EU未加盟のアイスランドとノルウェーがEUのR&Dプログラムに積極参画する理由:海外医療技術トレンド(119)(4/5 ページ)
前回、北欧諸国の中でスウェーデンを取り上げたが、今回はEU未加盟のアイスランドやノルウェーが欧州全体のR&Dで果たしている役割について取り上げる。
アイスランドの電子政府を支えるX-Roadの分散データ連携基盤
そして、statice.isを支えるアイスランドの電子政府基盤の構築/運用を担っているのが、北欧相互運用性ソリューション研究所(NIIS)である(関連情報)。
NIISは、2013年にスタートしたエストニア−フィンランド間の電子データ交換基盤構築プロジェクトから生まれた非営利組織であり、両国の他、アイスランド、フェロー諸島(デンマーク自治領)、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州(ドイツ)、ウクライナ政府が参画している。NIISは、加盟国/地域が、卓越したデジタルパブリックサービスの提供を可能にするようなデジタル政府の開発や戦略的管理を保証することを目的としており、オープンソースソフトウェアベースの「X-Road」(関連情報)や「Harmony eDelivery Access」(関連情報)などのソリューションを提供している。
アイスランドの電子政府基盤は、NIISが構築したX-Roadをベースとする分散データ連携/管理システムを採用している他、本連載第96回で紹介したサイバーネティカ(Cybernetica)のデジタルID技術である「SplitKey」を組み込んだ「Smart-ID」によるデジタルID認証の仕組みを利用している(関連情報)。このSmart-IDの仕組みは、既にバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)で普及している。
表1は、NIISが公表した2024〜2031年のX-Roadコア開発ロードマップを示したものである。

表1 2024〜2031年のX-Roadコア開発ロードマップ[クリックで拡大] 出所:Nordic Institute for Interoperability Solutions (NIIS)「X-Road Development Roadmap」(2025年5月12日時点)を基にヘルスケアクラウド研究会作成
これによると、X-Roadは、2026年をめどに、CEDSを支えるデータスペースインフラストラクチャのサポートを予定している。データスペースは、X-Roadによるデータ統合アーキテクチャの進化形であり、参加者間の信頼性の高いデータ取引を実現しながら、信頼とデータ主権をサポートするガバナンスフレームワークによって定義される分散型システムである。
X-Roadをデータスペースに接続するためには、X-Roadとデータスペースプロトコル間の変換を担うカスタムゲートウェイコンポーネントを実装する必要がある。ただし、時間とともに、開発/維持が必要なゲートウェイコンポーネントの数が増加し、それらを通じて完全な互換性を達成することは非常に困難だ。そこで、X-Road固有のプロトコルからデータスペースプロトコルスタックに移行する方法を検討することになる。
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