2024年度の新車生産はスズキのみ増加、グローバル生産体制に転機:自動車メーカー生産動向(3/5 ページ)
日系自動車メーカーの2024年度の自動車生産は、型式指定の認証不正問題や中国市場の競争激化などにより伸び悩んだ。日系乗用車メーカー8社の2024年度の世界生産合計は、3年ぶりに前年度実績を下回った。
ホンダ
2024年度の8社の生産で最も低迷したのがホンダだ。2024年度のグローバル生産は、前年度比11.5%減の364万4066台と2年ぶりに前年実績を下回った。EVシフトなどにより競争が激化する中国が同34.3%減と大きく落ち込んだことが要因で、4年連続のマイナスだ。このため中国では、生産能力の適正化を目的に広汽ホンダと東風ホンダの各1工場の稼働を休止。中国の減産によりアジアトータルも同28.0%減と4年連続で減少した。
一方、北米は、HEV人気などにより「シビック」や「CR-V」の受注が好調に推移。前年度比0.2%増と、半導体の供給改善で大幅に伸長した2023年度を上回り、2年連続でプラスを確保した。それでも中国の大幅減はカバーできず、海外生産トータルでは、同13.5%減の295万1473台と2年ぶりにマイナスへ転じた。
国内生産も伸び悩み、前年度比2.0%減の69万2593台と3年ぶりのマイナス。新型「フリード」の投入などもあったが、前年度が半導体の供給改善で高水準だったことに加えて、「N-BOX」の新型投入に合わせて増産対応していたことの反動が表れた。2024年度の国内販売では、国内最量販車種のN-BOXは同3.5%減と減少したものの、車名別ランキングでは唯一の20万台超えで首位を守った。登録車では新型を投入したフリードが同21.6%増とけん引した他、「ヴェゼル」も同1.6%増と堅調だった。
厳しい状況は続いており、2025年3月単月の世界生産は、前年同月比3.4%減の32万9664台と8カ月連続のマイナス。特に海外生産が、同4.0%減の26万8510台と8カ月連続で減少した。価格競争のあおりを受けて販売が低迷している中国が要因で、同13.4%減と8カ月連続の前年割れ。それでも月を追うごとに減少幅は着実に改善している。東南アジアも厳しい状況が続いており、アジアトータルでも同16.9%減と11カ月連続で前年実績を下回った。一方、北米は同7.7%増と5カ月ぶりのプラス。オハイオ工場でのEV生産ラインの設営工事などで減産していた米国が同4.0%増と8カ月ぶりにプラスへ転じた。
国内生産は、前年同月比0.4%減の6万1154台と微減で、2カ月ぶりに減少した。輸出では米国向けが同4倍超と大幅に増加したが、2025年2月から埼玉製作所(埼玉県寄居町)で米国向けシビック5ドアのHEVモデルの生産を開始したため。なお、このシビックは、米国の追加関税対策として、2025年6〜7月頃をめどに米国インディアナ工場に生産移管する予定だ。
また、オハイオ工場ではEV投資を実施したが、米国トランプ政権がEVシフトに否定的な方針を打ち出したことを受けて、ホンダも戦略の変更を余儀なくされている。カナダで2028年に稼働を予定していたEV専用工場や電池工場などの計画を2年程度延期することを決定した。加えて、2030年のEVおよび燃料電池車(FCV)の比率を4割から3割以下に引き下げ、HEV比率を現状から倍増する計画だ。
スズキ
2024年度の世界生産で唯一前年実績を上回ったのがスズキだ。グローバル生産台数は、前年度比0.9%増の329万5860台と4年連続で増加。日産自動車を約24万7000台上回り、大きく差をつけた。日産の厳しい業績を受けて、ホンダに次ぐ3位が定着しつつある。
生産の6割超を占めるインドは、マネサール工場で2024年4月から新ラインの稼働を開始し、年10万台分の能力増強を行ったことや、SUVモデルの販売好調、中近東およびアフリカ向けの輸出の増加などにより前年度比5.9%増と4年連続で増加。過去最高を更新し、年度生産として初めて200万台を突破した。インドネシアやタイ、ハンガリーの減産などにより、インド以外の海外生産は同26.2%減と低迷したが、パキスタンの2023年6月の輸入規制緩和による反動増で増加した他、インドの好調がカバーし、海外生産トータルでは同2.1%増の230万1150台と2年ぶりに前年実績を上回った。
国内生産は、前年度比1.6%減の99万4710台と3年ぶりのマイナスだった。新型車投入した「スペーシア」や「スイフト」、一部改良でデザインを刷新した「ソリオ」などの主力モデルは好調だったが、欧州向け「イグニス」の生産終了で輸出が同6.6%減と減少したことが響いた。
2025年3月単月のグローバル生産台数は、前年同月比1.4%減の27万8412台と2カ月連続で減少した。国内生産が、中央発條の爆発事故の影響により相次いで稼働停止を余儀なくされたことで、同31.3%減の6万6153台と大幅に落ち込み、2カ月連続のマイナスだった。輸出も同30.0%減と3カ月連続で減少した。
一方、海外生産は好調で、前年同月比14.2%増の21万2259台と2カ月連続で前年実績を上回った。インド生産は、「フロンクス」「ブレッツァ」などのSUVがけん引し、同17.0%増と6カ月連続で増加。3月として過去最高を記録した。ただ、インド以外の海外生産は同9.8%減と25カ月連続のマイナスで、低迷が続く。
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