しっかりと把握しておきたいODMに必要な費用:ODMを活用した製品化で失敗しないためには(11)(2/3 ページ)
社内に設計者がいないスタートアップや部品メーカーなどがオリジナル製品の製品化を目指す際、ODM(設計製造委託)を行うケースがみられる。だが、製造業の仕組みを理解していないと、ODMを活用した製品化はうまくいかない。連載「ODMを活用した製品化で失敗しないためには」では、ODMによる製品化のポイントを詳しく解説する。第11回のテーマは「ODMに必要な費用」だ。
試作費用
試作費用とは、試作部品のコストとその組み立てにかかる費用を指す。連載第9回で説明したように、手作り試作部品は高額であるため、試作セット数はできるだけ少なくしたい。試作セットの主な用途である検証(試験や測定)を考慮して試作セット数を決めるとよい。考慮すべき内容は以下の通りだ。
- 機構、電気、ソフトウェアの各設計担当者はそれぞれ試作セットが必要
- 長期的な試験があれば、その試験専用の試作セットが必要
- 試験によって破損する場合があれば、その試験専用の試作セットが必要
- 複数台で行う試験であれば、その台数の試作セットが必要
- 検証日程が限られ、同時期に複数の検証を行う場合は、その検証数分の試作セットが必要
検証結果に影響のない塗装や印刷はしない。また、ラベルや取扱説明書の作成も不要だ。ただし、梱包材(カートンと緩衝材)は試験に用いるため作製する必要がある。
連載第10回で説明したように、金型試作部品は、金型で一度にたくさんの部品を作れるため安価である。よって、多めに試作セットを作っても試作費用は大きくアップしない。このことを考慮し、販売促進用、展示会用、Webサイトやカタログの写真撮影用、安全規格の認証取得用なども併せて作製しておくとよい。
検証費用
試作セットができたら、機構的、電気的、ソフトウェア的な試験や測定を行う。試験や測定の内容は連載第7回と第8回を参照してほしい。
検証費用は、試験や測定の項目数が多いほどアップする。だからといって、実施すべき試験を必要以上に削減してしまうと、未検証の製品が市場に流出することになり、市場不良につながるリスクが高まる。市場不良が発生すれば、対応にかかる費用は検証費用の数十〜数百倍に達することもある。特に人的被害が生じた場合は、数百万〜数千万円規模の損害賠償が発生することもあるため、十分に注意したい。
試験や測定の項目によっては、ODMメーカーの社内で実施できないものも多くある。その場合、外部の試験機関を利用することになるため、別途費用が発生する。
検証費用も項目ごとに見積もりを取得するのが望ましい。項目数の増減があった場合に、費用の変動を把握しやすくなるからだ。
金型費用
金型費用は、部品を金型で作製する場合に発生する。樹脂部品では必須であり、板金部品や金属部品であれば、生産数が多いと必要になる。金型の要不要に関しては、連載第9回を参照してほしい。
金型がスタートアップの固定資産となる場合は、正確な金型費用を入手しておこう。見積もりは部品ごとに取得しておきたい。なぜなら、設計過程で部品の種類が増減した際、金型費用の変化を正確に把握できるからだ。
リモコンなどの付属品や基板ついても金型費用が必要となる。ただし、基板をNCルーターで加工する場合は不要だ。緩衝材の発泡スチロールにも金型費用は発生する。緩衝材が段ボールであれば、後述するビク型費用となる。
ビク型費用
カートンや樹脂シートなどの外形を打ち抜く(カットする)にはビク型が必要となるため、その作製費用(ビク型費用)も忘れてはならない。
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