パワー半導体の熱設計問題を解消する次世代TIM材 構造と性能で放熱!:材料技術(2/3 ページ)
太陽ホールディングスは、高い放熱性と絶縁性を両立したパワー半導体向けの放熱ペースト材料「HSP-10 HC3W」を開発した。
HSP-10 HC3Wの特徴
こうした問題を解決するために、太陽ホールディングスはソルダーレジストの開発で培った経験を生かし、次世代のTIM材としてHSP-10 HC3Wを開発した。同材料は、上から順にヒートシンク、TIM材(HSP-10 HC3W)、基板、パワー半導体から成る「熱がこもらない構造」で利用する。
同社 取締役/技術開発センター長の宮部英和氏は「この構造では、パワー半導体のジュール熱は基板に伝わり、スルーホールやヒートシンクなどで排熱される」と話す。
さらに、従来のTIM材は実装メーカーが基板に塗工しているが、HSP-10 HC3Wでは基板メーカーが基板にスクリーン印刷する。「従来のTIM材は基板1つずつに専用の装置で取り付けられていたが、HSP-10 HC3Wはスクリーン印刷で複数の基板にまとめて搭載できるため、プロセスコストを削減できる」(宮部氏)。
これらの他に、HSP-10 HC3Wは特徴として「無溶剤」「熱硬化性樹脂」「高い絶縁破壊電圧」を有す。
「無溶剤」に関して、HSP-10 HC3Wは、従来のTIM材のように溶剤を利用していないため、表面平滑性(Ra)で0.8μmを実現しており、ヒートシンクとの接触面で滑らかな表面を形成する。
加えて、HSP-10 HC3Wは「熱硬化性樹脂」を材料に採用しているため、−40〜+165℃で1000サイクルの負荷をかけても割れやはがれが発生せず、熱伝導率や絶縁性といった各種特性を保てる。同材料は「絶縁破壊電圧」が6.6キロボルト(kV)/100μmであるため、高電圧の環境下でも絶縁信頼性を維持する。「一般的にTIM材の縁破壊電圧は5kV/100μmで十分とされている。この値を上回るHSP-10 HC3Wはより厳しい電圧の環境下にも応じる」(宮部氏)。
今回の製品は2025年2月に上市されており、既に大手自動車部品メーカーの車載チャージャーコンバーターで採用されている。ただし、現状はパイロット生産の段階で、本格的な量産開始は2026年1月を予定している。
HSP-10 HC3Wの売上高の目標について、宮部氏は「TIM材の市場規模は約600億円だ。HSP-10 HC3Wで600億円のうち数%となる売上高を達成したい」とコメントした。
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