントまでの進化の流れについて、生成AIの前史に当たる自然言語処理技術(NLP)を起点に説明した。ディープラーニングの登場から進化を続けてきたAIだが、2020年以前はテキスト入力の続きを生成するなどのことができるNLPの開発が進められていた。このNLPを基に2022年に登場したChatGPTに代表される生成AIは、会話形式入力の続きを外部知識と連携して生成することが可能になった。ここで、重要な役割を果たしたのがRLHF(人間のフィードバックによる強化学習)と外付けデータベースとなるRAG(検索拡張生成)であり、生成AIは質の高い基盤として利用されることになった。

生成AIの発展からAIエージェント登場までの背景
生成AIの発展からAIエージェント登場までの背景[クリックで拡大] 出所:AWSジャパン

 2023年には、外部関数の呼び出しやプログラミングコードの生成にも対応するなどの機能が加わり、質の高い基盤が横にあるツールを使うという形で外部システムとの連携が可能になった。2024年は、論理的な思考プロセスを経て結論を導き出すリーズニングモデルとなり、与えられたタスクの完了に至るまで計画を生成できるようになっている。そして2025年から、タスク完了に至る計画の立案から実行までをカバーするAIエージェントの本格的に活用が始まろうとしている。

 岡本氏は「AIエージェントは、基盤モデルの計画能力と構造データ出力機能により、目的の指示のみでタスクを完了する。これは、自動車をはじめとするモビリティを取り巻くあらゆる体験価値を高める可能性がある」と強調する。

「Amazon Bedrock」でキャズムを越える

 ただし、生成AIの活用で常に課題として突きつけられているのが、プロトタイプから本番稼働の間にある「キャズム」だ。AWSはこのキャズムを越えられるように、各社が可能な限り共通に使える道具立てとして「Amazon Bedrock」を提供している。

生成AIの活用で課題となるのがプロトタイプから本番稼働の間にある「キャズム」
生成AIの活用で課題となるのがプロトタイプから本番稼働の間にある「キャズム」[クリックで拡大] 出所:AWSジャパン

 Amazon Bedrockは、さまざまなAIモデルを切り替えてアプリケーション化を試すことができる機能を集積している。2025年7月のアップデートで加わった「Agent Core」により、ユーザーが共通的に必要とするであろうコンポーネントの提供も始めている。「当初はどのような共通コンポーネントが求められているかは分からなかったが、ユーザーフィードバックを反映する形で今回サービス化した」(岡本氏)という。

「Amazon Bedrock」の概要
「Amazon Bedrock」の概要[クリックで拡大] 出所:AWSジャパン

 また、顧客の伴走支援に注力するため、データサイエンスに深い造詣を持つメンバーをそろえる生成AIイノベーションセンター(GenAIIC)への投資を続けている。初年度に世界270万人の学生などを対象に、AIスキル向上を支援するプログラムも実施している。

GenAIICによる伴走支援や人材育成プログラムも
GenAIICによる伴走支援や人材育成プログラムも[クリックで拡大] 出所:AWSジャパン

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