ロボットSIerは「いのちかがやく未来」に向けて何をすべきか:未来モノづくり国際EXPO(3/4 ページ)
「2025年大阪・関西万博」と連携した国際見本市/展示会として、「未来モノづくり国際EXPO」(2025年7月16〜19日、インテックス大阪)が開催され、会期中に「この国の『いのちかがやく未来』はどうしたら見えるのか」をテーマにした「ロボットSIerセミナー〜いのちかがやく未来にSIerができること〜」が行われた。セミナーの模様をレポートする。
万博やロボットカフェから探るロボットと人の共存社会への道筋
最後にSIer協会 副会長で、HCI 代表取締役社長の奥山浩司氏が「万博出展から見えたAI・ロボットと人の共存によるストレスフリー社会」と題して、万博に出展しているロボットなどについて語った。
HCIは大阪の泉大津と岸和田に拠点を構える従業員65人、平均年齢32歳と若手中心の企業だ。近年では、スマート倉庫の構築や、サービス分野への展開が加速している。
同社の事業は大きく3つの柱で構成されている。第1の柱であり、創業以来の主力事業「I&R(インダストリアルマシナリー&ロボット)」事業部の売り上げは全体の85%を占める。同社のケーブル製造装置は近年は主に自動車内部のハーネス向けの高品質ケーブル製造に使われているという。そしてそこから派生する形で産業用ロボットのシステム開発を行ってきた。
第2の柱である「S&S(サービスロボット&ソーシャルシステム)」事業部はAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、サービスロボットの開発/販売を手掛けている。搬送AMR、清掃ロボット、飲食店向け配膳ロボットなどを扱っており、売上比率は14%だが将来的に注力する成長分野として位置付けており、自社でも人材採用を積極的に行ってAI開発を進めていると述べた。
第3の柱は「F&C(フード&ケア)」事業部で「ロボカフェ」とマッサージロボットを目指す「ヘルスケアラボ」を手掛けている。売上比率は1%。「ロボットカフェ」は配膳ロボットが注文された料理を運び、調理ロボットが一部メニューを調理して提供する。
当初は社員食堂として利用する予定だったが、一般公開することで2024年9月から黒字化した。その理由はインバウンドの団体客やコミュニケーションロボットオーナーのミートアップの場所として積極的に提案して受け入れたことだ。
サービスロボット市場の成長を見込む、清掃や搬送ロボが人気
ロボットシステムの標準化にも力を入れている。奥山氏は安川電機のロボットを使った段ボール組立システムや、川崎重工業のロボットによる自動箱詰めシステム、ファナックのロボットを活用した自動金属表面処理ロボットシステムなど、汎用性の高いパッケージ製品の開発を進めていると紹介した。顧客がより手軽にロボットを導入できる環境を整備し、事業としての成長を加速させる狙いだ。
自動車のようにロボットを買える環境を目指し、「HCIロボットカフェ」では、来場者が実機を見て、触れて、体験できるようにし、カーディーラーのようにコーヒーを片手に専門スタッフと相談しながら導入を検討できる仕組みを整えようとしている。地域連携も進めている。
沖縄ではパートナー企業との協業により、GUGENのPLC遠隔監視システム「FALCONNECT」を使って本社からリアルタイムで稼働データを収集し、支援。ユーザーにとって安心な保守体制を構築している。
奥山氏は今後サービスロボットの市場が大きく成長すると見ており、コロナ禍で需要が顕在化した配膳や搬送、清掃ロボットなどに注力している。価格帯は150〜500万円程度。売り上げも2023年から2024年で6倍、2024年から2025年にかけてもさらに1.5倍と成長しおり、特に人気が高いのは清掃ロボットと搬送ロボットだと紹介した。中でも自動給排水機能を持つPuduの清掃ロボット「CC1」が売れているという。
今後力を入れるのは業務用小型掃除ロボットの「JINNY 20」や、AUTOXING Roboticsの600kg可搬搬送ロボット「StarLift600」だ。人手不足が深刻化する中で、ロボットは時給換算すると圧倒的に「お得」だと強調した。HCIでは二次開発にも取り組んでおり、RFIDと連携することで図書館で活用できる配膳ロボットシステムや、魚の缶詰を製造する工場でのロボットシステム、惣菜工場向けシステム、ラーメンゆでを行うロボットの開発なども行ったと紹介した。
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