OKIとエフィニックスが提携 低電力FPGAを設計から量産までワンストップで提供へ:組み込み開発ニュース(2/3 ページ)
OKIとエフィニックスは業務提携を行い、FPGAの論理回路や搭載AI機器の設計から量産までをワンストップで受託するEMSサービスを展開すると発表した。
なぜ高品質で価格が安いFPGAを作れるのか
では、なぜエフィニックスでは高品質で価格が安いFPGAを作れるのだろうか。
従来のFPGAはロジック(論理回路)とそれをつなぎ合わせる配線が1:1のような固定比率でシリコン上に配置されている。ロジックを大きくしようとすると周辺の配線も大きくしなければならず、結果的に2倍、3倍と面積が大きくなってしまう。無理やり拡張するような形でFPGAが大きくなってしまうので、値段もどんどん吊り上がってしまい、消費電力も下がらない。
エフィニックスは特許取得済みの独自のFPGA技術「Quantum」アーキテクチャにより、こうした課題に対応した。この技術はロジックと配線の配置を決め打ちにするのではなく、切り替え可能なロジックおよびルーティング(XLR)セルにより、ロジックと配線を裏表で切り替えて使い分けるようなイメージで使用できる。ソフトウェア制御により、XLRセルをロジックで使うか配線で使うかを選択できるため、柔軟で効率的な設計が可能となる。これにより従来と比べて使用面積を抑えることが可能になり、値段も低価格化できる。さらに、電力も抑えることが可能になる。
他のベンダーが同じような技術を組み込もうと思っても、FPGAは製造後に顧客が論理回路を変更する性質上、新たなアーキテクチャにすると新たに開発プログラムを用意する必要がある。そのため、簡単に切り変えることができない。エフィニックスはスタートアップ企業という強みを武器に、最初から焦点を絞って開発をおこない、この技術に合うソフトウェアを用意しており、高性能で価格が安いFPGAを作ることができる。
最近はAI(人工知能)をFPGAに組み込むユーザーが増えている。AIの搭載率は現在10%程度だが、10年後には50%ほどまで増えると予想されている。中西氏は「エフィニックスはその波に乗り需要に応えたいと考えている。FPGAにAIを開発できる生成ツールを用意しこれも無償で提供する」と語る。
開発ツールを無償で提供する理由について中西氏は「エフィニックス製品を使ってもらう入り口だ。エフィニックスは技術を売りたいと思っており、その障壁をなくすために開発ツールはフリーにしている」と語る。以前はツール使用料を有償にしていたが、自社の技術を幅広い顧客に認知し、使用してもらうために、無料で使用可能にしている。
エフィニックスが狙う市場とは
エフィニックスがOKIとの提携で今後重視する市場の一つが医療機器だ。中西氏は「既に大型の医療機器にもFPGAがたくさん使われているが、これから大きく伸びるであろう小型の医療機器の市場に参入していく」と語る。
大型の医療機器を持っていない中小規模の病院が、FPGAが採用されている小型で低価格な医療機器を買うことで、今までできなかった診断が可能になる。
例えば、現行の超音波検査装置はそれなりの大きさがあり高価だが、エフィニックスのFPGAを適用すれば機器本体を小型化してポータブル化でき、画面表示デバイスにタブレット端末やスマートフォンを使えば価格も抑えられる。ポータブル医療機器が熱を発して手に持つことが出来なくなると意味がないので、そこでエフィニックス製FPGAの出番になる。
ポータブル医療機器が普及すれば、いずれは病院に行かなくてもドクターが小型の機械を持って訪問診察をするという未来も実現可能になる。
さらに中西氏は「医療機器に加えて今後の伸びしろがある分野として、やはり自動車も欠かせない」と語る。EV(電気自動車)や自動運転技術の安全面で欠かせないサーマルカメラの赤外線センサーが温度を感じ取る際に、カメラに組み込まれている半導体が熱を発してしまうと誤検出する可能性がある。こういう状況の際に発熱を抑えることができる低電力の半導体が必要になり、エフィニックスのFPGAが活用される機会が増える。
「今後はサーバストレージやデータセンター、ネットワーク通信、放送映像、テスト機器/計測機器の分野でFPGAの需要が伸びていく。その需要もしっかりつかんでいく」と中西氏は述べている。
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