日本の貧困率は再分配でどう改善しているのか 相対的貧困率について考える:小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(37)(2/3 ページ)
ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は日本の貧困率について紹介します。
日本の再分配と貧困率の改善
相対的貧困率は、再分配後の可処分所得に加えて、再分配前の市場所得(Market Income)でも集計されています。
日本の再分配の状況がどのようなものか年齢階級別に確認してみましょう。図2が日本の相対的貧困率について、市場所得と可処分所得の推移を表したものです。
情報が多いので、少しずつ整理しながらグラフを眺めていきましょう。まず、折れ線グラフのうち実線は再分配後の可処分所得の相対的貧困率、点線は再分配前の市場所得の相対的貧困率を表します。合計(緑色の実線と点線)が全年齢の平均値を表します。
全年齢平均の市場所得の相対的貧困率は1985年から比べると増加傾向となっていて、近年では33.6%となっています。一方で、可処分所得の相対的貧困率は1985年の12.0%に比べて、2021年では15.4%とやや拡大はしていますが、一定範囲で推移していることになります。再分配によって、所得に対する貧困率が大きく改善していることが分かります。
棒グラフが再分配による貧困率の改善具合を示した再分配効果です。
- 再分配効果 = 市場所得の相対的貧困率 - 可処分所得の相対的貧困率
全体の平均値の再分配効果が緑の棒グラフとなりますが、徐々に拡大していることが分かります。
続いて、18〜65歳の現役世代(青)に限定して見てみましょう。市場所得の相対的貧困率は全体の平均値と比べるとかなり低めで推移していて、なおかつ2015年以降は低下傾向となっています。
現役世代では2010年代に比べてやや市場所得での貧困率が改善されていることになります。これは女性労働者が増えて、世帯全体の所得水準が向上していることも影響しているかもしれません。男性労働者はむしろやや所得格差が拡大しているという統計データもあります。
再分配後の相対的貧困率は、市場所得の相対的貧困率よりもやや小さな水準となり、再分配により貧困率が改善されている様子も分かります。ただし、全体の平均値からすると再分配効果はそれほど高くありません。
現役世代の再分配と聞くと少し奇妙な感じがするかもしれませんが、例えば雇用保険の給付や、児童手当などが該当します。また、所得税や社会保険料なども、所得水準に応じて累進的に増えますので、所得格差を是正する方向に寄与するようです。
65歳以上の高齢世代(赤)についても見てみましょう。市場所得の相対的貧困率は60%を超えていて非常に高い水準に達しています。高齢世代は社会保障給付などの再分配による所得以外の収入を得ている人は多くなく、仕事をしていても現役世代と比べて低所得な人も多いですね。その分、市場所得による相対的貧困率はかなり高くなると考えられます。
それが再分配によって、大きく改善され可処分所得での相対的貧困率は現役世代まではいかないにしろ、かなり低い水準となっていることになります。再分配効果も非常に高い水準となります。
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