広がるハイパースペクトルカメラの可能性――画像センシング展2025レポート:組み込みイベントレポート(2/4 ページ)
2025年6月11〜13日にパシフィコ横浜で開催された「画像センシング展2025」では、さまざまな画像処理機器やセンシング技術の展示が行われた。ハイパースペクトルカメラがアプリケーションの広がりを見せるとともに、前回から引き続きAIを活用した画像認識にも注目が集まった。
手頃なAI内蔵カメラ/時系列ベースの検知システム
画像検査ではAIの活用が広がっている。ここでは手軽なソリューションを2つ紹介したい。
マクセルフロンティアはAI機能を搭載したインテリジェントカメラおよび画像認識ソリューション「iXAM Vision(イグザム・ビジョン)」シリーズを展示した。
一般にマシンビジョンシステムを構築するには、カメラの他に工業用PCやソフトウェアが必要で、稼働までに工数が掛かるなどの課題があった。
マクセルフロンティアはユーザーのそうした声に応えて、すぐに使えることをテーマに、AI機能を搭載したスタンドアロン型カメラ「iXAM Vision Sensor」を開発した。サイズは135×75×125.6mmと小さい。画素数は500万画素、フレームレートは16fpsである。
小型PCやAIベースの画像判定ソフトウェアをカメラに統合したイメージであり、Display Portにディスプレイを接続した後、20〜30枚程度の良品画像を学習させるだけですぐに使えるのが特徴である。
汎用検査アプリ、作業支援アプリ、AI検査アプリに加えユーザーインタフェースも搭載しているため、設定操作を含めてiXAM Vision Sensorで完結する。また、「iXAM Vision Meister」という別アプリケーションを用いてラインに合わせた検査フローを作成し、iXAM Vision Sensorにアップロードすることもできる。
これらの製品は既に販売中で、問い合わせも多いとのことであった。

マクセルフロンティアのスタンドアロン型カメラ「iXAM Vision Sensor」。オプションで光源の装着も可能。30枚程度の良品画像を学習させるだけですぐに使用できるという。不良と判定した場合はカメラ前面のLEDが赤に変わる[クリックで拡大]

ベルトコンベヤー上を流れるカセットテープの外観を検査している様子。位置決め機能でずれを補正しAIで判定した結果が画像左上に「Score」として示されている(この例では64.035……)。これらの機能は全てiXAM Vision Sensorカメラに統合されていて、外付けのPCや別途のソフトウェアを必要としない[クリックで拡大]
フォージビジョンは独自開発の画像解析アルゴリズムを搭載した「Human Sense AI」を展示した。事前学習を必要としないのが最大の特徴である。同社では「学習しないAI」とうたう。
映像を時系列で捉えながら、少し前の映像と現在の映像との違いから異常の可能性を検知する仕組みだ。物体の輪郭(エッジ)、明るさ、形状、色など、人間の認識プロセスを模しているという。
大規模なモデルを使った学習や推論が不要ということもあって動作が軽く、映像を長期にわたって蓄積しないためプライバシー保護の観点でも優れる。
ソリューションとしては、「Human Sense 状態監視AI」「Human Sense 外観検査AI」「Human Sense 色解析AI」の3種類を提供する。ただしパッケージではなく、顧客の現場や検知対象に合わせて同社がシステム構築を支援する。
これらのうち状態監視AIは、ウェハーの洗浄工程の自動監視、鉄板製造時の鋼板巻き取りの剥がれ位置の検出、製鉄現場におけるスラグの飛び散り、箱詰め作業の取り漏れ検知、線路上の落下物の検知などに適用可能で、実際に半導体メーカーや鉄鋼メーカーで稼働中との説明があった。説明員によると、一部の事例は他社のAI画像判定ソリューションでは検知できずに、最終的に同社に相談があったという。
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