2025年度も減益予想のトヨタ、先を見通せずとも「軸をぶらさずじたばたしない」:製造マネジメントニュース(2/3 ページ)
トヨタ自動車は、2024年度(2025年3月期)連結業績に加えて、2025年度の業績見通しと重点取り組みについて説明した。
自動車1台当たりの限界利益は約1.6倍に
トヨタ自動車 取締役副社長 CFOの宮崎洋一氏は、2025年度連結業績で大幅な減益となる見通しではあるものの、リーマンショックやコロナ禍を経た取り組みによって構築してきた強固な収益構造により今後も収益のさらなる拡大と安定化を実現できることを強調した。「当社は2009年のリーマンショックで赤字に転落して以降、損益分岐台数の引き下げを中心に財務基盤を立て直してきた。そして、2020年度のコロナ禍でのさらなる学びと改善を経て、ROE(自己資本利益率)も10%以上を安定的に出せるようになり、自動車1台当たりの限界利益を約1.6倍にするなど収益性を大きく改善している」(宮崎氏)。
また、これまで事業の中核だった新車販売に加えて新たに存在感が出てきているのが、補給部品や金融などのバリューチェーンビジネスである。ここ数年、毎年1500億円ペースで増加しており、2025年度は売上高2兆円を超える水準まで拡大する見込みだ。宮崎氏は「これらバリューチェーンビジネスによって、われわれの強みである保有台数1.5億台の価値をさらに高めていける」と語る。
トヨタ自動車は「モビリティカンパニー」への移行を目指している。新車販売を中心とするアセットビジネスだけでなく、バリューチェーンビジネスの拡大や新領域ビジネスを拡大することで、収益変動に備えるための資本を削減できるようになれば、ROEを現在の2倍の20%にすることも可能になる。トヨタ自動車として、モビリティカンパニーへの移行について明確な指標は設けていないものの、ROE20%の達成は事業構造/資本構成の変革の進捗を測る“モノサシ”になるとしている。
「足場固め」は未来に向けて種をまく取り組みに
トヨタ自動車 取締役社長の佐藤恒治氏は2025年度の重点取り組みを説明した。トランプ政権による相互関税を含めて自動車市場を取り巻く環境の変化が激しい中で佐藤氏が重視しているのが「商品を軸とした経営」と、地域密着で事業を展開する「町いちばん」の戦略である。「顧客に近いところでニーズに向き合い、タイムリーにクルマを届けられるよう、地域に合わせた開発、生産体制を整えていく」と述べる。
環境変化への対応力を高める上で重要なのが、認証不正への対応から始まった「足場固め」の取り組みである。「当初は出血を止めるための取り組みだったが、今は未来に向けて種をまく取り組みに変わりつつある。認証問題の再発防止は、現場に根差した改善を加速する機会となり、風土も含めて会社の基盤を強化する取り組みに変わっている」(佐藤氏)。
開発活動の生産性向上では、仕様や部品の種類を適正化する「AREA35」を国内10工場でトライアル実施することによって、フルモデルチェンジ3プロジェクト分の開発効率化につなげたという。今後はグローバルで活動を広げていく方針だ。
また、車両仕様情報を企画開発、製造、営業の間で人手で読み替えていた作業を、デジタル化によって一気通貫でつなぎリードタイム削減につなげる仕組みである「OMUSVI」の整備も進めている。
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