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設備保全DXどこから始める? IoT機器初級/上級活用事例設備保全DXの現状と課題(5)(2/3 ページ)

本連載では設備保全業務のデジタル化が生む効用と、現場で直面しがちな課題などを基礎から分かりやすく解説していきます。今回は、現場でのデータ収集を効率化する、IoTの活用について説明します。

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初心者向けIoT機器活用事例

 新しいシステム開発やツールを導入するときに、「目的を明確に」といわれることがあります。道具の導入そのものを目的化してしまうことがないように、道具によって得たい成果を定義すべき、という考え方です。

 以降に紹介する活用例は、全て設備保全での活用を想定しています。これまで述べてきたように工場の設備保全の従事者は年々高齢化が進み、1つ1つの設備に十分な時間を割くことが難しくなっています。

 これを緩和するため、今回は「設備の定期点検の省力化」や「安定的なデータ収集」を目的とした取り組み例を紹介します。

具体例 1:温度の定期的な測定

 温度を定期的に記録し、異常な温度を検出するとアラートを発生させ、対策する仕組みです。特に、薬品などの化学系メーカーや食料品メーカーなどで多く使用されます。

 温度を測る機器は、接着や差し込みをして直接測るタイプや、カメラ/光ファイバーなどの非接触型で測るタイプがあります。自社の定期点検で温度の記録を繰り返している企業は、測定作業の工数を削減し、より付加価値の高い業務に時間を割り当てるという観点から、導入を検討する意義があります。

 製造工程における摩擦熱、排気、排水の工程で、異常な高温(または異常な低温)が続くと設備が早く劣化します。測定間隔は手動で行っていた間隔で試行し、故障が発生した箇所には測定点を増やしたり、測定間隔を2倍(1日1回の検査なら、1日に2回)にしたりなどして、データを蓄積します。

具体例 2:電力消費量の定期的な測定

 工場全体の電力消費量を合理化する際には、設備ごとの電力消費量を時系列で測定します。大掛かりなものは電気工事を必要としますが、電流線へのクランプや電源の接続部への挟み込みだけで測定できるものもあります。

 これまでは電力会社の請求書でしか確認ができていなかった会社には、まずは工場ラインごとの電力消費量、次に設備ごとの電力消費量というように、段階的に測定の粒度を細かくしていく方法が効率的です。

 具体例1で示した温度では極端な変化がなくても、電力消費量が先に異常値を表していることがあります。通常稼働の電力消費量が測定できたら、それを大幅に超えたときにアラートを発生させるようにすると、より迅速な保全対策を講じることができます。

 電力消費量はCO2排出量削減の観点でも有用です。ISO 50001やGHGプロトコルScope2ガイダンスに合わせた測定は月次(月に1回)程度の測定となりますが、日々の保全管理のデータをこれらのサステナビリティに対する取り組みにも活用し、情報価値をさらに高めることができます。

具体例 3:水位の定期的な測定

 液体の極端な減少(または増加)を測定し、異常を検知します。水位は温度と同様に化学系メーカーや食料品メーカーなどでよく利用されます。そのため、市場に出ている製品も安価かつ高精度なものが多いので、業務効率化の候補としての検討価値も高いと考えられます。

 測定機器は超音波、圧力、レーザー、レーダー、フロートなどセンサーの種類も多様です。フロート、圧力(差圧式)、超音波型のセンサーは比較的安価で取り付けやすい製品が多くあります。耐久性にも優れ、一度設置すれば定期的にメンテナンスするだけで、5年以上長く使えるものもあります。

 主にタンクの水位測定に活用し、水位が異常に低かったり高かったりしたときにアラートを発生させるようにすることで、配管漏れや原材料の過剰消費などを検知します。

IoT導入による効率化の注意点

 市場にはたくさんのIoT機器が販売されています。購入/導入する際に注意すべき点としては、今回の目的として定義した「設備の定期点検の省力化」や「安定的なデータ収集」に役立つか、が挙げられます。

 例えば、個々の機器のデータをそれぞれの専用アプリケーションの中で記録しているだけで、1カ所に集約できないことが後になって発覚する場合があります。

 結局、工場の現場に行く移動時間は削減できても、各アプリケーションから集計表への転記作業が残ったままだと、測定箇所が増えるにつれて作業工数が膨れ上がってしまいます。

 初めて導入する場合にはExcelやGoogleスプレッドシートなどに一元集約できるかも合わせて調べておくと後々のDX拡大にも効果的です。市場で販売されている設備保全ツールはこれらの機器のデータを自動的に取り込む機能も搭載されていることがありますので、問い合わせてみるとよいでしょう。

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