コンデンサーを用いた実験回路で微分積分の本質に迫る【積分編】:今岡通博の俺流!組み込み用語解説(15)(2/2 ページ)
今岡通博氏による、組み込み開発に新しく関わることになった読者に向けた組み込み用語解説の連載コラム。第15回は、前回の微分に続き、コンデンサーを用いた実験回路を使って積分の本質に迫る。
積分の実験回路
ここまで幾つか事例を挙げた積分を電子回路で確かめてみましょう。図1は積分の動作を確かめる実験回路です。
抵抗とコンデンサーが用いられており、電子回路としてはRC積分回路として知られています。Rは抵抗で18kΩです。Cはコンデンサーで47nFです。
積分回路の特徴は、入力(IN)と出力(OUT)の間に並列にコンデンサーが挟まれていることです。微分回路は入力と出力の間に直列にコンデンサーが挟まれていましたが、積分回路は抵抗とコンデンサーが入れ替わった回路になっていますね。
それでは、この積分の実験回路と2つの信号を同時に観測できる2現象オシロスコープを使って、入力側の波形と出力側の波形を比較することでコンデンサーによって引き起こされる積分現象を観測したいと思います。
さまざまな波形を使って積分現象を確かめる
今回の実験では、筆者が所持しているハンディーオシロスコープ「OWON HDS272S」を用いて観測します。このオシロにはシグナルジェネレーターの機能があり、これで生成した信号を入力信号とします。入力信号は1Vpp(波形の振幅の山から谷までの電位差が1V)で、周波数は1kHzです。
なお、各入力波形の説明は微分をテーマにした前回記事を参照してください。
正弦波
それではまずは正弦波の波形から見てみましょう。図2は正弦波の入力波形と出力波形を比較するためのものです。
図2内の2つの波形のうち、上側の黄色い波形が入力信号で、下側の水色の波形が積分回路の出力波形です(オシロの画面の撮影に使ったスマホが写りこんでいますが、気にしないでください)。このオシロ、スクリーンショットが取れればいいのですが、方法が分かりません。もしできるようであれば図2は後日差し替えたいと思います。
さて、この波形の解釈ですが、数学で学んだところによると正弦波(sin)を積分すると負の余弦波(−cos)になります。これは微分回路では90度波が進んだのに対して、積分回路では90度遅れるためです。
矩形波
図3は矩形波の入力波形と、積分回路を通した後の出力波形を表示したものです。
この出力波形は、入力波形の矩形波の谷の部分でコンデンサーが放電し出力波形は下り坂となります。一方矩形波の山の部分ではコンデンサーは充電されますので徐々に電圧が上がっていきます。これを繰り返すことにより三角波のような波形になります。
ノコギリ波
図4はノコギリ波の入力波形と、積分回路を通した後の出力波形を表示したものです。
入力波形のノコギリ波が急激に上昇する時点から充電が開始され多少時間差があるものの出力波形も上昇していきます。入力波形がピークを過ぎた下り坂局面ですが、この時点でもしばらく充電は継続し、入力電圧がある一定電圧を下回るとそこをピークに電圧が下がり始めます。ノコギリ波を積分すると図4のように半円を伏せたような波形になります。ノコギリ波の上昇地点に波形がやや傾くような波形になっていますね。
おわりに
いかがだったでしょうか。まあ感覚的でもよいので少しでも積分の理解が深まり、興味が沸いたでしょうか。よりきちんと微分積分を理解したい方は、数式が出てくる解説記事が多数ありますので、そちらでさらに理解を深めていただければと思います。
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