SDVの潮流に自動車業界は対応できるのか、AWSは「3つの道具」で支援:車載ソフトウェア(2/4 ページ)
AWSジャパンが自動車業界で注目を集めるSDVの潮流や、SDVの浸透によって変わりつつあるツール環境や仮想ECU、コネクテッド基盤の動向について説明した。
会見の後半では、AWSジャパン 自動車事業本部 プリンシパル ソリューションアーキテクトの梶本一夫氏が登壇し、「3つの道具」であるツール環境、仮想ECU、コネクテッド基盤にどのようなものがあるのか、それぞれ具体的な採用例を挙げて説明した。
ツール環境
従来の車載ソフトウェア開発は、ソースコード開発用の統合開発環境やモデルベース開発環境、CI(継続的インテグレーション)/CD(継続的デリバリー)環境などをインストールしたオンプレミスのPCやサーバを用いて行うのが一般的だ。AWSはこれらのツール環境を、VEW(Virtual Engineering Workbench)によってクラウド化することを推奨している。
梶本氏は「従来は新しく開発用のPCを用意しようとすると1カ月ほど準備期間が必要だった。社外に持ち出して利用する場合にはそのための管理の仕組みも用意しなければならない。VEWでクラウド化したツール環境であれば10分で設定が完了し、持ち出しのための管理の仕組みも不要だ」と述べる。
また、オンプレミス環境ではツールのライセンスがインストールするCPU数×エンジニア数分必要だが、繁忙期のエンジニア数に対応できるようよう余裕を持っておかなければならない。つまり、非繁忙期はツールのライセンスを無駄に保有していることになる。クラウド化すれば、Pay per Useライセンスに対応するツールであれば、繁忙期であれ非繁忙期であれ必要な分のライセンスを調達すればよい。
さらにツール環境のクラウド化は、大規模化する車載ソフトウェア開発における部門ごとの分断を解消する機会にもなるという。「これまで部門ごとの縦割りでツールの選定やライセンスの契約などを行っていたが、これだとSDVに必須となるSOAに対応した部門横断による機能の検証が難しい。ツール環境をクラウド化すれば部門ごとの縦割りが解消されるので、これらの問題もなくなる」(梶本氏)。
VEWの事例となるのが、AWSとホンダが2025年1月に発表した「Honda Digital Proving Ground(DPG)」である。ホンダのDPGは、AWSのクラウド上に構築されており、ツール環境に加えて、後述する仮想EUCやコネクテッド基盤なども統合されている。
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